幼なじみは魔法使い   作:トラウトサーモン

12 / 23
第十二話

 翌日の朝のニュースで、また海鳴市の災害関連の話が出ていた。

 割れた地面や傷ついた建物などが、カメラマンの手によって次々と映されていく。それに対してコメンテーターが当たり障りのないコメントを述べた後、ゲストの専門家が原因不明と断定する。

 

 俺はどうしても、先日聞いたジュエルシードの件と結びつけたくなった。

 なのはが魔法の力を得た日から、謎の災害が立て続けに起きた。

 これを偶然というには、あまりにも出来すぎた話だと思う。

 

 スクールバスを降りた途端、なのはがこちらに走ってきた。

 

「みーくんっ!」

 

 思い切り胸に飛び込んできたが、体重が軽いので衝撃はほとんどない。

 昨日の夜も、俺はなのはと電話した。ついつい話が長引いてしまい、やや寝不足気味である。

 

「よしよし、とりあえず教室に向かうか」

「うん!」

「昨日あんなに遅くまで話したのに、元気いっぱいだな。眠くない?」

「大丈夫なの」

 

 なのはに疲れた様子はない。夜中にジュエルシードの怪物と戦ったわけではなさそうだ。朝のニュースからその可能性もあると考えていたので、ほっとした。

 海鳴で起きた災害が魔法関連によるものだという予想は、外れだったのかもしれない。

 

 俺たちが教室に入っても、昨日と同様嫌がらせをしてくる様子はなかった。

 椅子に画鋲も置かれていないし、変な落書きも見当たらない。

 もちろん良い傾向だ。しかし、あまりにも急な変わりっぷりは少し不自然に思える。

 

「ひっ……」

 

 そのとき、一人の女子生徒がなのはの方を向いて小さく悲鳴を上げた。酷く怯えた顔をしているが、あいつは確か先週……教室で足を引っかけて、転ばせた犯人だったはずだ。

 あんな嫌がらせをしておきながら、なのはを怖がっている。あまりにも矛盾した動きである。

 ここ数日の間に何かが起きたと推察されるが、その何かがわからない。

 浮かぶ疑問にモヤモヤしたものを感じつつ、俺は自分の席に着いた。

 

 

 

 今日は午前中に体育の授業があった。

 外が雨だということもあり、体育館で男女別のバレーボールが行われることになった。

 

「いっち、にー……」

 

 決して仲良くない男子と準備運動を行いながら、なのはの身を心配する。

 いじめられていないだろうか。事故を装って暴力を振るうこともあり得る環境だ。

 そんな中で、なのはは一人ぼっち……ではなかった。

 

 向こう側の集団に目を向けると、なのはと二人で体操をしている女子がいた。

 月村すずか。昨日図書館で話した少女がペアを組んでいる。

 俺以外の生徒にとっても予想外の光景だったのか、周囲がざわついているのがわかる。

 

 これは驚いた。

 昨日の俺との会話を踏まえた上で、なのはと関わりたいと考えてくれたのだろうか。

 もしそうであれば、非常に心強い仲間が増えたということになる。

 

「……あいつ、変わったな」

「えっ?」

 

 ふいに、俺のペアの男子が呟いた。

 

「オレたちも、あいつばっかりイジメられてるのが正直気に食わなかったんだ。でも、誰も助けようとはしなかった。流れが変わったのは、おまえが高町と仲良くし始めてからだ。よくやってくれたよ」

 

 彼がそう言うと、周りの男子たちも同調する。各々が違う言葉で俺の行動を褒めてくる。

 こんな経験は初めてなので、嬉しいというよりもくすぐったい。

 

(みんな、心の中ではおかしいと思っていたんだ)

 

 考えてみれば、男子たちは初めから今までずっと不干渉を貫いていた。それは、リスクを背負って助けるほどではないものの、決して肯定はしたくないという意思表示だったのだ。

 もちろん、何もしなければ過去の俺と変わらない。声を上げないのは認めているのと同じだ。だからこそ、彼らは行動に移した俺を称賛してくれる。思っていても、できなかったから。

 しかし、少なくとも違う方向……なのはがいじめられているという事実を良しとする思想を、誰一人として持っていなかったことは意外だった。彼らなりに問題意識があったということを、俺は読めていなかった。過小評価を申し訳なく思う。

 俺個人ではなく、男子という集団がなのはの味方になりつつある。これは本当に大きい。

 

 女子だって、今回のすずかの行動で目を覚ます者も出てくるだろう。

 例えば、かつての自分を後悔している奴とか。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 昼休み、俺はなのはと二人で学校の屋上で過ごしていた。

 

「そういえば、昨日の夜も海鳴のどこかでジュエルシードが暴走したんだけど、誰か違う人が封印してくれたんだって。わたしの他にも魔法使いがいるみたいなの」

 

 あの災害がジュエルシード絡みだという予想は、一応当たっていたようだ。

 

「なのは以外の魔法使いか。どんな人だろう?」

「レイジングハートが言うには、その魔法使いはジュエルシードの反応があってから、真っすぐその場所へ向かった……理由はわからないけど」

 

 自分が被害を受けていないのに解決しに行くなんて、まるで正義のヒーローみたいだ。

 ……さすがに、完全な慈善活動とは思えない。おそらく何か別の目的があるはずだが、個人的にはどうでもよかった。

 

「まあ、俺はなのはが無事でいてくれれば大丈夫だ」

「にゃっ!?」

「頑張らなくていいからな。他の誰かが倒してくれるなら、放っておけよ」

「みーくん……」

 

 俺の思想は、独善的と非難されても仕方ないのかもしれない。けれども、こんな俺だからこそ、こうやって懐いてくれる数少ない人間には幸せになってほしいと思う。

 ジュエルシードなどという意味不明な物体に命を奪われるようなことがあれば、悔やんでも悔やみきれない。誰かがやらなければならないとしても、その役割はなのは以外でお願いしたい。

 だから、もっと頑張ってくれよ。知らない魔法使いさん?

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。