幼なじみは魔法使い   作:トラウトサーモン

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第二十一話

 

 気を取り直して、質問を始めることにする。

 

「……じゃあ、話を聞かせてくれるか?」

 

 俺の言葉に二人は顔を見合わせる。

 そして、金髪の少女の方が軽く頷いた。

 

「フェイト?」

「アルフ、私たちの状態を考えて。今はこの人たちの言うことを聞くしかない」

「……わかったよ」

 

 主人の考えを聞いて、獣のお姉さん……アルフも納得してくれたようだ。

 フェイトと呼ばれた少女はずっと冷静に振る舞っており、個人的にかなり好印象である。アルフと比べると彼女の方が話しやすそうなので、こちらに問いかけていく方向で進める。

 

「まず、ジュエルシードを集めていることは……事実だよね?」

「うん」

 

 迷いなく、首を縦に振った。

 そして、そうしなければならなかった理由を語り始める。

 

「私は、母さんのために……」

「……なるほど」

 

 どこか悲しそうな顔だった。

 母親のため。やはり、自分の意思で行っていたわけではなかったか。

 なんとなく予想していた通りだった。俺はずっと、彼女の雰囲気と行動が一致していないと思っていた。私利私欲のために動くようなタイプには見えないし、ましてや待ち伏せして襲ってくるなんて……絶対何かやむを得ない事情がある。直感的にそう感じていたのだ。

 

「お母さんは、何のためにジュエルシードを?」

「それは、わからない」

 

 嘘をついている様子はない。本当に教えられていないのだろう。

 ……どうやら、フェイトの母はなかなかの曲者であるらしい。目的を示さず、自分の手を汚さない形でジュエルシードなどという得体の知れないアイテムを集めさせる所業。しかもそれを自分の娘に実行させるなんて、大人として、親としていかがなものかと思う。

 

 以前なのはに聞いたことだが、ジュエルシードには人の願望を叶える力が秘められているという。怪物と化してしまうのは、その「願い」の力が暴走してしまった結果であるそうだ。

 ジュエルシードの効力の強さは、発動した個数に比例するのかもしれない。願う内容によっては一つや二つではダメな場合もあるとすれば、大量に集める意図もわかってくる。

 ……だが、フェイト母はそこまでして一体何を叶えたいというのだろうか。ジュエルシードを何個集めても足りないほどの、とてつもない願い事とは何だ?

 

「なのははどう思う?」

「ジュエルシードのことはどうでもいい。わたしは、あなたがわたしたちにとって危険な存在だと思ったから捕まえた。それだけなの」

 

 なのはの考え方はある意味わかりやすい。自分たちに害をなす存在か否か。

 この子にとっては、フェイトもジュエルシードの暴走体も変わりないのだろう。

 ……でも、こんな調子だといつまでも解決できない。今日は俺が話を進めていく必要がある。

 

「フェイトと言ったな。君が今後、俺を狙うことはない?」

「無関係な人を攻撃するつもりはない。でも、ジュエルシードを持ってる相手とは……戦う必要がある。こうして捕まってしまったけど、諦めることはできない」

 

 そう言って、真っすぐ俺の目を見てきた。強い意志を感じる。

 俺はどうするべきだろうか。最も平和的な解決法はなのはの持つジュエルシードをすべて渡してしまうことだが、フェイト母が何を願っているのかわからない以上、それは大きな危険を伴う行為となる。極端な話、この世界の破滅を願う可能性だってあるのだから。人格的に問題がありそうな人間に、自分から大きな力を与えるようなことはしたくない。

 しばし考えた後、俺は再び口を開いた。

 

「……だったら、全てのジュエルシードが集まった時にそれを賭けて戦うってのはどうだ。戦うことを避けられないのなら、その方が効率がいいと思う」

 

 俺なりの案を出した。これから何度も何度も奪い合いを続けるのはあまりにも無駄であるからだ。

 今までと同様にお互い別行動で回収作業を続け、世界に散らばっているジュエルシードが全て無くなってから最終決戦をする。その方がわかりやすいだろう。

 ……もちろん、なのはが勝つ前提だ。負けてしまった場合、フェイト母は一瞬にして全てのジュエルシードを獲得することになる。それがどんな結果を招くか、正直怖い部分もある。しかし、戦いの結果以外でフェイトを納得させることはできないとも思う。

 

「わかった。あなたたちは、それでいいの?」

「わたしはみーくんのしたいようにする」

 

 なのははどっちでもいいというか、あんまり興味がなさそう。

 でも、反対されなくてよかった。絶対にここで打ちのめすとか言い始めたらどうしようかと思った。先ほどまでと比べると、だいぶ冷静になってくれている。

 ……結局はなのは頼みだ。なんとも情けないが、こればかりはどうしようもない。

 

「……ありがとう」

「でも、サーチャーは飛ばしたままにするよ。あなたを信用してるわけじゃないから」

 

 そう言って、なのはは二人の拘束を外した。

 彼女たちはゆっくりと立ち上がり、魔法で空中に浮かび上がる。

 とりあえずこの場は一件落着となりそうだ。

 

(はぁ、疲れた……)

 

 どっと疲れが出てきた。真夜中の話し合いでもうヘトヘトだ。

 

「ふわぁ……にゃ、ごめんなさいなの」

「いいよ、こんな時間なんだし」

 

 なのはもかなり疲れている様子。俺よりも早く動いていたのだから当然か。

 なんだか朝起きられるか心配になってきた。

 

 飛び去る直前、最後にフェイトがこちらを向いた。

 一瞬微笑んだような気がしたが、俺の見間違いだろうか。

 

「あなたはすごく変わった人……」

「あははっ、よく言われるよ」

「そうなの?」

 

 きょとんとした顔は、純粋でかわいらしい至って普通の少女のもの。

 そこに、フェイトの本来の性格が垣間見えたような気がした。

 

「ああ、そうそう。俺には嶺人って名前があるんだよ、フェイト?」

「……うん。嶺人、今日のことは感謝する。あなたがいなかったら、私とアルフは今ごろ死んでいたかもしれない」

「そうかもな。うちのお姫さまは、怒ると怖いんだよ」

 

 さっきの魔法は、フェイトにとって軽いトラウマになっているようだ。

 まあ無理もないだろう。なのはが撃とうとしていたアレは、その威力もさることながら、強烈な殺意を感じるものだった。冗談めかして言ったものの、俺もあの「スターライトブレイカー」を向けられたとすれば……とても平常心でいられるとは思えない。

 

「……はぁ。みーくんはちょっと優しすぎるの」

 

 遠まわしな形で嫌味を言われたからか、なのはは少しむっとしてからため息をついた。

 そして、クスっと笑う。いつもの調子に戻っていることに安心した。

 それを見たフェイトたちは、一度頷いてから夜の闇の中に消えていった。

 

 ジュエルシードを集めている理由を知った以上、俺はあの小さな魔法使いを単純な「敵」として見ることはできない。それどころか、できれば幸せになってほしいとさえ思っている。

 だが、そのためには裏で操っている母親をどうにかするしかない。諸悪の根源を叩かない限り、根本的に解決することは不可能である。

 しかし、俺にはどうにかできるような力がない。何を言っても口だけにしかならないことが本当に悔しくて、辛い。今日もまた、俺は無力感に苛まれるのだった。

 

「なのは。いつか、あいつの母親と戦うことになるかもしれない」

「わたしもそんな気がする。もっと強くならないと」

「……ごめん。何の役にも立てなくて」

「そんなことないよ。みーくんは、わたしにとって絶対に必要な存在なの」

 

 そう言って、なのはは夜空を見上げた。すでに二人の姿は見えない。

 

「みーくんが話し合ってくれたから、あの子が何をしたいのか知ることができた。その向こうに違う敵がいることもわかった。わたし一人だったらできなかったことだよ」

「……それならよかった」

 

 なのはのフォローのおかげで、少しだけ気が楽になった。戦えないのなら、戦えないなりにできることをする。そういう風に考える方が精神衛生上良いのかもしれない。

 

 フェイトとは近いうちに再会することになるだろう。その時はもう、戦うしかない。

 でも、いつかすべてが解決した時は……仲良くなれたらいいなぁと思った。

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