幼なじみは魔法使い   作:トラウトサーモン

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第八話

 初めてわたしが一人ぼっちだと感じたのは、幼稚園に通っていた頃のこと。

 お父さんが事故で入院してから、家族はわたしのことを見てくれなくなった。

 

 お兄ちゃんとお姉ちゃんはお父さんのところにばかり行っちゃうし、お母さんは翠屋。

 誰もいない広い家で過ごすのは、世界からわたしが取り残されたようで寂しかった。

 お母さんが「なのははいい子だね」って褒めてくれることだけが、わたしの誇りだった。

 

 だから、わたしはいい子であろうとした。

 それでも、みんなわたしを一人にする。誰もわたしの本当の気持ちを知ってくれない。

 

 どれだけ頑張っても「えらいね」とか、「いい子だね」とか、そんな言葉をくれるだけだった。

 最初は嬉しかったけど、それもだんだん心に響かなくなっていって、何か薄っぺらいもののように感じるようになった。

 お兄ちゃんやお父さんは、「力は守るためにある」とよく言っている。でも、わたしは守ってほしくなんてなかった。ただわたしのそばにいて、わたしの話を聞いてほしかった。

 そんな思いも、お兄ちゃんたちに嫌われるのが怖くて……打ち明けることはできなかった。

 

 小学校に入った。

 学校なら、わたしを見てくれる子がいるかもしれないと期待した。

 

 結果はその逆だった。

 みんな、わたしのことを気持ち悪いと否定した。あなたとは遊びたくないと言われた。

 ……どうしてだろう? わたしがいい子じゃないからダメなのかな?

 

 それから、もっといい子になろうと頑張った。

 きっとわたしが悪い子だから、みんなに嫌われるんだと思った。

 けれど、いつまで経ってもわたしは一人ぼっちのままだった。

 

 

 

 一人の男の子がいた。

 とってもお勉強ができて、どんなときも落ち着いている男の子。

 その子もいつも一人だった。 

 

「どうしてあんなにいい子なのに、お友達がいないんだろう?」

 

 わたしにはその子が輝いて見えた。

 その時、ようやくわたしは気がついた。

 

 学校という場所は、悪い子が群れている。皆と違う人は邪魔者扱いされるんだ。

 わたしが嫌われるのは、わたしがいい子だから。

 わたしは間違ってなんかいなかった!

 

 それから、わたしはその子とだけ話すようになった。

 あんまりわたしのことには興味がなさそうだけど、わたしの目を見て話してくれた。

 わたしの話を真剣に聞いて、自分なりの答えを返してくれた。

 嬉しくて嬉しくて、学校に行くことが嫌じゃなくなった。

 

 ある日、翠屋の近くでその子の姿を見つけた。

 彼のお母さんと二人並んで、商店街でお買い物をしていた。

 そこで、その子が「みーくん」と呼ばれていることを知った。

 

 わたしもいつか、そう呼べるようになりたいと思った。

 それまでの間、心の中では彼を「みーくん」と呼ぶことにした。

 

 

 

 三年生になってから、わたしに対する嫌がらせが始まった。

 でも、わたしはそれを許すことにした。悪い子が悪いことをするのは当たり前だし、やり返したりしたらわたしまで悪い子になるような気がしたから。

 

 だから、わたしは我慢した。どれだけ苦しくても我慢した。

 わたしはここにはいない。今いじめられているのは、わたしじゃない。

 抵抗したら、わたしはいい子でいられなくなる。

 これを耐えれば、彼らもわかってくれるかもしれない。

 ……そんなのは全部嘘だった。

 

 いつになっても、嫌がらせが止むことはなかった。それどころか、わたしが何もしないのをいいことに、彼らはわたしが痛がるようなことをするようになった。

 

 先生の見ていないところで叩かれた。

 授業中に、背中をえんぴつで刺された。

 椅子に置かれた画鋲が刺さって痛かった。

 

 誰も助けてくれなかった。

 痛そうなわたしを見て、笑っている人もいた。

 

 なんでこんなことばかりされるんだろう?

 同じような態度のみーくんは何もされないのに、なんでわたしだけ?

 

 みーくんはどうして、わたしが酷いことをされてるときも黙ってるんだろう?

 どうして自分からは話しかけてくれないんだろう?

 

 わたしなんて、興味がないのかな。

 やっぱり、わたしのことはどうでもいいのかな。

 でも、みーくんは「いい子」だから……彼のことだけは信じたかった。

 

 掃除の時間にバケツの水をかけられた。

 水をかけた子は、足がすべったなんて嘘をついていた。

 先生に怒られて謝っていたけど、目は笑っていた。

 

 靴下が水にぬれて気持ち悪かったから、持って帰った。

 暗い家で誰にも見つからないように靴下を洗濯機に入れた後、なんだか自分が情けなくなって、わたしは入学してから初めて泣いた。

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