咲希は志歩を思って言った。
「これからも、アタシ達と一緒にバンドをしてくれるよね!?」
「…」
志歩は沈黙していた。
「志歩ちゃん…?」
「私には叶えたい夢があるの」
「えっ?」
驚く、後藤ふたり。
「プロになって、誰かの心に響く音楽を奏でたい」
「それが…志歩ちゃんの夢…!」
「あ…」
「志歩ちゃんは、ずっとそう言っていたよね」
「その夢を出来たら、5人で叶えたいと思っていた。
ふたりに一歌に咲希に、それに穂波とで」
「だったら!」
「どこかで、ボンヤリしていたかもしれない」
「えっ?」
「でも、みんなはそうじゃない。
プロになりたい訳じゃないから…」
「だけど!」
と、一歌が言いだす。
「一歌ちゃん!」
「誰かの心に響く演奏をするって気持ちは、私にも、
わかりかけた!だから、もっと上手になって練習して、
志歩に追いつけるくらいになっているのはずなのに…」
「その気持ちは、凄く嬉しいよ。
でも、だからって、プロを目指せれる?
プロを目指すってことは、今まで以上に、
自分の時間を練習に費やさないといけない。
放課後、練習以外、何も出来なくなる。
それに、もしプロになったら、
今までの生活より、大きく変わってしまうかもしれない。
それでもいいの?」
「私は構わない!それでも!」
と、後藤ふたりは言いだすが…
だが、咲希が…
「…」
「咲希には、咲希のやりたいことがあるはず。
私の夢に、みんなをつきあわす訳にはいかない」
「そんなこと言われても…」
「でも、アタシは一緒にやりたいよ!
しほちゃんと一緒に、5人でバンドがやりたいよ!
これからも一緒に!」
「…一緒にやりたいって思ってくれる気持ちはわかるけど、
けど、その気持ちだけじゃ、必ずダメになる。
まずは、覚悟がないと難しい。みんなには出来るの?」
「プロになる覚悟…!ふたりにはある!」
「アタシは…アタシは…うぅ…うわぁーん!」
と、咲希が泣き出す。
「困らせてゴメン」
と、志歩がどこかに行ってしまった。
「志歩ちゃん!」
「志歩!」
「志歩ちゃん!」
咲希は落ち込みながら、泣いていた。
「アタシ…言えなかった…ちゃんと覚悟があるって…」
「…!」
「咲希ちゃん。泣かないで。私も同じ気持ちだから」
「ほなちゃん…」
「どうしたらいいんだろう…私は…」
咲希は一晩中泣いていた。司が心配する程、大泣きしていた。
泣き崩れていた。
(どうしたらいいんだろう…覚悟って、どうやったら、
覚悟が出来るんだろう…?基準ってあるのかな…?)
と、咲希は生まれて初めて、悩むのだった。