IS学園のひねくれ少女   作:ひきがやもとまち

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『IS原作の妄想作品集』の話数も増えすぎて読みにくかったので減らして整理したかった事情もあった次第。
別に今作じゃなく、他の作品でもいいですので、今の状態だと読みづらいという作品がありました時は遠慮なくどうぞ。

正直、作者自身も読みづらくなってる状態ですので…


第2話

 キーンコーンカーンコーン。

 三時間目の開始を告げるチャイムの音が鳴り響いています。

 小休止の時間を思い思いに過ごしていた生徒たちが席へと戻り、次の授業のために必要な教材を机の中から引っ張り出そうとしている中。

 

「・・・・・・はぁ~~~・・・・・・」

「な、なんですのよ?」

 

 私は盛大に呆れの溜息を吐きます。

 吐かれた相手は狼狽えたように一瞬だけ身じろぎしますけど、直ぐに体勢を立て直して言い返そうとし時計を見上げ、タイムリミットであることを確認すると悔しげに唇を退き結んで席へと座り、すでに準備を終えていた私のとなりで慌ただしく授業開始のため準備に取りかかり出しました。

 

 ノート、教科書、やや時代がかったペンケース。あと、IS関連の専門教材一式。

 それらを規則正しく並べて配置していく彼女からは几帳面な性格が読み取れましたが、それが原因で“さっきみたいな事”をしてしまったのであるならば。

 注意しておくのが人の道ってヤツでしょうねぇ、普通に考えて。

 

「・・・もう少し別の言い方をしても良かったのではありませんか? あれでは折角の親切が大きなお世話と受け取られかねませんけども?」

 

 どんがらがっしゃーっん!!!

 ・・・並べ終えようとしていた勉強用具一式を机ごとひっくり返して、盛大にこけて驚きを表す金髪ドリルヘアーでお嬢様っぽいイギリス人貴族の彼女――セシリア・オルコットさん、でしたかね?――は、想像していたより遙かに感情表現が豊かな方でした。

 つか、豊かすぎます。どこのドリフですか貴女は?

 

「い、いいい、い、一体なな、何の話をしてらっしゃるのか、わわわたくしにはサッパリですわね。勝手な憶測でものを言うのはやめていただけませんかしら?

 わたくしこれでも誇り高き英国貴族ですから! 無礼には相応の処罰を覚悟していただきま――はっ!?」

 

 演説の途中で突然停止。周囲を見渡してみれば、授業開始の準備で忙しい中、一人だけオペラ座みたいなポーズ取って名演しているイギリス貴族令嬢様がいるじゃあーりません、か!

 

 ・・・と言うわけで悪目立ちしすぎてます。

 ただでさえ小さい声で話しかけてて、生まれつき声量そのものが低くしか声が出せない転生体の体を持つ私に対して話しかけるときに使うボリュームじゃありませんでしたからねぇ。

 赤面するのが道理、「し、失礼しましたわ・・・」と一言謝りを入れてから道具類を拾って座り直すのもまた道理でしょう。

 

「・・・・・・この恨み、末代まで忘れませんわよ・・・必ずや復讐して差し上げます。誇り高き英国貴族が一員、オルコット家の名誉にかけてね!」

「貴族の誇りと名誉って、そんなに安っぽいものでしたっけ・・・?」

 

 逆恨み+自業自得の結果で復讐を誓うのに使われる名誉ある家柄の家名。

 おお、我が麗しのグレート・ブリテンよ! かつての栄光や何処へ!?・・・とでも猿芝居すればよろしいのでしょうか? 彼女流の誇りと名誉に合わせるとするならば。

 

「ですが、私が言った事は事実ですよ? あんな持って回った言い方をしたのでは誤解されて当然。嫌な言葉を言われて不愉快になり、怒って帰ってくるのは本末転倒も甚だしいところです」

「ぐ・・・・・・」

「特に中学生男子とか高校生男子なんてプライドの塊みたいな生き物なんですから、女の子から説教されて愉快がる物好きは変態趣味の方たちぐらいなもの。

 しかも貴女は見栄えがいい。男という生き物は不思議とかわいくない女の子に文句言われても気にしない割に、かわいい子に言われるとカチンとくる変な癖がありますからね。気をつけませんと余計な恨みを買うだけですよ。

 殊に、男子ではなく“男の子”だったら尚更に・・・」

 

 偏見混じりの決めつけである事を承知の上で、女子らしくもない男の子に関する女子トークを敢行する私。ちなみに情報ソースは前世の私です。黒歴史はためになるけど、恥ずかしい。

 

「・・・・・・分かってますわよ、そのくらいの事は。貴女なんかに言われるまでもなくね」

 

 不愉快そうに唇をとがらせて彼女は返し、私は肩をすくめました。

 ――二時間目が終わって休み時間に入ったときのことです。彼女は席を立って例の『世界で初めて発見された男性IS操縦者』のところへ行き、こう告げられたのでした。

 

 

『まあ! なんですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるのだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?』

『わたくしを知らない? このセシリア・オルコットを? イギリスの代表候補生にして、入試主席であるこのわたくしを!?』

『そう! エリートなのですわ!』

『本来ならわたくしのような選ばれた人間とは、クラスを同じくすることだけでも奇跡・・・・・・幸運なのよ。その現実をもう少し理解していただける?』

 

 

 ――等々。

 そして、これら一通りの自慢話を済ませてから、ようやく本題に入った内容がこちら。

 

 

『大体、あなたISのことについて何も知らないくせに、よくこの学園に入れましたわね』

『ふん。まあでも? わたくしは優秀ですから、あなたのような人間にも優しくしてあげますわよ』

『ISのことでわからないことがあれば、まあ・・・泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよくってよ』

 

 

 ・・・・・・あの流れで最後の最後に要件を付け加えるように切り出す、このコミュニケーション術の基準がわかりません・・・・・・。

 

 

「普通に『熟練者として初心者の指導をしてあげましょうか?』だけで済むところを、何故あそこまでの長広舌に・・・・・・?」

 

 しかも前フリが台詞の大部分を占めてる、西尾維新先生の『物語』シリーズみたいな言い回しで。

 好きですけどね、化物語。特にアニメ版『偽物語』が。・・・時々、阿良々木くんの一人語りが「ウザイ、早く次にいけ」と感じていたのは秘密ですが。

 基本的にギャグパート好きな私です。

 

「・・・・・・仕方ないじゃありませんの・・・。順位制で階級社会である今のIS時代において、わたくしたち専用機持ちは面子と権威に縛られた存在。侮られてしまったら、そこで終わり。

 次から次へと下から上がってくる後輩たちに、直ぐにでも席を奪われてしまいかねない・・・。実力だけでやっていけるほど、ISバトルの世界は甘くありません」

「まぁ、仰ってる事は分かりますがね」

 

 私は首肯し、前世の知識と比べ合わせながらIS社会の現状を洞察し、彼女の言ってる事が大部分は正しいのだろうと結論づけます。

 

 この世界、《インフィニット・ストラトス》の中でIS操縦者は特殊な立場に置かれた人たちです。

 非常時には戦力として戦場に赴かなくてはならない反面、平時においては非常時に備えた訓練さえしていればいい軍隊とは全然違ってる。

 

 平時においては『アイドル』でなければならない義務が、IS操縦者には課せられている。お金を稼いでくる事こそが平時における彼女たちの役割であり、国防の要の使い道。

 作った兵器をテレビで撮って全国放送、お茶の間に届けて人気が出て有名になり。

 そしてスポンサーについてもらって、関連商品売り出して、聖地巡礼で選手の母国に観光客がドッサリ! 落としていくお金もタンマリ!

 

 第二次大戦前じゃないんですから軍需産業だけ儲かるために陰謀論がどーの、死の商人がどーのこーのと言った誇大妄想で世界経済は動かせられるはずもなく。

 結局は民間全体にお金が循環するシステムを作り出さなければならず、また『作り出せさえすればそれでいい』

 

 勝ち負けなんて関係ない。究極的には『負けて儲かるなら、それこそが正義!』

 ・・・資本主義とはそういうものです。IS産業が世界第一位の主要産業になってるIS世界では、より顕著な問題になっている事でしょう多分。いや、知りませんけども素人なんで。

 

 

 まぁ、何が言いたいのかと言いますなら、

 

『IS操縦者は強いだけじゃダメ。人気が大事、イメージが大事。入ってきたばかりの新人に舐められてるようじゃ、この渡世は渡っていけない。昨日今日IS動かしたばかりの素人さんに舐められてたんじゃ、こっちの商売あがったりなんだよ。アアン?』

 

 という感じに・・・なんかヤのつく商売の方が入ってませんでしたか? 今の妄想・・・。――ま、いっか。

 

 

「ましてIS学園は、倍率一万倍のエリート校。ここに入学できているという時点で既に世間から見ればエリートの一員も同様です。

 専用機持ちと量産機乗りの違いは『専用機を与えられているかどうかだけ』・・・それがIS適正を発見されなかった部外者である“お客様たち”から見たIS操縦者・・・。

 そんな中でエリートという肩書きは自ら主張しない限り、商品価値は無いも同然・・・」

「・・・・・・」

「わたくしには何があろうと絶対に、守り抜からなければならない大切なものがあるのです。

 その為に必要なら、たかが素人の初心者一人に嫌われるぐらいどうってことも――っ!!」

「・・・・・・先ほど申し上げたように、仰る事はよく分かるのですがねぇ・・・・・・」

 

 ポリポリと頬をかきながら、私は彼女が気づいているのかいないのか、判然としない部分について指摘するだけ指摘しておく義務だけは果たしておく事にいたしましょう。

 

 

 

「でも、さっきの言い方だと、単なる『女尊男卑右翼で苦労知らずなワガママお嬢様』にしか見られなかったと思われますが?」

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・??? あれ、返事がない。少し目線を合わせてみてみようと――って、うわっ!?

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・(・o・)」

 

 ・・・見事なまでのハニワ顔になってらっしゃいますね・・・。余程意外な言葉だったようです。

 もし今の彼女を肖像画に描かせてタイトルを付けるとしたら『OH・・・』でしょうか?

 

「・・・・・・really?」

「マジですが、それが何か?」

 

 あ、間違ってましたね私の予測回答。そんな呑気なことを考えながら適当な気分で答えた私とは対照的に、オルコットさんは『ズーン・・・』とテンションがズンドコ状態に。

 

「・・・・・・・・・それは予想外の効果ですわね・・・どこで間違っていたのでしょう・・・?」

「最初っからじゃないですかね?」

「・・・やはり今朝の占いに出ていたラッキーカラーのゴールドメタリックを身につけてこなかったのが原因でしょうか・・・?」

「いえ、占いは関係なしに会話内容が根本的にですね・・・、て言うかそんな色身につけるのが幸運って言い出すテレビ局どこですか?」

 

 むしろ、あるんですかそんな会社。ISに治安出動させて潰してしまった方が、世の中と女子高生の平和維持に貢献できるのでは?

 

 ガララ。

 

「――よし、全員席に着いているな。大変結構。では諸君、授業を開始するとしようか」

 

 あ、織斑先生が来ました。

 てっきり1、2時間目と同じく山田先生が教壇に立つと思っていたのですがね。もしかしてその関係で、ちょっと到着時間が遅れられたのでしょうか?

 

「それではこの時間は実践で使用する各種装備について説明しよう・・・ああ、忘れていた。

 その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないんだったな。

 自薦他薦は問わないから、誰か適当にやりたい奴、やらせたい奴がいる者は挙手するように」

 

 ふむ、クラス代表者・・・情報源から聞かされている話によるならば、普通学校で言うところのクラス委員長的な役職であり、言うまでもなく日本の学校においては名ばかり名誉職同然の、お飾り委員長のこと。

 体よく扱き使われる雑用係に名前だけ立派なのつけて中身を誤魔化そうとする、日本人特有のネーミングセンスは世界が変わっても変わりようがない普遍の真理というわけですか。

 

 まっ、真相を知っているIS学園について調べ上げているはずの志望受験して受かった皆さんは誰一人としてまずやりたがらない役職の一つであるでしょうし、面倒ごとは名前で誤魔化されてくれそうな基礎も知らない無名の新人さんに押しつけちゃうのが人の性なのは自明の理ですから、まず間違いなくこうなるでしょう。

 

 

「はいっ。私は織斑くんを推薦します!」

「え。お、俺ぇっ!?」

 

 ――よっし、大命中。これでオルコットさんにも誤解を解くチャンスが巡ってきたわけですね。いっちょ頑張ってもらうとしましょ。

 

「(コソッ)チャンスです、オルコットさん。ここでISの専門家として知識を披露し、その上で物知らずな初心者さんに優しく教えてあげる尊敬できて頼れるベテランの評価を得られる絶好の機会です。是非ともものにして下さいませね?」

「(コソッ)わ、わかりましたわ。ご協力感謝します異住さん。――いいえ、セレニアさん」

 

 そう答えて「ニコッ」と微笑み、毅然とした態度で立ち上がったオルコットさん。これだけやる気があって、頭も悪くないようですから大丈夫でしょう。

 

 期待してますからね? オルコットさん。・・・いいえ、“セシリアさん”。

 

 

 

 

 んで、話し合いの結果はこうなりました。

 

 

『1年1組担任の織斑千冬公認の元、織斑一夏とセシリア・オルコットの決闘を許可するものとする。

 日時は一週間後の月曜日。場所は――――』

 

 

 

 

「馬鹿?」

「・・・オゥ・・・マイ・・・・・・ガット!!」

 

 割と本気でIS世界に住む人間たちのコミュニケーション能力について不審を抱かされた一日でした。

 後に彼女が原作ヒロインの一人である事を知ったときに、正気を疑ってしまったのは現在進行形で生きる当時の私も知らない秘密です。

 

 

つづく

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