IS学園のひねくれ少女   作:ひきがやもとまち

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*続きの更新と一緒に、作品整理のため作中作を分類する運びとなりました。

『我が征くはIS学園成り!』は単独連載として別枠になり、それ以外の単品作は『IS原作の妄想作品集』の二作で、今後は更新の運びとなります。
それらをお読みいただいていた方には、お手数かけて申し訳ありませんが、そちらへ御移り下さい。

最初からこうしていれば良かったのですが、作品数が多くなりすぎるのを恐れた作者の怯懦です。本当に申し訳ない…。


第28話

 

 ざぁ・・・・・・。ざぁぁん・・・・・・。

 遠くから波の音と共に、砂浜の上を歩く音が聞こえてくる。――そんな気がした。

 

(・・・そういえば俺、なにか夢を見てた気がするんだが・・・・・・どんな夢だったっけ・・・?)

 

 起きた頃にはハッキリと覚えていたような気がするのに、今はその内容さえ怪しくて定かじゃない。

 夢なんて所詮そんなもので、夢らしいと言えばその通りなんだが――なんだかとても大事なことだったようにも思えて、もやもやしたものが胸の中に溜まったまま消えてくれずに滞留し続けている。

 

 いつまでも思い出せない夢。

 終わらないかのような白昼夢。

 そんな想いを抱えながら俺は、気がつくと―――

 

 

 夏休みが終わって、新学期になっていた。今日は登校日。

 

 

「・・・え? あ、あれ?」

「どうしましたか織斑さん。鳩が豆鉄砲を食らって頭部を吹き飛ばされた時みたいな表情をされてますが、なにか不審な点でもありましたか?」

「い、いや、なんか今いろいろとすっ飛ばしたような、色々あったことを夢オチみたいに忘れちまったような、そんな違和感があったような気が・・・・・・って言うか、それだと顔残ってないじゃねぇか!? 顔吹っ飛ばす威力の銃で撃たれて表情なんか分かるか!」

「ふむ。では“撒かれた豆を食べて鳩が環境破壊の象徴みたいな顔している”と言い換えますか?

 鳩って色のせいか平和の象徴みたいな印象ありますけど、基本的に都市部にしか生息しない人が出すゴミを食べて繁殖する鳥類ですから」

「え? そ、そうなのか・・・? なんか純白のイメージだったから何となく綺麗な印象あったんだけど――って、ん? 白、色・・・? あれ? えーと・・・・・・う~~ん・・・??」

 

 

 そうして寮から学校までの短い距離を登校しながら、中学時代からの友人と会話しつつ、なんとなく言いくるめられて話逸らされて誤魔化されたような印象がないこともなかったんだけれども。

 

 それでも、まぁ・・・・・・色々あった――と思う。あんま覚えてないけど――夏合宿と夏休みが終わって・・・・・・IS学園は俺たち新1年にとって2学期がはじまる。

 

 

 

 

 

 そして―――そんな織斑一夏たちがイロイロ省略されたような気がしなくもない状態で向かっていくIS学園の一室において。

 先日、テーブルを挟んで3人の少女達が集まっていた。

 

「そろそろ、動くべきかも知れないわね」

 

 囲むように並べられた席の中、中央の座を与えられた少女が呟くような声量で、そう宣言した。

 厳かな緊張感が、室内には横たわっている。

 三人の少女達の内、左右2人の少女達は座についたまま、中央の一人だけが立ち上がり、室内を睥睨していく。

 

 それはあたかも、王に仕える忠臣のように。

 あるいは、一人だけ立たされて虐められてるボッチのように。

 

「正直、この案件に関しては対応が遅すぎたと言わざるをえないでしょう」

「各方面からの苦言も相当数・・・・・・もう、待つのも限界かな~って」

「・・・・・・ふむ」

 

 ぱちん、と扇子を閉じる音を響かせながら中央に立つ少女は2人の言葉を聞き、しばし答えを探すように沈思黙考する。

 相手の思考を邪魔しないためにか、左右の2人は沈黙を以て答えを待つ。

 

 それもまた、ジッと王の言葉を待つ忠臣のように。

 又あるいは、下からの突き上げ食らった案件の対処だけ求めて意見は言わない官僚と総理のように。

 

「――決めたわ。そろそろ動き出しましょう。我らが我らであるために」

 

 くるりと身を翻して2人を見ながら、「クスリ」と怪しい笑みを小さく浮かべながら。

 王は自らの方針を、忠臣たちに決定として指し示す。

 

 あるいは、いじめられっ子のボッチが言うことを聞かざるを得ないからと了承する。

 もしくは、国会答弁で叩かれまくった総理が、とりあえず善処を約束する。

 

「近く、機を窺って接触します。貴方たちはバックアップを」

「りょ、了解しましたぁ~」

「承知・・・・・・」

 

 下校時間を過ぎてるはずの校舎内にある一室を、満月が明るく照らし出す。

 映し出されるのは、怪しく、そして美しく微笑む一人の少女の笑み。

 

 それはさながら、獲物を見つけた猛禽類のようで。

 それはさながら、冷徹なる氷河の女王のようで。

 

 ・・・・・・つまりは、北極でイワシを狙う王様ペンギンの雌みたいな表情ということになってしまうのだろうか・・・?

 抽象的表現というのは、印象派の基準に置き換えるとシュールレアリズム。

 

 だが彼女たちが抱えている、問題視すべき案件は深刻だ。

 彼女たちは大きな問題に直面している。

 

 それは、本年度の新入生に専用機持ちが多すぎること。そして完全なるイレギュラーの存在。

 さらには、この世界とは似て非なる世界で生きた異なる自分の記憶と人格を覚醒させた者。

 オマケとして、なんかよく分からないけど無駄に強すぎる白兵最強ダメ大人女教師。・・・・・・ホントに解決すべき問題が多すぎるのが今年度だったのだ。

 そろそろ動き出さないと本気で流石にヤバすぎる。

 

 書類が溜まっているのだ。決済とサインが必要なのである。

 最終確認と許可だけしてもらえれば後はやっとく状態まで持って行けた仕事だけでも、丸一日は使ってもらう必要があるくらいには溜まっている状態。

 

 そろそろ本気で片付けてくださいと、2人のうち片方は確実に心の中で思っていたけど口には出さない、忠臣だった場合には。

 

 

 

「覚悟してもらいましょうか、織斑一夏クン。ふふふふ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 ――そんなやり取りがあったことなど、つゆ知らず(開催日時が下根時間過ぎた夜だったので)

 織斑一夏と愉快な仲間たちガールズは、9月3日に行われた二学期初の実戦訓練の日になっていた。

 

「フフ~ン♪ これでアタシの二連勝ね。ほれほれ、なんか奢りなさいよイ~チカ~くーん☆」

「くぅッ! 人が反論しづらいときに限って、ムカつく言い方を敢えて選びやがって・・・・・・ッ。次は見てやがれ! 覚えてろよ!」

「アーッハッハ! 犬が吠えてるわねぇ~、負け犬がッ。あっはっは♪」

「ぐぬぬぅぅぅ・・・・・・ッ!!」

 

 勝ち誇った鈴に、超ムカつく言い方と表情で手の平を上側にして「コイコイ」されてる仕草を見せつけられ、更にムカつく気持ちを抱かされながら、それでも負けたのは事実だから受け入れざるを得ねぇ―――マジ悔しいッ!! 相手が威張りすぎない態度取ってくれれば別だったのにクソゥッ!!

 

 今日は1組と2組の合同でやった訓練で、俺と鈴はクラス代表者同士なうえに専用機持ち同士でもあるってことで対戦してみた結果としての『負けた方が勝った方に昼飯奢るルール』での勝負だったんだが、前半戦・後半戦ともに俺の敗北で幕を閉じる完全敗北状態。

 

 これだと流石に負けの悔しさを認めながらでも、俺が飯を奢らないのは男らしくない。・・・ないのだが、やっぱムカつくんだよな! この態度が!言い方が! 男だからッ!!

 

 ――それにしても、

 

「はぁ・・・・・・。なんで海での戦いでパワーアップしたはずなのに負けるんだ・・・? あの時は勝てたはずなのに、鈴たちが負けてた相手には勝てたのに・・・・・・ブツブツ」

「・・・・・・地味に復讐してくるわね、アンタって相変わらず・・・。だから燃費悪すぎなのが悪いって教えたげたでしょうが、アンタの新しい機体は燃費が悪すぎが弱点だって。

 ただでさえシールドエネルギーを削って攻撃放つ仕様の武器がメインだってのに、それが二つに増えたんだから、当てられなきゃ自滅して負けるわよ普通に」

「そうでしょうねぇー。相手が短期決戦せざるを得ない窮状にあって、自分が出てくるまで他の人たちがエネルギー削りまくってた後の状態に陥っていた一対多数の戦いで、相手側に選択肢少なすぎな恵まれまくった戦場だったなら別かも知れませんが、他の場合だとちょっと・・・ねぇ」

「うぐっ!? ・・・・・・ぐう・・・」

 

 途中からセレニアまで加わっての容赦ない事実指摘に、俺としては反論の余地がなかった。なさすぎた・・・・・・クソゥ!

 試合後の昼休みで学食にやって来てから話す内容に選ぶんじゃなかったぜ! やっぱ正論好きな理屈屋も、理屈屋と仲良くなって影響受けた幼馴染みも大ッ嫌いだ!

 

「まぁ、セレニアさんと鈴さんの言う通りなのが、現在の織斑さんが抱えている問題点なのが事実なんですわよね。

 武装だけならまだしも、背部ウィングスラスターも大型化したことで機動性が向上し、イグニッション・ブーストのチャージ時間が3分の2に低下、最大速度は約1.5倍に上昇したとは言え、それら全ての面でエネルギー消費量も上昇。

 それでいて織斑さんの戦い方は、今まで通りの戦闘スタイルに射撃武器を使うようになっただけ程度の変化しかないのが現状。

 おそらくそれが敗因というより、わたくしと勝負した時と全く同じ流れで自滅が多い理由でしょう」

「あの~・・・セシリアさん? 俺は白式の新しいスペックについて、そこまで詳しく教えた覚えはなかったはずなんだが・・・・・・」

「あら? わたくし演算と計算と目測に基づく分析は得意ですのよ?」

「・・・・・・でしたね。覚えてるよ俺も、よ~くさ・・・」

 

 あまりにも正しすぎるセレニア好きになった奴らがなりやすい、中学時代に同級生たちが陰口で言ってた『セレニアラバーガールズ』からの言い分を思い出させられるセシリアから見た現状の俺が抱える羽目になった新型白式エネルギー大飯ぐらい問題の課題点。

 

 もちろんスラスターとか、ブーストのチャージとかはシールドエネルギー食わないんだが、荷電粒子砲とかと同じエネルギー系統ではあるから、それこそ上手く使い分けないとセシリアのときの初戦と同じ結果になりかねないんだよな本当に。

 

(それらの問題を解決するためには、近距離戦闘と遠距離戦闘の即時切り替えと、基本戦略の組み立て直しと、射撃訓練の追加と新装備の経験訓練・・・・・・だああっ! やらなきゃいけないこと増えまくってないか今の俺!?

 なんかIS学園に入学したばっかの頃より、夏合宿終えた今の方が覚えなきゃいけないこと多くなってる気がするんだが!!

 俺はセシリアじゃねぇんだが! 数字の計算そこまで得意なタイプじゃないんだけれども!!)

 

 明らかにブルー・ディアーズ使えるセシリアの方が得意そうな状況で、俺の方が相性的に不得意そうな問題を解決しなきゃいけなくなってる現状を前にして頭を抱えざるを得なくなるしかないッ!

 くそう! セシリアだったら出来そうな気もするんだが俺には出来ねぇ! 頭使ってゴチャゴチャ計算するのは苦手って程じゃなくても嫌いなんだよ昔っからさぁ!!

 

「・・・まっ、敢えて問題の要点を纏めて一言だけで集約しちゃいますならば」

 

 セシリア&鈴からの指摘を受けて葛藤する俺の苦悩を見て取ったのか、セレニアが多少の憐憫をがこもった視線でコッチを見つめながら纏めに入ってくれたらしい声を発するのが聞こえて顔を上げる俺。

 

 ちゅるん、と。小さめの唇がソバの麺を飲み込む、小さな音が聞こえてくる。

 ちなみの余談だが、俺たちが食べてる今日のメニューは鯖味噌煮定食で、セレニアは駅前100円掛け蕎麦で、昔ながらの味と値段が好みらしいんだけど・・・・・・なんでこんなのまで置いてあるんだIS学園の学食メニューよ・・・・・・。

 

「今の織斑さんは、“らしくない戦い方”になってるんですよ。だから勝てない。それだけです」

「そ、そうか? そんなつもりはないと思うんだが――」

「そうですか? 大方また秀才の真似事でもして、余計なこと迷いすぎてるじゃありません?

 たとえば――“近距離戦と遠距離戦の即時切り替えできるように~”とか、“それと同時に基本戦略を組み立て直さないと~”とか、“射撃訓練も追加して新装備の経験も積まなきゃな~”とか。

 そんな風に、優秀だけど武技が成熟してない若手騎士とか武士とかにありがちだった、悪癖の典型例みたいな理由で頭で考えすぎて肉体の反応速度を低下させる、秀才の優等生にありがちな失態を。

 ・・・・・・そんなヘマをして、本来の自分らしさを見失ったりとか、初歩的な考え違いをしてないと自信をもって断言できますか? 出来るんだったら別にいいんですが」

「ぐ、ぐぅ・・・・・・」

 

 よ、読まれてやがる・・・完全に読まれちまってるよ俺の思考・・・。って言うかコイツ、本当はエスパーとかじゃないんだよな? 予測の的中率が半端なさ過ぎて逆に怖ぇよ・・・。

 ――まぁ口に出しては、あんま言えない話ではあるんだが。

 前に言ってみたときには、『あなたが典型パターンをなぞってるだけです』と一言でバッサリ切り捨てられちまった事あったからなぁ・・・・・・アレは痛い一言だった。

 

 『平凡』とか『普通』とかの一般的な言葉って、わりと人が傷つく時あるんだって分かって欲しい、昔馴染みな学友への願い。

 

 

「ま、まあアレだな! そんな問題も私と組めば解決だな!」  

 

 そんな中で話題のタイミングに乗っかったのか、「ドドン」と腕組みしながら大見得切って立ち上がってくる箒。

 「どどん」とな、いや局所的な話とかではなしに「どどん」とね?うん。

 

 たしかに夏合宿での戦いで、《絢爛舞踏》っていう特殊機構をもってる新型の専用機を手に入れた箒と組むことができれば、今悩んでいる問題はアッサリ解決できることではあるんだろうとは思う。

 まぁ今んとこ、自分の意思で使用できないって点は問題だけど、そこは解決できる可能性あるわけだし、近い内になんとか出来るかも知れないし。

 それさえ使用可能になれば、確実に解決できるようになれるんだから、解決できる手段がないよりずっと良い。それは確実なんだ。

 

 ただまぁ・・・・・・あくまで『解決できる場合には』の話でもあるわけで。

 

「でも別に、ペア参加のトーナメントとかタッグマッチの予定なんて滅多にないぞ? 一緒に組んで参加できる試合のときには考えてもいいけど、ない限りは必要ないし」

「い、いきなりあるかもしれないではないか!? 学年別トーナメントのタッグマッチも土壇場で急にルール変更された結果だったのだからな!!」

「まぁ、そう言われたらそうなんだけどさぁ」

 

 強い口調で言い切った箒の言い分にも一理ないわけじゃないんだけど、どっちにしろタッグ組める試合やることにならない限りはどーしようもないのに変わりは無し。

 はぁ・・・・・・前途多難だぜ。

 

 

 

 

 

 

 そんなバカ話が交わされ合った翌日のこと。

 

「やっぱり無駄に広い間取りになってますよねぇ~、この学園のロッカールームって・・・」

 

 事実上の私専用状態になってしまっているIS学園のロッカールームにおいて、普段だったら生徒たちでゴッタ返している更衣室とは別途に用意された空間に一人だけという状況の中。

 静かな静寂だけが満たしている場で、私はISスーツを着るわけでもないのに来てしまっている現状に思わず溜息しか出てこようがありません。

 

 位置的には反対側に、二番目三番目の男性IS操縦者が現れてくれることを期待して新設されたという男子用の同じ場所があるそうですけど、一応は女子である私が内装を知るはずもなく。

 それは本当に期待外れな計算違い故だったのか、それとも建設費用や運営費は日本持ちな治外法権IS学園と、国内の建設企業大手が癒着した結果だったから造ってしまった後ならカンケーないぜ的な、最初から箱物物件でしかなかったのか。

 

 それはまぁ、ともかくとして。

 

「まったく・・・・・・こんな場所に忘れ物されて、探すのに付き合わされる身にもなって欲しいですよねぇー本当に。

 大勢の生徒たちが入れ替わり立ち替わりで使用する場所で、小さな装飾品を一つだけ無くしたから探してくれとか、本当に傍迷惑極まりないですねホントーに。

 まっ、誰のせいだとか言う気は少しもないんですけど。誰の責任でもないことぐらい承知してはいるんですけど、でもねぇ~。感情的にちょっと、ねぇー・・・・・・はぁ~~・・・・・・」

 

「――言いたいことがあるなら、ハッキリ言ったらどうなんだ異住?

 遠回しに間接的な言い方をせずに、思っている皮肉と嫌味をハッキリと」

 

「べーつに~。私はなにも思っていませんよ~っと」

 

 

 背後から、この場所にはいない事になってる織斑先生から白い目つきと鋭い視線で睨み付けられながら、背中を向けてるのでな~んも見えない視覚情報はガン無視しながら生徒の誰かが無くしたとか言う落とし物を捜す作業を続行続行―――っと、あったあった。ありましたっと。

 

「・・・まったく。お前という奴は昔から・・・・・・自分ではミュレーだのイングーリだなんだというISスーツメーカーが限定販売した記念商品とやらの見分けが付かんので手伝いを頼む相手にお前を選んだ私にも責任はあるとはいえ、本当にお前は―――ん?」

「それがコレなのでしょう? コレで合ってるんですよね織斑せ―――え?」

 

 ――あれ? 急に目の前が真っ暗になって、後ろにナニカの気配が立たれちゃってるような気が・・・・・・俺の後ろに立つんじゃねぇとかやったらウケますかねコレ?

 そんなアホ過ぎることを考えた直後のこと。

 

 

「だーれだ?☆」

 

 

 ピトッと、冷たい手の感触が顔の表面に触れられてきて、背中から大人びた声と言うべきなのか、年上っぽく聞こえる言い方や発声の仕方に慣れてる人の声と言うべきなのか。

 少なくとも、同級生のIS学園生たちよりかは大人びている楽しそうな声がかけられるのが聞こえてきました。

 

 少なくとも、布仏さんとか凰さん達よりかは大人びた声の持ち主ではありますな、間違いなく。

 

「はい、時間切れ~♪ 正解はジャ~ン! んふふ♪」

「・・・・・・ふむ」

 

 やがて手が離されたので、振り返った先におられた方は、奴ではなく上級生っぽいショートカットの女の人。

 チラリと視線を僅かに下げると、目に入るのは二年生をあらわす黄色のリボン。

 

 イタズラ好きな子供みたいな笑顔を浮かべて、何故だかロッカーに扇子を持ってきており、胸のサイズ的には篠ノ之さんより確実に小さくて、私のより―――ゴホンゴホン。

 それはまぁ――別によろしい些事として。

 

「チックタック、チックタック、制限時間は残り10秒でーす☆ さぁ~答えは分っかるかな♪」

「・・・・・・去年と今年度のIS学園生徒会長の、更識楯無先輩さん。ではないですか? 多分ですけど」

「あらら? アッサリ見抜かれちゃったのね。サスガ」

 

 と、半ば当てずっぽうで言ってみただけの推測が運良く的中してたようで、相手は意外な反応に驚いたような表情になって(ただし、わざとらしく)私に目隠ししていた両手を広げた、両目と口の三つを使ってビックリしたのポージング。

 

 手に持って広げている扇子には、いつの間にやら漢字が記されていて『仰天』の文字。

 如何にも「バカっぽく演じながら内心では企んでる策士です」って感じの人だなーとか、そんなことを思わされつつ。

 それらは流して、有っても無くてもどーでも良い事柄として対応しつつ。

 

 とりあえず私からも、ネタバレを一つだけ提供をば。

 

 

「いえ、布仏さんから聞かされてましたのでね?

 『かいちょが会いにいくって言ってたから、よろよろ~』とかどうとかって。

 私あの人とクラスメイトで、それなりに仲良くて。生徒会の内情もそれなりには」

「・・・・・・」

「ちなみにですが本人からは、『バックアップしといてってお願いされたのだ~』という理由での行動だったそうです」

「・・・・・・あの子は・・・・・・」

 

 なにか頭痛を堪えるかのようなポーズで眉間を抑え、眉根の端をちょっとだけ「ぴくっ、ぴくっ」と微動だにしてるのを見えなくもなかったのですけど、それも見ないフリして何事も無かったことにするとして。

 

「はぁ~・・・ま、いいわ。結果から見れば悪い形じゃ無かったわけだし・・・。

 ――それでね? セレニアちゃん☆ お姉さん、ちょ~っとだけ貴女にお願いしたいことがあるんだけど~♪

 あなたもよく知ってる、とある男の子の未来と安全に関わってる問題として、ちょーっとだけ貴女にも手伝って欲しいことがあると思ったから来たの♡ お姉さんのお願い、いい子だから聞いてくれると嬉しいな~って♪ どうかしら?」

「・・・・・・はぁ、まぁ・・・。内容にも寄りますけど、生徒会長からの頼み事ということでしたら一生徒として、『生徒会役員共』とかの一員になれとかでも無い限りは異存ないのですが。

 ―――ただ、とりあえず危ないですよ? そこにいると」

「え? なんのこ・・・・・・はぁッ!!」

 

 

 ばさぁぁぁぁッ!!と。

 

 華麗に宙へと舞い上がり、一回転しながら自分自身の背後へと回るためハイジャンプ・バック移動を現実に実行して見せつけてくる会長さん。

 

 その直後。

 

 ドゴォォォォォッン!!!と。

 

 一瞬前まで彼女が立っていた位置を横切るように、真紅色の閃光が真横から彗星の如くスピードで駆け抜けていき、私の目前に星の涙とか刻とか、そんな現状の人類を超えたナニカを見せつけられたような心地にさせられながら。

 

 視線をあげて見上げれば、両足に軽い曲線を描かせながら、それでいて揃えて飛んでいるかのような姿勢の良すぎる肢体で宙に舞い、空中で前後を一回転させるように反転させ。

 冷たく冷静に、冷徹さすら感じさせる視線と瞳で眼下を横切ろうとしていく襲撃者を、狩るべき獲物のように捕らえながら。

 

 スゥ―――と、微かに目を細める。

 そのまま相手の直線上にいたはずの正面から、側面へと自らの位置を一瞬で、ですが見ている者にはスローモーションでも見ているかのような、ゆっくりと自然で無理の無い動作で移動して。

 

 襲撃者の動きを止めるために片手を伸ばし――――その腕を取られて引っ張られ。

 力の流れを無理なく移動させられながら、自分の力で前へ前へと進まされた後に、グルリと身体の向きと位置を反転させられて天井と向き合う姿勢で相手の上へと移動させられた後。

 

 ・・・・・・自分の頭上に、背中向けた状態で、一瞬にして担ぎ上げた相手の身体を・・・・・・はい。下に引っ張りますと、

 

 

 

 ゴキゴキゴキゴキゴキィィィィィィィィィッ!!!!

 

 

「いいいいいィィッ!? ちょ、待っ、クレシア先せ痛ダダダダダダァァァァ~~~ッ!?

 痛いッ! 痛いッ!? 痛いですクレシア先生ッ!! 本当に痛いってば折れる!? フグオオオオオォォォォッ!?」

 

「大丈夫だったセレニア? お姉ちゃんが来たから、もう大丈夫だからね!

 妹の貞操はお姉ちゃんが守るから!! 妹の処女を奪って良いのは姉しか存在しない!!」

 

「そーいうのは結構ですから、要らないですから。本気で姉妹の縁を切れたら安全保てるんじゃないかと、後戻りできない道を探したい願望を刺激されかねませんので。

 なのでまぁ・・・・・・とりあえず、降ろしません? ソレ・・・。

 なんか家の事情に巻き込んじゃったみたいで、申し訳ないですし・・・」

 

「ええぇッ!? そんな・・・ッ、セレニアがそんなこと言い出すなんて・・・・・・私とセレニアが姉妹の縁が切れて、赤の他人で、バージンロードもウェデングロードもケーキ入刀だってOK合法の組んずほぐれつ、ムッチュン♡キュッポン♡なんてそんな・・・☆

 そんな関係、私たちにはまだ早いよセレニア♪ まずは姉妹でラブホテルで泡プレイからが正しい女女交際の守るべき手順とルールなのにィ・・・・・・もうイヤンッ♡♡♡」

 

 

「折れる! 折れる! 折れちゃいけない骨が!! 女の子の骨がホントに折れフングオバァァァァァァァッッ!!!???」

 

「・・・・・・・・・・・・はぁ~~~・・・・・・本っ当に、何しに来てるんだ貴様らとお前らは本当に・・・・・・」

 

 

 

 それだけ言って、今まで傍観し続けていた織斑先生がようやっと、超イヤそーな表情をしながらでしたけど制止のために動き出してくれて、乱入者である姉さんの暴挙を止めるため、生徒会長さんを格ゲーで見たことあるような関節技決めてるところへ歩み寄ってきてくれるのでありましたとさ。

 

 

 いやもう本当に、織斑先生じゃないんでしょうけれど。

 ・・・・・・・・・本っっっ当に、なにしに来たんでしょうかね? この人達って本当に・・・・・・ここって一応IS学園内のロッカールームでしかないはずなんですけどなぁ~・・・・・・

 

 とは言え、一つだけ確かなこととして言えることとして。

 

 

 ・・・「最強だ」と聞かされていたIS学園生と会長さんを以てしても、世界最強ブリュンヒルトと白兵では互角の姉さんのブレーキ役には使えそうにありませんか・・・・・・チッ。

 

 

 

つづく

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