IS学園のひねくれ少女   作:ひきがやもとまち

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第3話

 

 ・・・色々な誤解やすれ違い、互いの事情を知らないが故に引き起こされた諸々の末。

 オルコットさん、もといセシリアさんが申し込んだ織斑一夏さんとの決闘が許可された訳なのですが。

 

 

「・・・入学初日に完全アウェーな外国である日本をバカにして、世界中が研究対象としてほしがっている『世界初の男性IS操縦者』にケンカを売り、あまつさえ飛行時間三〇〇時間超の大ベテランが昨日今日ISを習いだしたばかりの素人相手に五分の条件で戦おうという一方的に有利な条件を提示して、国家権力が介入できない治外法権の地IS学園教師公認で全校生徒立ち会いの試合として成立させたイギリスの代表“候補生”ですか・・・・・・。

 今回の件でどれほど代表の地位から遠ざかったのか、本国の方に聞いてみたくなる失態ぶりでしたよねぇー・・・・・・」

「ごふぅぇっっ!?」

 

 

 ボンヤリと宙を見つめながら私がつぶやくと、オルコットさん、もといセシリアさんは・・・ああ、もう面倒くさい。オルコットさんでいいです、今後はコレで統一させて頂きましょう。

 私に名前呼びは無理。慣れてないし、呼びにくい。だから名字呼びです。

 

 ――オルコットさんは盛大に吐血して床をのたうち回られました。痛そうですし、苦しそうでもありますけど、私は関与しません。自分でまいた種です。自分でなんとかしなさい。

 『自分の発言に責任を取ることが自信の根拠になる』と、昔のギャルゲーで言ってたような気がしますのでね。

 

「ふ、フフ・・・まだですわ・・・・・・まだメインエンジンをやられただけですもの!」

「それ、普通に死んでませんか?」

 

 人体をモビルスーツに置き換えた場合、メインエンジンはおそらく心臓に当たります。それ繋がりで心臓にダメージ受けたから吐血しているイメージと言えなくもないでしょうけど、普通に死にますよね? 心臓がやられちゃったりした場合には。

 

「そ、それにまだわたくしが犯した失敗は戦いが始まる前の一度きり! まだ勝負自体は始まってもおりません! 一度の失敗は一度の勝利によって贖うことが可能! 勝てば良いのですわ! 勝てばね! そうすれば歴史は変わり、過去の失言問題はつぐなわれます! 最後の瞬間まで未来を投げ出さない希望こそ明日を掴み得るものなのですわよ!!」

「まぁ、そういう意見をあるみたいですけどねぇー・・・・・・」

 

 具体的には、ロード・ジブリールさんとか、パトリック・ザラさんとか、フレーゲル男爵とか言う人たちの間では特に。

 

「でも、戦略レベルの失敗を戦術レベルの勝利で覆せないのは軍事上の常識なんですよねぇー・・・・・・」

「あががががががああああああああっ!?」

 

 再び吐血し、今度は絶叫も追加されるオルコットさん。意外と顔芸が器用な方ですね。

 転生した身体が顔面筋肉筋の動きにくい無表情な女の子の身体だったせいで難儀してた部分もありますし、今度教えを請うてみましょうかね?

 

「ふー・・・、ふー・・・、―――セレニアさん」

「はい、なんでしょうか? オルコットさん」

「スイス銀行って、電話番号はいくつでしたかしら?」

「・・・・・・こんなことぐらいで超人的スナイパーに暗殺依頼を出しにいかんでください、イギリス代表候補生で英国貴族のご令嬢様・・・」

 

 つか、そもそもスイス銀行なる銀行は無い。

 ・・・そういえば確か、IS学園入学時に見た有名選手と将来有望な代表候補生たちの欄にオルコットさんの機体も掲載されていて、『ブルー・ティアーズ』っていう狙撃が得意なISでしたねぇ。

 アレ繋がりで狙撃系のネタがお好きなのでしょうか? ちなみに私の好みはシモ・ヘイヘさんです。

 

「・・・まぁ、過ぎたことは仕方がありません。

 やってしまったことを無かったことには出来ないのですから、いま置かれている状況を少しでもマシな方に改善することに尽力することこそ、今を生きる私たち全ての人間にとって大切なことであるはずなのです・・・!!」

「ものは言い様だなぁ~」

 

 勢いでごまかそうとして、全然ごまかせてない系の典型例みたいな状況下。

 むしろ私的には「一向宗並のスゴい言いくるめを見た」って方が合ってる気がしました。

 

「まぁ、いいですけどね別に。オルコットさんの問題なので私的には責任を共有することも出来ないので、どうすることも出来ず関係ないですし」

「・・・・・・かわいい顔して、全然優しくありませんわよね。セレニアさんて・・・・・・」

「・・・私の問題は置いておくとして、どうされますか? 言われたとおり放課後まで残ってみましたけど、この後どうするかの予定は考えておありなので?」

「無論! 特訓ですわ!!」

 

 どどーん!と、オルコットさんの背後に葛飾北斎のビッグウェーブが写る景色を幻視しました。それほどまでに気合いとやる気に満ち満ちておられたのです。

 

 ・・・要するに見た目の小ささに反して受ける印象がデカいと言うこと。スモールな絵葉書サイズに書かれた大津波。それが葛飾北斎の作品『赤富士』『ビッグウェーブ』。

 

「獅子はウサギを狩るのにも全力を尽くすと言いますでしょう! わたくしは何も才能だけでやっている苦労知らずの天才などではありません。努力と才能で計画的に結果を出してきた秀才型の人間です!

 だから今回も素人相手とはいえ手を抜くつもりはありません! 必ずや完勝し、不満やブーイングを押さえ込めるだけの成果を皆様にお見せする所存ですわ!」

「・・・まぁ、イジメにしか見られないかもしれない可能性はひとまずおいておくとして・・・」

 

 私はポケットの中から引っ張り出した紙にメモした内容により、いくつか彼女にご忠告しなければならない事があるのをお伝えいたします。

 

「ここに、オルコットさんにとって残念なお知らせがいくつかあります」

「?? なんですの? わたくしの特訓に際して何か問題ありまして?」

「はい。――まず最初に的代わりに使う予定だったドローンやバルーンの使用許可が下りませんでした。整備中とのことです。なので使いたければ整備が完了するのを待って欲しいとのことだそうです」

「あら、そうでしたか。困りましたが、今回の試合は突発事項ですし仕方がありませんわよね。

 それで? 整備が完了するのはいつ頃を予定していると言われまして?」

「早ければ明日には終わるし、遅ければ一ヶ月かかるかもしれないと言われましたね」

「間の幅が長すぎませんか、その整備期間!?」

 

 驚愕顔のオルコットさん。

 気持ちはわかりますけど、報告にはまだ続きがあるのです。

 

「次にもうひとつ、大きな問題が発生しました。使用申請を出したISアリーナの予約がどれもいっぱいだとのことだそうです」

「む。・・・まぁ、それもまた道理でしょうね。わたくしたち一年はともかく、二年三年の上級生の皆様方は練習熱心な方もおられるでしょうし、授業を優先しなければいけない一年生より上級生方の方が優先的に練習場所を割り当てられるのは当然のことで―――」

「こちらもオルコットさんの手番が回ってくるのは『明日か明後日か一年後ぐらい、ちょっと予想がつかない』と言われましたが?」

「完っ全に嫌がらせしてきてますわよねぇ!? そのIS学園職員の皆様方は!?」

 

 オルコットさんが遂に切れました。むしろ遅すぎるくらいでしたが、どうしようもありません。

 なにしろ――――

 

「日本をあれだけ侮辱しまくった外国人生徒と、今最も話題沸騰中の人気アイドル系イケメン少年の日本人生徒が戦うわけですから、依怙贔屓されるのは致し方ないことでは無いかなと」

「くぅ――・・・っ!! これだから閉鎖的で引きこもりがちな村社会の極東島国民族はぁぁぁっ!!」

 

 ヒドい言われようをされてしまいました。反論も否定もする気ありませんけどね。

 元日本人とはいえ、私は日本人のこういうところは前世から嫌いな性質でしたから。

 

「とは言え、あれだけ差別発言繰り返しまくって『世界初のIS男性操縦者』をボコる発言したイギリス上流階級出身の専用機持ちが相手な訳ですから、『女尊男卑左翼の回し者が自分たちの敵を早めに排除するためIS学園に介入してきた』と解釈されてもおかしくないわけでして・・・難しい問題ですよねコレって」

「NOォォォォォォォォォォォォッ!?」

 

 どっかで見覚えのある外国人労働者のごとき叫び声を上げて、セシリアさんは今日何度目かの血反吐ぶちまけ床ゴロゴロを再現した後、ようやく立ち上がり前を見つめ直しました。

 ――瞳のハイライトが薄くなってきてる気がするのは、気のせいだと私は思いたい・・・。

 

「・・・もう、素直に恥を忍んで織斑先生に相談しに参りましょう・・・・・・あの先生は公私混同されなさそうですし、教員たちによるあからさまな身内贔屓や仲間同士の庇い合いなどに惑わされること無く公平に裁いてくれるはず・・・・・・」

「その判断が妥当だと私も思います。思うのですが・・・少しだけ厄介な問題がひとつ」

 

 ちょいちょいと、彼女に後ろを振り向くよう指先でジェスチャーし、「??」と不思議そうにしながらも素直に振り返った彼女が見た視線の先にはピカッと光る一瞬の光と、誰かが走り去っていく上履きが鳴らす足音の余韻。

 

 一瞬だけ見えた先ほどの光は、おそらく反射光。

 カメラのレンズに夕焼けの光が映って反射した一瞬の光だと思われます。

 

「・・・」

「今や貴女は、IS学園全部が敵だと思った方がいい状況です。織斑先生に相談すれば解決されてしまう程度の問題である以上、必ずや敵は妨害工作に訴え出てくるでしょう。

 仮にそれらを突破されて織斑先生からお叱りを受け雷を落とされようとも、それぐらいで不平分子が完全に大人しくなるなどと言う甘い幻想は捨てておくことですね。パルチザンやレジスタンスが圧倒的武力による攻撃だけで沈静化することが出来る程度の存在なら、ナチスドイツは恐らく第二次大戦に負けていなかったでしょうからね」

「・・・・・・」

「最悪、貴女が王道と正道を貫き通して勝利して、地位も名声も守り抜けたとしましても、それを快く思わない貴女以外のイギリス代表候補生たちにデマや風聞を垂れ込まれる恐れすらある。

 たとえスポーツマン精神を尊重する尊き人格の持ち主だったとしても、いや、だからこそ許すことが出来ない『その地位に不適格な理由』というものは辻褄合わせや解釈の仕方次第でどうとでも後付けできてしまうもの。噛みつき併せて潰し合わせるのだって、スポーツマンシップを大事にしない実力だけのイギリス代表候補生には有効な戦術たり得るでしょう」

「・・・・・・・・・」

「そして何より重要なのは、貴女が今居る場所は日本。代表を決めるイギリス政府が存在する英国本土より数千キロ離れた極東の海に浮かぶ小さな島国、その中で国家権力が介入できない『本国の地位と権力で特別扱いしてもらえない、特別休暇なんて以ての外』な治外法権の地IS学園1年生の教室にいると言うこと。

 ――地理的条件が圧倒的に不利すぎますよ・・・・・・あなたは直ぐ近くに居る赤の他人でイギリス代表候補生に関与しないし出来ない織斑さんなんかよりも、もっと身近で遠い他の同胞IS操縦者をこそ注視して用心深く事を進めるべきでしたね・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 私の長広舌が終わり、オルコットさんはしばらく沈黙した後。

 小さな声でこう呟かれたのです。

 

「――――ど」

「ど?」

「ドムゥゥゥゥゥ!?」

 

 ブバァァァァァァァッ!?

 

 ・・・・・・もの凄い勢いで放出される口から出る流血。つまりは吐血です。間欠泉なみの勢いで飛び出るそれを人力で押さえつける術は軟弱な元日本人であり、今なお軟弱なのは変わりない日英ハーフな転生者の私にはとてもとても不可能事でした。

 

 なので無視します。見ているだけです。どうせ他に出来る事なんて何一つありゃしない無力で無能な転生者なんてこんなもんです。

 

「げ・・・げ・・・・・・ゲルグ・・・グ・・・・・・」

 

 

 そして思います。

 ・・・・・・なんで旧ジオン量産型MS群? グフだから? でも、いきなり飛ばしてドムだったのはなんでなの?

 

 様々な謎を孕みつつ、私にとってIS学園入学一日目はようやく終わりを迎えるのでした・・・。

 

 ――え? 前回のラストで終わってなかったのかって? 今更何言ってんですかバカ臭い。

 終わったと言っておいて、その後の続きの方が遙かに長くなる物語なんて世の中には腐るほどある時代が現代なのですよ・・・? ね? 今更過ぎるでしょう・・・?

 

 

 

つづく

 

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