我が祖国が築き上げた堅固な永久陣地を破るべく、連合軍はこの道路を通り、遮二無二突進していったのだろう。
大凱旋門に繋がる十五の大通りは、連合軍兵器の墓場と化していた。我らの「ケーニヒスアドラー」を始めとした帝国の戦車と異なり、虚弱な武装、脆弱な装甲しか持ち合わせていない連合軍戦車にとって、万全の防御火器を備えた大凱旋門陣地の攻略は、元から荷が重すぎた。
最も装甲が分厚く作られているはずの連合軍戦車の前面は、帝国が放った対戦車砲弾にことごとく貫かれていた。大穴が開いた鋼の装甲は、破孔を中心として深い亀裂が刻まれ、機動力を支える履帯は真っ二つに裂け、地面に横たわっている。
弾薬の誘爆によって生じた爆炎は一度、戦車全体を飲み込んだのだろう。車体に塗られたはずの塗装は焼け落ち、墨のように黒い焦げ目が車体にははっきりと残されている。生肉のように赤い錆を晒す、頑丈なはずの車体は熱と爆圧で歪み、戦車の象徴たる戦車砲は力なく地面へ垂れている。
そんな、無惨な焼死体を晒す戦車たちが、何百とベレスの道路上に横たわっていた。幾万という連合軍歩兵たちの死体と共に。両手に銃器を抱える、憎悪すら掻き立てる軍服を着た彼らは、帝国の火箭を前にしてぶつ切りにされた死肉を毒ガス溢れる道路上に晒している。
連合国の無能な指揮官が、己が率いる部隊の実力を過大評価し、我が祖国の防衛力を過小評価した結果がもたらした悲劇が、この道路上に累々と積み上げられている死体の山だ。
現代科学が生み出した肉挽機に飛び込んだ彼らが、五体満足で死ねたのならば全く幸いだ。しかし、この悲劇的な場面に飛び込まざるを得なかった彼らの肉体はことごとく、正視に堪えぬほどに棄損している。手足がもげた兵士の遺体はその概数すらも把握できない程の数に上り、頭蓋が裂かれた者、胴が割れた者も枚挙にいとまがない。
如何に帝国の防衛が完ぺきだったとしても、こんな惨状になるまで撤退を命じなかった連合軍上層部の脳みそには、「突撃」以外の戦術がなかったとしか思えない。防毒面を顔に装備した彼らの表情は私には解らないが、きっと自身の命をあたら失わせた無策な上層部への憎悪で眉間に深い溝を刻みこみ、怒りで目を血走らせ、その口を歪ませていたに違いない。
もっとも、連合軍の人間がいくら死のうと、私にはどうでもいい話ではあるか……。
「……」
地べたに転がる連合軍兵士に憐憫の目を向けてしまった自分を恥じた私は、気を取り直し、大凱旋門の美しさを最大限に引き立てる準備を始めるのだった。