地雷女の遊矢♀が舞網市のアイドルになるまで。 作:ウェットルver.2
誰かにアクションデュエルを教える。
だったら、パパや柊先生がやる指導を参考にすればいい。
……と、思ってた。
現実は全然、真似っこじゃダメで。
「いだだだっ、痛い!
痛いから持つな待て離すな落ちる落ちる!!」
詩弦の悲鳴と、混乱極まる叫び声。
それがたびたび遊勝塾の中で響き渡った。
「しゃ、《シャークラーケン》っ!
吸盤じゃなくて触手全体で掴んであげて!?」
狂暴極まる闘魚たち。
それを従える詩弦がいざアクションデュエルをやってみれば、ほかならぬ仲間の闘魚たちに自分がズタボロにされてしまうという、
「もうアクションデュエルをしないほうがマシなんじゃないのかな?」
と見ているだけで思えるようなことばかりが繰り返されていた。
「《揺海魚デッドリーフ》を召喚!
……こいつのどこに乗って、どこを掴めばいいんだ……?」
「乗れても細いから滑り落ちそうだよね……たくさんヒレがあるから、飛び乗ろうにも飛び乗りにくそうだし」
じゃあ無難なモンスターを、と召喚しても。
そもそもが奇形極まる海の生物ばかりなので、モンスターと共に地を蹴れず、宙を舞おうにも共闘できるような立ち回りが思いつけず。
「《鰤っ子姫》、すぐフィールドを離れるんだよな……」
「いちばんマシな子が場に残らないんだよね。
元から小さいから、乗りようはないけども……」
妙案があるかと思えば、そうでもなく。
「うーん……《シャクトパス》は乗れないか……」
「詩弦! 《グリズリーマザー》はどう!?」
「リクルーターはすぐ死なせっ、退場させるから危ないでしょ。
っていうか、俺のモンスターは大体がバトルで退場させて墓地で効果を使うまでが強みだから、へたに乗り込むと、かえってバトルの間に降りるのが危なくなるんじゃないかな?」
「そっかあ……って、リクルーターってなに?」
「モンスターを呼ぶ効果を持つモンスター。
それを指す専門用語。覚えなくていいよ」
「そう? でもリクルーターかあ。
そっか、仲間を呼ぶのが役割だから、モンスターは尽きないけど、アクションカードを探すのに便利かどうかってなると、ちょっと違うんだね……そっかあ……」
解決策になりもしない。
私が頭を抱えていると、詩弦がつぶやいた。
「……いや、待てよ。
つまり、だから、……これはこれでいいのか。」
「詩弦?」
「問題は、《グリズリーマザー》や《鰤っ子姫》で呼ぶモンスター選びか」
詩弦が舞台を降りて、カバンから箱を取り出す。
その箱を開けると、たくさんのカードが入っていた。
「うわっ、いっぱいある!」
「水属性で魚族のモンスターは数が多いんだ。
とはいえ、アクションデュエル専用の構築を考えることになるなんてなあ……」
ウツボが描かれたカードと、マンタが描かれたカード。
それぞれを箱から取り出すと、べつの透明な箱へとカードを移し替える。
「とりあえず、あとでデッキ構築を考え直す。
それはそれとして、このアクションデュエルを解決しないとな」
舞台へと戻り、フィールドを見渡す詩弦。
私の側には、《EMディスカバーヒッポ》たちをリリースして召喚した《オッドアイズ・ドラゴン》。今回のデュエルはアクションデュエルを教えるためなので決着は後回しにして、おたがいにモンスターを呼んでアクションカードを取ることを意識してデュエルを進めてきた。
だから詩弦の場には、いつもどおりのモンスターたちが並んでいる。
《シャークラーケン》。
《揺海魚デッドリーフ》。
《グリズリーマザー》。
《素早いマンボウ》。
そして、《シャクトパス》。
「こいつらでアクションカードを取りに行くには……。
正攻法はさておいて、取りに行くための動きの練習は……!」
詩弦は《グリズリーマザー》に乗り込んだ。
「バトルだ!
《グリズリーマザー》で、
《オッドアイズ・ドラゴン》に攻撃!」
「えっ、」
私のオッドアイズに向かって走り出す《グリズリーマザー》。
「戦闘が成立することで戦闘破壊は確定される。ここで、」
詩弦の《グリズリーマザー》がオッドアイズへ襲いかかる瞬間、詩弦は《グリズリーマザー》から飛び降りて、
「こっちに来いっ、《素早いマンボウ》!」
すぐさま詩弦の股下をくぐり、背びれを背もたれに使って《素早いマンボウ》が詩弦を乗せる。
「戦闘で破壊される《グリズリーマザー》の効果により!
デッキから《鰤っ子姫》を特殊召喚し、効果発動! デッキからレベル4の魚族モンスター、《ディープ・スィーパー》を特殊召喚できる!」
ゆっくりと速度を落としながら宙を泳ぐ《素早いマンボウ》に並走するように現れた《ディープ・スィーパー》の背中へと詩弦は飛び乗り、スケートボードのように操ってアクションフィールドの壁を滑走しながら昇っていく。
彼の後ろ姿を見て、私は目を見開いた。
「そうか、そうすればよかったんだ!」
どうして気づかなかったんだろう!
詩弦のデッキには、モンスターを呼ぶモンスターが多くいる。
ということは、次から次へと詩弦がモンスターを呼び寄せるたびに、どうやってアクションフィールドを駆け巡るのかを選択しやすくなるということ。そうやって乗り継いでいけば、移動する視点や速度を切り替えて、いろんな角度からアクションカードを探せる!
「……あった、そこだ!」
軽く腕を動かしたかと思えば、すぐさま腕を掲げる詩弦。
その腕の先、手の中にあった小さな輝きは――――!
「アクションカード!?」
「これでアクションカードをいつでも発動できる!
攻撃力のさがった《オッドアイズ・ドラゴン》へ、
《シャークラーケン》で攻撃してから総攻撃をかければ、このデュエルは終了する!」
「そうはさせないよ!
そのバトルは、私だってアクションカード《回避》で無効にできる!」
「くうっ!」
そういえばそうだった、と気づいて苦々しい顔になる詩弦。
「ここまでやっても、
『アクションカード1枚を相手より先に取れる』
《EMディスカバーヒッポ》の強みが活かされて突破ができないのか……!」
「まあまあ、始めたばっかりだし!」
気にするほどのことじゃあないと、私は思う。
というか、初めてのアクションデュエルで一日目から自分なりの戦い方っていうか、縦横無尽なエンタメってる立ち回りを思いつけることのほうが凄いと思うんだけど。
おなじ小学生なのに、やっぱり凄いなあ。
「……これにさっきのあのカードを組み合わせれば、乗りづらい《ハリマンボウ》の代わりに呼び寄せやすいうえで、《ハリマンボウ》を温存しつつデュエルができるな……よしっ」
まったくもう、せわしないなあ。
あっという間にデュエルのコンボにまで頭が回ってる。
この調子だと、どっちがアクションデュエルとエンタメデュエルの先輩なのかわかんなくなりそうだ。
「あっ、そうか。」
私、遊勝塾だと詩弦の先輩なんだ。
「…………。」
「うん?」
私のほうを見た詩弦は首をかしげるものの、デュエルを続けるために、と意識を切り替えたのか目つきをデュエリスト特有の鋭いものへと戻す。
そっか、そっかあ。
詩弦は確かに強いけど。
遊勝塾の塾生としては、私の後輩なんだ。
今は、誰も遊勝塾に塾生がいないから。
ちいさく、すこしずつ胸が高鳴っていく。
なんとなく恥ずかしくなった。
両手を後ろで組んで、手をもむ。
なぜだろう。両手は熱く、じっとりと汗で湿っていた。
いいね、ここすき、感想をよろしくお願いします。
☆修正のお知らせ
今回のデュエルではカードさばきの一部を変更し、
「《グリズリーマザー》から《ディープ・スィーパー》を特殊召喚した」
(※攻撃力の都合上、本来は特殊召喚ができない)
という内容から、
「《グリズリーマザー》から《鰤っ子姫》を特殊召喚し、
《鰤っ子姫》から《ディープ・スィーパー》を特殊召喚した」
(※間に《鰤っ子姫》を挟むことで特殊召喚を可能とする)
へと修正しました。
こういう√変更が楽なのが魚族デッキのいいところ。
今回の話は?
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まだまだだね…