地雷女の遊矢♀が舞網市のアイドルになるまで。   作:ウェットルver.2

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 オマケつきです。


いや、だから、べつに俺のとかじゃないし。

「『カードゲームに体力と筋肉は要らない』……。

 そんな気は()()()()で、集中力と持続力の向上のためには間違いなく要る。」

 

 権現坂昇という新しっ……()()()()()()()ができた後。

 詩弦は自分に言い聞かせるように、自分の考えを言葉にしていた。

 

「長時間のテーブルデュエルでも猫背と腰痛の危険がある。

 テーブルゲームは勝負が長丁場になると、『普通に座る』という行為にすら疲れてしまう。

 TRPG然り、将棋然り、パソコン作業も然り、いずれも背筋と腹筋と肩周りの筋肉がそれなりにないと、筋肉疲労から集中力を削がれてしまいかねない。」

 

 

「だから、これは無駄なことじゃあない。

 無駄なことじゃないし、は、破廉恥なことでもっ……!」

「詩弦、あと3回だよー」

 

 詩弦の右腕がプルプルと震えている。

 ダンベルの重みに耐えきれていないのか、しっかりと振りぬかれるべき腕が半端にあがり、少しずつ下がっていっている。

 

「ドローの練習でダンベルを持つより!

 実戦のアクションデュエルで腕が疲れるまでドローをするほうが!

 よっぽど楽しいと思うっ……!!! けどっ!」

「ほら、もういっかい! ドロー!」

「それだと遊夜側の鍛錬にはならないからなぁ……!

 そうなると、うん、ドローの筋トレは間違いなく要るっ……! ドロー!」

 

 ぶつぶつと声を出しながら、詩弦は続ける。

 ときおり私のほうを見ては視線を逸らし、なにかを覚悟したかのように視線を正しては、

 

「……いや、だから、これは破廉恥ではない……!」

 

 と、唇をもにょもにょと動かして、困ったように眉を歪めてから視線を逸らしている。

 その都度、彼の顔の赤らみが見えてくるのだけれども。

 そんなに彼が疲れるほど、ドローの筋トレはつらいものだろうか。

 

「だいじょうぶ?」

 

 私はダンベルを横に振るう。

 詩弦が遊勝塾に入塾してから、初めての講義。

 埃かぶった1㎏のダンベルは磨かれ、詩弦専用のダンベルになっていた。

 

 私は見合うように立ってドローの素振りをしながら、詩弦の姿を見る。

 この調子だと、アクションデュエルの最中に腕を疲れさせてドローができなくなる、なんてことになるかもしれない。

 

 アクションカードを拾うため、フィールド内を駆け巡り、時に障害物を登るためにも体力を使うので、アクションデュエルは続ければ続けるほどドローがしづらくなってくるのだ。

 体力が尽きると背筋や腕がヘロヘロになってしまうから、デュエルディスクを立ちながら構えてドローをすることすらできなくなってしまう。

 そういうわけだから、アクションデュエリストは身体は鍛えなきゃいけない。

 

「ねえ、本当にだいじょうぶ?」

「大丈夫っ……!」

 

 額にまで血をたぎらせて赤らんでいる詩弦の顔は、だいじょうぶではなさそうだけれども。

 詩弦がそこまで言うからには、だいじょうぶなのかもしれない。

 

「このままアクションデュエル、いけそう?」

「いけるッ!」

「う、うん、わかった!」

 

 もう腕が疲れているだろうに。

 それでもアクションデュエルを教えてくれと言うのだ。

 先輩の私にできることは、アクションデュエルを教えること。

 

「じゃあ、先に舞台に行って!

 私が装置を動かしておくから!」

「おうっ……!」

 

 詩弦を心配する気持ちよりも、詩弦の気持ちに応えたい気持ちが勝った。

 どちらが正しい気持ちなのかは知らないけれども、今は()()()()()、……そう思うと引っかかるものはあるけれども、違和感はどうあれ遊勝塾の先輩として、後輩の努力には報いたかった。

 

「お待たせ! いくよ?

 『戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが!』」

「『ふぃ』、ぜぇ。『フィールド内を』、ぜぇ、」

「ちがうよ!

 『モンスターとともに地を蹴り、宙を舞い!』 続けて!」

「『モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!』」

 

 こうして台詞を間違えても、私は付き合う。

 

「『フィールド内を駆け巡る!』」

「『見よ、これがデュエルの最終進化形!』」

「ちがうよ、『これぞデュエルの最強進化形!』」

「そうだっけ!?

 『見よ、これぞデュエルの最強進化形、アクション……!』」

 

「『デュエルっ!』」

 

 つきっきりで。

 どれだけ向きあう姿勢が異なっていても。

 エンタメデュエルを受け入れてくれたひとのために。

 ()()()()()()の大切な……! 大切な……。

 

 えっと……。

 

「遊夜?」

「……なんでもないっ!」

 

 もやもやとした、なにか。

 それがかたちを得る前に意識を逸らす。

 

 かたちを得てしまったら、その気持ちが歪む気がしたから。

 

 私の、榊遊夜の彼氏であってほしいひと。

 自分の後輩として、大切に育てたいひと。

 そして、エンタメデュエルの仲間であってほしいひと。

 そのどちらかを言葉にしてしまったら、どちらかだけに意識が偏ってしまう気がして。

 

 偏ったら、いつしか。

 自分の恋心が叶わなくなってしまうような、そんな怖い予感がして。

 

 選ばれなかったどちらかを、永遠に失ってしまうような気がして。

 ほかの願いが叶っていても、私の手にぬくもりは残らない気がして。

 

 

 ……私の■■(もの)じゃなくなる気がして。

 

 

 


 

これまでの詩弦のうっかり(クソボケ)

 

①クラスメイトの性別と名前を「原作主人公とおなじ」なのだと勘違いする

②友チョコの定義と時と場合を間違えて、実質ホ〇チョコな友チョコを渡してしまう。その相手は「原作主人公とおなじ」ではない 女 の 子 なので、事実上の本命チョコになってしまう

③クラスメイトや担任教師の眼前で公然とイチャつきにくる相手に対して、あくまでやることは「原作主人公とおなじ」行為だからと受け入れてしまい、普通のスキンシップと勘違いする

④父親に守ってもらえていない(=父親に味方でいてもらえない)子供の味方になって父親代わりになってしまっている現状に気づいていない

⑤父親も同志も失っていって孤独になっていく女の子に対して「特別な居場所でふたりきり」とかいうシチュの暴力で恋心と独占欲を刺激する

⑥暗黒寺ゲンの恋愛初心者ならではの厄介ムーブを見て、原作との差異をやっと理解したあげく、自分の気持ちを自覚する……のはまだしも、なまじエンタメデュエルの理解者でありデュエルでも信頼でも強い味方であるという異性(カレシ)の立場のうえで榊遊勝(パパ)といい勝負ができてしまったばかりに、暗黒寺ゲンの言動や態度がトドメとなって榊遊夜のメスガキ化が助長された。

⑦原作アニメのエンディングで描かれていた「原作主人公とおなじ」ドローの素振りを真正面から見て、いまさら「原作主人公とおなじ」ではない女の子だという現実を再確認した……のだけど、ふたりきりでデュエルの体裁をしたデートをしている自覚なし←今ココ

 

 

 

⑧これから毎日⑦を、「○○は特別な存在である、まわりとはちがうんだ」と思いたい年頃である中学二年生になるまでの3年間ずっと女の子(カノジョ)相手に繰り返す自覚がない*1

*1
中二病への解釈は諸説ありますが、ここでは一例として「○○は特別な存在である、まわりとはちがうんだ」と表現させていただきます。




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