地雷女の遊矢♀が舞網市のアイドルになるまで。   作:ウェットルver.2

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 この前後編は別視点です。
 ご了解の上、お読みください。

 本日の午前9時より、前編を投稿しております。


間章(後編):運命が始まるまでは。

「俺になんの用だ、―――赤馬零児。」

 

 若くして舞網市の大企業の社長となった男、赤馬零児。

 やつは赤い眼鏡をぎらりと輝かせ、自分の目線を隠していた。

 

「君たちの動向を確認する、それ以外の目的はない。」

 

 赤馬零児は眼鏡をくいっと持ちあげて、傾きを直す。

 

「私の部下からの情報には……そう。

 少しばかり、君たちへの偏見が多く見られた。

 いささか正確性に乏しいため、私の目で確かめることにした」

 

 うん? 俺たちへの偏見?

 

「榊遊勝への偏見、の間違いだろ?」

「……。」

 

 どれだけの実力を得ようとも。

 どれほどの結果を世に遺そうとも。

 結局は、いっときの風評に勝る判断基準はない。

 いかなる名声を得ようが、たった一度の失踪で「臆病者」と呼ばれる。

 

 結果論だの実力主義だの、そんなものは風評には勝てない。

 勝てなかったから、榊遊勝への偏見は変わらず、榊遊夜への偏見しか変えられなかった。

 

 遊夜の戦いを見た、小学校の生徒たちからの偏見しか変えられなかったのだ。

 

「まあ、なんでもいいさ。

 見ての通りだ。ショップめぐりと腕磨き。

 俺のやることなんて、デュエリストなら普通のことだろ?」

「……そうだな。そうとしか思えない。」

 

 ひとに、なにをどう思われるか。

 どれだけ無視をしたところで、その影響は計り知れない。

 目の前の赤馬零児が部下の報告に正確性を得られなかったように、ただの報告や連絡さえも偏見ひとつで歪んでしまう。これでは赤馬零児の思惑も叶うはずがない。

 

「だからこそ、君の動向がもっとも気になった」

「はあ?」

 

 俺を指さし、赤馬零児は話を続ける。

 

「レアカードとは、力だ。

 力を得るためならば、いかなる大枚も叩いて手にする。

 それが、私の知る舞網市のデュエリストというものだ……」

 

 なにを言わんとするのか。

 すこし考えて、答えをひとつ出して……馬鹿馬鹿しいと思った。

 

「レアカード?

 誰もが使えるパワーカードの間違いだろ。

 そいつらに一味加えるから、簡単には勝てないんじゃねえか……!」

 

 おおかた、角道詩弦を異次元のデュエリストだと思ったのだろう。

 答えは正解だ。だが、解法が間違っている。

 

「パワーカードに夢見てるようじゃあな。

 デュエリスト自身が強くなれなきゃ、面白くない」

「……!」

 

 目を丸くしている赤馬零児。

 まあ、そりゃあそうだろう、こいつの母親が”そういう人間”だからな。

 

 あらゆる力ですべてを得るべく、敵をねじ伏せようとする。

 洋子さんの昔話を聞く限り、かつての舞網市の住民とは”そういう人間”だ。

 

 こいつの母親、赤馬日美香は、舞網市の住民らしい人間の典型例だ。

 

 そんなやつの元で育ったのならば、そういう解釈にもなるだろう。

 その手の考えでない自分の発想を秀でたものと捉えて、疑えなくなるのも頷ける。

 

「だから探すのさ、ありふれた弱いカードも。

 弱いカードの中に、俺の求める力が見つかるまで」

「……そうか。」

 

 納得したのか、理解はしきれないのか。

 気持ちを探られないようにしているだけなのか。

 

 無表情のまま、赤馬零児はこちらを見続けている。

 

「榊遊夜。

 彼女は君の望み通りの力を持っていたか?」

「はあ?」

 

 かと思えば、わけのわからないことを言い始めた。

 

「強力なアドバンス召喚の反応を検知した。

 これまでの舞網市では見られない、未知なる―――」

「……くだらない」

 

 しかも、つまらない。

 

「帰る。」

 

 言いたいことは分かった。

 ただ、やはり解法が気に食わない。

 

「なっ。待て、まだ私の話は、」

「そういう解釈は黙っておくほうがいい。」

 

 俺は赤馬零児から背を向けた。

 《オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン》は、この世界での榊遊夜の成長の証だ。

 その力は、通常の舞網市の住民ではありえないエネルギーを秘めているはずだ。

 

 存在を察知した赤馬零児からすれば。

 榊遊夜(ズァーク)の力は、喉から手が出るほど欲しくなる神秘ではあるだろう。

 

 力が先か、成長が先か。

 そんなものを問うている場合ではない。

 榊遊夜に心がある限り、その違いには重要な意味などない。

 強いて言えば、それらを「勝利のために」費やすようになってからが本番だ。

 

 ほかの誰かに強いられてそうさせられる、というわけにはいかないのだ。

 

 せめて、そうなるまでは。

 

「あいつは、あいつのままがいい。」




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