地雷女の遊矢♀が舞網市のアイドルになるまで。 作:ウェットルver.2
榊遊勝 LP4000
「は? 《シャークラーケン》が……負けた?」
いつの間にか、巨大なサメが消滅していた。
間違いなく魔術師を屠ったはずの切り札たる《シャークラーケン》の姿が見当たらず、代わりに魔術師が平然と杖を片手に少年を見おろしていた。
「いや、そいつの手にある杖は……!」
「ほう、君はカードに明るいようだね」
魔術師の主、榊遊勝は微笑む。
「マジシャンたるもの、魔法の杖は不可欠だ。
私は君の攻撃宣言時、トラップカード《アームズ・コール》を発動していた」
明かされる手品のタネは単純なもの。
「このカードは、私のデッキから装備魔法カードを1枚選択し、装備可能な自分フィールドのモンスターに装備することができる。
私が装備させた魔法カードは、装備魔法《ワンショット・ワンド》。装備した魔法使い族モンスターの攻撃力を800アップさせる効果がある。
これで《EMスカイ・マジシャン》の攻撃力は2000から2800にアップし、攻撃力2400の《シャークラーケン》を上回ったというわけだ」
少年、角道詩弦は舌打ちをした。
「……やられたな。
この状況なら、さすがに
「戦闘で詩弦くんのモンスターを破壊させてもらったので、私は《ワンショット・ワンド》の最後の効果で《ワンショット・ワンド》を墓地に送り、デッキからカードを1枚ドローさせてもらう」
デュエルディスクの
「俺はこれで、ターンエンドだ」
「私のターン、ドロー!」
たかが1枚のドロー。
されども通常のドローとあわせて2枚のドロー。
十分に強い。
いつかに詩弦が言った、ドローの加速というやつだろうか。
「私は手札から、
《EMセカンドンキー》を通常召喚。
召喚に成功したため、セカンドンキーの効果を発動。デッキから『EM』モンスター1体を墓地へ送ることができる。私はデッキの《EMバリアバルーンバク》を墓地へ送る」
以前、私、榊遊夜が狙った防御のコンボ。
それを1枚のカードから成り立たせるパパの技量。
これは詩弦からの直接攻撃をかわす準備はそろった、ということだ。
「では、バトルといこう。
攻撃力1000の《EMセカンドンキー》で、
守備力100の《素早いマンボウ》を攻撃!」
「だが、そのおかげで《素早いマンボウ》の効果をもう一度発動できる。デッキに眠る2体目の《ハリマンボウ》を墓地に送り、3体目の《素早いマンボウ》を特殊召喚!」
「そして、《ハリマンボウ》の効果によって、私の《EMスカイ・マジシャン》の攻撃力は2000から1500にまでダウンする……か」
パパは、榊遊勝は、舞網市屈指のプロデュエリストだ。
いかに奇怪なコンボでエースたる《EMスカイ・マジシャン》を弱体化させられてしまうとはいえ、その程度で怖気づいてしまうほど、プロデュエリストとして弱いわけじゃあない。
「だが、これで3体目の効果では《素早いマンボウ》を特殊召喚できなくなった、そうだろう?」
「……そうだな」
「では、心置きなく!
バトルを続行、
攻撃力1500の《EMスカイ・マジシャン》で、
守備力100の《素早いマンボウ》を攻撃!」
そもそも、プロデュエリストになる前から。
歴戦の決闘者であったパパに、デュエルで臆するという言葉はないのかもしれない。
「墓地の!
《キラー・ラブカ》の効果を、発動!」
「なにっ!?」
ないかもしれない、けれども。
想定を越えられると、
「俺のモンスター、《素早いマンボウ》への攻撃を無効とし、その攻撃力を500ダウンさせる!
さあ、これで今は攻撃力1500の、元々の攻撃力が2500
「攻撃力が1000ポイントに、なる……!?」
笑顔のポーカーフェイスよりも、驚愕の表情が勝っていた。
こんな笑顔と驚きを浮かべるパパを観るのは、初めてかもしれない。
「これは、これはこれは!
なかなかにやるじゃあないかっ、詩弦くん!」
小学生でありながら、なかなかどうして。
本当に強いじゃあないかとパパは感心した。
「私はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!」
「俺のターン、ドロー!
俺は手札から永続魔法《
こいつは1ターンに1度、俺の墓地の魚族モンスター1体を手札に戻せる。この効果で俺の墓地の《シャークラーケン》を手札に戻す」
「ほう、逆転劇の再演か。
準備は万端、というわけだな……!」
「……俺は手札から、《揺海魚デッドリーフ》を通常召喚し、効果を発動!
デッキから魚族モンスターを1体、墓地へ送る。俺は2体目の《キラー・ラブカ》を墓地へ送る。そして!
俺は《揺海魚デッドリーフ》をリリースして、手札から特殊召喚を宣言する!」
海流に流されるように墓地へと送られるデッドリーフ。
(おいおい、またこれかよ)と、ヒレの裏をあげて(やれやれ)と笑い、余裕ぶったところで。
突如として現れた、《シャークラーケン》の触手によって捕まり、そのままペロリと食べられた。かわいそう。
「より、さらに!
すべてを喰らう、海の怪物。
こいつが蘇る、《シャークラーケン!》」
仲間を喰らいて現れる《シャークラーケン》。
その瞳はパパのスカイ・マジシャンを睨みつけている。
「バトルだ、行け《シャークラーケン》!
攻撃力2400の牙で、攻撃力1000になった《EMスカイ・マジシャン》に喰らいつけ!」
「この瞬間、私はトラップカード、
《マジカル・シルクハット》を発動!」
「はあっ!?」
「このカードは、私のデッキから魔法・罠カードを2枚選択し、モンスターカード扱いとして特殊召喚できる。
ただし、その攻撃力・守備力はゼロとして扱うのだが……本命は次の効果だ。
このカードは、特殊召喚した魔法・罠カードと、私のスカイ・マジシャンを裏側守備表示とし、フィールドでの位置をシャッフルできる!」
現れた巨大なシルクハットに身を隠し、行方をくらませるスカイ・マジシャン。
「では、詩弦くん。
私の相棒の位置を当てられるかな?」
「くっ。めんどうなコンボを……!」
いったい何が起きるのか。
いや、いったい何を起こされてしまうのか?
なにか嫌な予感がしたのか、詩弦はヤケクソ気味に指さした。
「真ん中のシルクハットだ!」
「……正解だ。迎え討てスカイ・マジシャン!」
「守備力は2000!
攻撃力2400の《シャークラーケン》の敵じゃあない、骨も残さず食い尽くせ!
一生介錯!」
「だがこの瞬間!
フィールドを離れる《EMスカイ・マジシャン》の効果が発動する。
フィールドのカード1枚を破壊できる!
当然、《シャークラーケン》を……と、言いたいところだが、そうはいかない。」
にやりと笑うパパ。
「私が破壊するカードは、
永続魔法《
何度も《シャークラーケン》を手札に戻されては困るからね、確実に破壊させてもらおう!」
「なら、《
こいつが破壊された場合、デッキから魚族モンスターを1体、特殊召喚するか手札にくわえる。
俺はデッキから《ディープ・スィーパー》を特殊召喚し、そのままバトルを続行!
攻撃力1600の《ディープ・スィーパー》で、
攻撃力1000の《EMセカンドンキー》に攻撃!」
榊遊勝 LP3400
「くっ……!」
「よし、これで俺は、バトルフェイズを終了する。メインフェイズ2―――」
「待ちたまえ。」
パパは詩弦の宣言へと「待つ」よう、ジェスチャーで伝えた。
「君は今、
『バトルフェイズを終了する』
と、言ったね?」
「ああ、そう言っ……あ?」
ガラスの割れるような音と共に、《EMスカイ・マジシャン》が現れた。
「えっ、なんで?
どうしてパパのフィールドに《EMスカイ・マジシャン》がいるの?」
「……くそっ。そうか!
《EMスカイ・マジシャン》は魔法使い族!」
私の言葉に応えるように、詩弦がうめく。
「気づいたようだね。」
パパは両手を広げ、発動された魔法罠カードをフィールドへと表示させた。
「この瞬間、《マジカルシルクハット》の最後の効果が発動。その効果で特殊召喚された魔法・罠カードは破壊された。
そして、破壊された魔法・罠カードには、それぞれ君の《
1枚目は永続トラップ《マジシャンズ・プロテクション》。これはフィールドで墓地に送られた場合、墓地の魔法使い族モンスター、すなわち《EMスカイ・マジシャン》を特殊召喚できる。
これで私の相棒は蘇ったということさ」
「……2枚目は?」
「2枚目は永続魔法《魔術師の再演》。
このカードが墓地に送られた場合、デッキから『魔術師』永続魔法を手札にくわえる。
この効果で手札にくわえる永続魔法の名前は、《魔術師の左手》だ」
「ますます面倒になりやがった……!?」
頭を抱える詩弦。
「ねえ、詩弦、どういうこと?」
「最初から《EMスカイ・マジシャン》の攻撃力を元の2500に戻すためのコンボだってことだ」
私の問いかけに、詩弦は答えた。
「カード効果により裏側守備表示にされたモンスターの攻撃力と守備力への増減はリセットされ、反転召喚やリバースが行われるまでは攻撃力と守備力の変更を受け付けなくなる。
つまり、さっきの戦闘で破壊されなかった場合、反転召喚……リバースする、カードをひっくり返すだけで、とりあえずは攻撃力が元に戻るってワケだ。
ひっくり返せずにスカイ・マジシャンが戦闘で破壊されたとしても、墓地に送られる永続トラップ《マジシャンズ・プロテクション》により表側表示でスカイ・マジシャンを復活させることができる……!
墓地から特殊召喚されるモンスターは、元々の攻撃力と守備力を保った状態で特殊召喚できる。
その時の攻撃力も、それまでに弱体化されていた1000ポイントではなく、元々の数値の2500!
要するに、どう転んでもスカイ・マジシャンの攻撃力は回復する、2500ポイントに戻る!
そういう算段だったってことだ!」
「ご明察だ」
パパが拍手をする。
「まさに君の想像通りだとも。
今回のマジックは肉食魚が襲いかかる水槽からの大脱出、といったところかな?」
「大脱出?
逃げ切れると思うなよ!
俺はフィールドの《ディープ・スィーパー》をリリースし、その効果を発動!
残ったリバースカードを破壊させてもらう!」
「《EMピンチヘルパー》を破壊する、か……」
「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ」
「私のターン、ドロー!」
守りの《EMピンチヘルパー》を破壊されても、パパの余裕は崩れない。
「私は2体目の《EMセカンドンキー》を召喚する。デッキから《EMギッタンバッタ》を墓地に送り、続けて永続魔法《亜空間物質回送装置》を発動。
これにより、スカイ・マジシャンの効果が発動できる。魔法カードが発動された場合、攻撃力を300ポイントアップさせる。
その攻撃力は2800となる! バトルフェイズ!
私はセカンドンキーで、《素早いマンボウ》へ攻撃する!」
「この瞬間、墓地から2枚目の《キラー・ラブカ》の効果を発動! 攻撃を無効にして、攻撃力を500奪う!」
「だが次は避けられない!
スカイ・マジシャン!
詩弦くんの《素早いマンボウ》に攻撃だ!」
「破壊はされるが、そっちも逃げられねえぞ!
《素早いマンボウ》の効果により、デッキから《ハリマンボウ》を墓地へと埋葬、《ハリマンボウ》の効果が発動!
何度でも攻撃力を奪ってやれ、スカイ・マジシャンの攻撃力を2300に下げる!」
「やはり攻撃力2400を下回らせるか!
私はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」
「俺のターン、ドロー!」
一瞬の間に繰り返される攻防。
相手の力を奪う詩弦と、より高みを目指すパパ。
攻撃力の数値をめぐった戦術は、見るだけでも私の脳裏へと焼きつかされてしまう。
「墓地の《揺海魚デッドリーフ》の効果を発動。
墓地の魚族モンスター3体、《素早いマンボウ》を3体デッキに戻して1枚ドローできる」
頭での理解よりも、心へと憶えさせられてしまう。
「……よし。
永続トラップ、
《バブル・ブリンガー》を発動!
このカードを墓地に送り、墓地の同名のレベル3魚族モンスターを2体、《ハリマンボウ》を2体同時に特殊召喚できる!」
「それはどうかな?
私は《EMスカイ・マジシャン》の効果を発動する。場と手札の永続魔法を入れ替え―――」
「そっちこそ、どうだろうな!?
カウンタートラップ、
《ギョッ!?》を発動!」
「ぎょっ?」
「除外されている魚族・水族・海竜族モンスター1体、《キラー・ラブカ》をデッキに戻すことで、発動されたモンスターの効果を無効にし、破壊する!
スカイ・マジシャンを破壊する!」
「モンスター効果へのカウンターか!
しかし私の相棒もただでは敗れない。
フィールドを離れることで、君のセットカードを破壊する! 狙いは君の右側だ!」
「そいつは速攻魔法《サイクロン》だ!
スカイ・マジシャンの効果の発動に誘発され、《亜空間物質回送装置》を破壊する!」
「くっ……やはり、聞いたとおりのしぶとさだな、君というデュエリストは!」
飛び交う魔法罠。
負けじと効果を発揮するスカイ・マジシャン。
しれっとデッキに戻って埋葬と発動の機会を待つキラー・ラブカ。
なんだ。
なんなんだ、これは。
「だが、私も負けず嫌いでね。
しぶとくデュエルを続けさせてもらおう」
私の知っているデュエルと、なにかが違う。
プロとかアマチュアとか、そんな線引きでは説明がつかない。
「スカイ・マジシャンが破壊されていない!?」
「トラップカード、
《EMリバイバル》を発動したのさ。
自分フィールドのモンスターが破壊された場合、手札、墓地から『EM』モンスターを特殊召喚できる。私のスカイ・マジシャンも『EM』モンスターだ、よって!
《EMスカイ・マジシャン》もまた再演可能、私たちのショーも
華麗に天空を舞うスカイ・マジシャン。
天空の魔術師を見あげ、睨み、唸る詩弦。
「見逃すな、遊夜!」
パパの声に、思わず背筋が伸びる。
「これぞエンタメの神髄、
ショー・マスト・ゴー・オンだ!」
「……やるじゃねえかよ!
とはいえ忘れるなよ、俺の《バブル・ブリンガー》の効果は有効だ。
レベル3の魚族の《ハリマンボウ》2体すべて、表側攻撃表示で特殊召喚させてもらう」
水しぶきと共に蘇るモンスターたち。
これで再び、詩弦が《シャークラーケン》を特殊召喚する準備は整った。
「ちょっと聞いていいか?」
これから逆転だ。
そう私が期待したところで、詩弦はパパへと問いかける。
「エンタメデュエルって、
「ヒット&アウェイしながら、魂のカードを復活させて盤面を捲る。」
そんなエンタメをしてるやつが言う質問なのか、それー?
舞網市基準だと《EMスカイ・マジシャン》が鬼つええ……。
今回の話は?
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いいね!
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まだまだだね…