フォンテーヌの礼法とやらに則り、一礼をする。手加減する、といったのは本当なのか、剣を抜いたままクロリンデは待ちの姿勢だ。フッ、なめた真似をしてくれる。それなら遠慮なく先手を取らせてもらおう。僕に手加減する、などとほざいたことを後悔するといい。
「風よ!」
戦闘モードに切り替える。フォンテーヌは工業の発展した国だけあって絡繰りとはまた違った特殊な武器が存在していたはずだ。特に銃。見たところクロリンデは剣士だが、博士が開発に関わった銃の中には懐に隠しておけるだけの小さなサイズの型も存在したはずだ。あれは警戒しておくに越したことはない。
「……!」
風をまとって飛び上がった僕に一瞬驚いたものの、それ以上に動揺は見せずに突っ込んできたあたり、冷静で、状況判断力は高いみたいだな。といっても、僕も接近を許す気はない。
「はっ!!そら!どうしたどうした!その程度かい!?」
「フッ!!はっ!……ちっ」
風刀を器用に受け流しながら、こちらへの接近を怠らない。言うだけのことはあるな。法器を上空から操られたら勝ち目はないことを理解して、攻勢になんとか切り替えようとしている。しかし、徐々に服に傷みが目立つようになってきているぞ?さあ、果たしていつまでもつかな?…………ちっ、燃料切れか。一回息を入れるタイミングをつくるか…。
「そこか!」
「何っ!」
彼が一旦地上に降りたのを見計らって、クロリンデが一気に動きのギアをあげた。剣に雷をまとわせると、先ほどよりも格段に速い速度で彼に突撃する。戦況は一気にクロリンデ優勢に切り替わった。接近を許した彼は、腕に風をまとわせて結界をつくり、クロリンデの剣をなんとかさばいているが、ところどころは受けきれず、傷跡が目立つようになってきている。
「お、おい、旅人…。あいつ、大丈夫かな…」
「………」
パイモンが心配そうに声をあげる。
「おお!さすがクロリンデ!最強の決闘代理人だ!」
「あの無名の男も、最初は空を飛ぶなんて奇妙なトリックを使ってはいたけど、所詮最初だけだったな。」
「クロリンデ様ぁぁぁぁぁ!!俺にもアツい剣戟を見舞ってくださあああああい!!」
観衆はクロリンデ優勢に大きく盛り上がっている。一瞬、フォカロルスと視線があった。彼女は得意げな表情を覗かせていたが、こちらと視線が合うと、突然怯えたような表情と共に目線をそらしてしまった。
戦況に視線を戻すと、彼はなんとかクロリンデと距離をとっている。クロリンデの剣はすでに雷をまとっていなかった。
「彼我の差は明白だろう、無名の者。小刻みに戦闘状態と休息状態を切り替えているようだが、すでにもうその時間も見切った。この決闘は罪を問うものではない。降伏するならこれ以上の戦闘は不要だ。」
「フン、よく言うよ。確かに、僕に接近することができる程度には実力はあるみたいだけど、君自身も、雷をまとっていられる時間はそこまで長くないみたいだね。その長ったらしい降伏勧告も、そっち側の時間稼ぎだろう?」
「……なら、これ以上の言葉は不要だな。」
再度剣に雷をまとわせたクロリンデは、風刀をジグザグに避けながら猛スピードで接近する。クロリンデは止まらない。突く!斬る!断つ!クロリンデの猛攻は彼に間違いなくダメージを与えている!ついにクロリンデは彼をこれ以上後退できないところまで追いつめた。
「っつ!!!天へと舞え!」
彼の三度目の戦闘形態。二回これを見ていたクロリンデは、もう驚かない。冷静に防戦に集中し、彼の時間切れをうかがっている。受け流しながらも、一瞬の隙をついて飛び上がりざまに彼を切りつけるほどの余裕を見せていた。思うように攻撃しきれないまま、時間切れを迎えて彼が降下する。本当に、あの『彼』が敗れてしまうのか……。
「はっ!」
クロリンデが降下中の彼に向かってとどめの一撃を繰り出して………。
ちっ、まったく。神の付き人を名乗るだけはあるじゃないか。白フライムが心配そうにこっちを見ているのが気に入らないね。警戒していた飛び道具を一切使ってこないのだけが疑問だが、こちらも向こうの動きはある程度見切った。最も、向こうが見切ったという僕の力は、本当に見切れているのかな?
「はっ!」
そうだろうな。二回も飛び回って見せることでこちらの継続時間を把握しているのは間違いないはずだ。だからこそ、この小さなブラフが命取りになる。
「はあぁぁぁ!!」
「なっ!」
降下するだけのはずだった僕の再度の上昇にクロリンデは不意を突かれて体制を崩した。目標を失って背中を晒した奴に向かって強烈な蹴りを叩き込む。ほう!剣の鞘で受けるか!だが片手で重力を受けきれると思うな!
「でぇぇあ!」
受けきれずに弾き飛んだ奴に向かって、追い討ちの風刀をお見舞いする。ほう、態勢を立て直すのも早いな。こちらもまた時間切れが迫っている。ここで決めさせてもらうぞ!
「君ごときがぁ……むっ!」
なんだこの急接近してくる気配!常人のものじゃない!
「これは一体、なんの騒ぎだ。フリーナ、どういう状況なのか説明してもらおうか。」
そういって、とてつもないオーラを放つ紺色の服装に身を固めた男が僕とクロリンデの間に割り込んだ。水神が小さく『ひぇ、ヌヴィレット…』と悲鳴を漏らした。
※クロリンデの性能がまだわからないので、マシナリーとの戦闘シーンを参考にしています。あまりにも的外れなら実装後の性能に合わせて改稿するつもりです。というか戦闘シーンの演出が物足りないので改稿はするつもりですが、もしかしたら改稿したものはpixivにだけ投稿するかも。
話の区切り的に今回は少し短いです