「まだ立つかっ!私は強者は好きだぞっ!」
「おあいにく様、それは片思いだよっ!」
意識が朦朧とし、いつ倒れるかもわからない状態。
でも……死ぬ気配がしなかった。
痛いし苦しい、それがずっと続くだけ。
今まで何度も味わった命が消える様な感覚、それが無くなっていた。
「なんでお前は治せているんだ?治癒系の権能か?」
「残念!お前の愛する主人様と同じ権能だ!」
「ろ、ローズ様の創造……!?な、なんでお前がそれを!?まさかコピーか!?」
「ローズは僕のおばあちゃんだけどっ……だからなに!?ほら答えたよっ!」
こんなふうに言葉と同時に拳を交わしているが……実際もう限界だ。
なけなしの魔素で心臓は治したけど血がまだ巡らない……へ?
相手の質問に答えたら何故か動きが止まり信じられないものを見る目でこちらを見てきた。
な、なに?
「……すか?」
全く聞き取れない……先ほどまでの大声はどこに行ったのやら。
「え、何……?大きな声で言ってくれない……?」
「て、てことはイヴ様のお子様ですか!?」
「今度は大きいよっ!?」
大声復活しちゃった……
「と、とりあえず座りませんか?僕貧血でふらふらなので……」
「すみませんでしたぁっ……!嫌でなければ私めの血をお吸いください……!」
「遠慮しておきますっ!?」
先ほどまでの傲慢な態度から一変し、とても謙ったような態度になった。
多分僕がローズの孫だからだろう……いやなんで普通に話し始めてるの?なんで?
てか主人の孫娘の心臓潰したのって結構やばいよな……ん?なんで自然に娘って言った!?
「とりあえずお名前を聞いても?」
「私はデルフィと申します……昔は近衛兵団長をしておりました」
「近衛兵って……すごくないですか!?」
ここまでボコボコにされるわけだよ……
彼の実力は本物だ……多分ローズ、お父さん、デルフィさんの順番くらいに。
……お父さんバグすぎない?
「最初はマティーというバカと私とエリカの3人で近衛兵を率いておりました……あの頃は忠誠を誓う主もいて共に酒を飲む仲間もいて……人生で一番楽しい時間でした」
「そうなんですか……」
「ですがっ……!」
そう言って強く屋上の床を叩く。
その拳からは血が滲んでいた……それくらい思うところがあるのだろう。
「エリカが裏切ったんです……私たちはローズ様の目標である人間との共存共栄を目指し動いておりました、ですが貴族どもに当てられたエリカが人間は下等生物なのだから家畜が相応しいなどとち狂ったことを言い始めたんです……」
「そんなことがあったんですか……」
「それは……酷いですね」
「ご、ご友人のお方も申し訳ありませんでした……ある時私が周囲の森の警備を終え王城に帰るとすでに戦火は広がっており、私が駆けつけた頃にはローズ様は灰になられておりました……私は近衛兵失格です……!」
過去を語るデルフィの頬には涙が伝っていた。
胸が痛いな……あ、まだ穴が空いてたんだっ!
「その後マティーになんとかイヴ様を逃してもらったが……成功したんですね……!」
「……久しいな?無事だったようで何よりだっ……!」
気が付かなかったがいつのまにかローズがデルフィさんの後ろに立っていた。
平静を保ってるように見えて口角が上がってるのを僕は見逃さなかったよ〜?
「ろ、ローズ様……!お久しぶりでございますっ!!近衛兵団長デルフィ……しぶとく生きながらえローズ様の元へ戻ってまいりましたぁ……!!」
「褒めて遣わす……住処はどうする?あるのか?」
「私は自分で部屋を借りておりますので……職はここで教師をやることになりました……」
「そうか……あと一つ聞いていいか?」
な、なんか不穏だぞ……?
さっきの笑顔が一変し圧のこもった笑顔に早替わりした。
「はいローズ様!なんなりとお聞きください!」
「なんで私の孫の胸に穴が空いてるんだ?」
「ヒィッ……!?そ、それは私の無知が招いた過ちでして……申し訳ございませんでした……!」
あ、やっぱり気づくし怒るよね……
僕も自分の孫が傷ついてたらこうなるもん。
まぁ体は女の子だけど心は男だし……子供は多分ないだろうなぁ。
「一回死ぬか?ん?お前の大好きな私が直々に殺してやるって言ってるんだぞ?」
「ほ、本当に申し訳ございません……!!その処刑、謹んでお受けいたします……!」
「そうか、私は素直な部下を持ったんだな……じゃあ死ね」
そう言って杭を手に創造し振りかぶる。
と、止めなきゃっ……!
「ローズっ!!お願い辞めてあげてっ!!」
「……どうしてだ?お前を殺そうとしたやつだぞ?しかも心臓を潰してだ……!」
「そ、それでもっ!僕はもう気にしてないし、ただの間違いでしょ!?」
「処罰は公平に……昔から変わらないことだ、彼にだけ優遇するわけにはいかない」
「そこをなんとかできない!?ほ、ほら!可愛い孫がお願いしてるんだよっ!?」
「……す、すまんもう耐えられんっ!あっはっはっはぁ……い、いやぁ面白いっ……!」
「……は?」
ついガチトーンの「は?」が出てしまった……気をつけないと!
これは……要するにまんまと演技に引っかかったと言うことなの?
「か、可愛い孫ってっ……じ、自分でっ、言ってるっ……!ふっはっはってあいたぁ!?」
「そろそろしつこいよ……?孫の失言がそんなに面白い……?」
あまりにも笑いすぎなためつい頭を落としてしまった……治すのはあとでもいいか。
ちなみに今の僕はパニックになっている。
顔は赤面し、力の加減もできないほどに羞恥がやばい……
「僕今めっちゃ恥ずかしいよ?いくら人助けのためとはいえ友達の前で自分のこと可愛いって言ったんだよ?恥ずかしくないわけなくない?ねぇ?ローズはどうなの?自分で自分のこと可愛いって言える?無理だよね?ね?ねぇ?」
「怖い怖い怖い!?なんで呪詛を吐くみたいに喋ってるんだ!?あと頭治していい……?」
「ダメ、失血ギリギリまでダメ。僕でも大丈夫だったし絶対ダメ」
「待って、もうやばい。魔素が足りない……死ぬ」
「ローズ様ぁ!?お気を確かに!?」
「もうダメなの?はぁ……治していいよ?」
許可を出した瞬間持っていた頭を急いで首に創造でくっつけていた。
息が荒いけど……もしかして本当にやばかったのかな?
でも僕は心臓なくても生きてたよ……?
「血液が頭に行かないの気持ち悪いな……と、とにかく私は一回のミスぐらいで殺すほどヤバくはないぞ……だから今回に限りこの失態を許そう。いいな?」
「ありがたき幸せ……このデルフィ、死ぬまであなたにお仕えいたします!」
「これで解決っ!」
「い、いやあのちょっとな……おいまどか、朱莉がいじけてるぞ?」
「朱莉ちゃん!?ど、どうしたの!?」
「わらひ思うんらけど……いつもお話パートに移ったら私のへりふ消えててない……?」
「ちょっ、メタいメタい!?それは作者の力量不足だから仕方ない……おい作者っ!」
「朱莉様にまどか様!?流石にそろそろ落ち着かれては……!?」
おっと、流石にこれ以上はアウトだよね……
「さっきビンタされたほっぺ大丈夫?」
「この通り抉れちゃったよ……あれ?私痛みに強くなった?」
「そ、それはどうして?」
「私最初手を切られてショックで死んじゃわなかったっけ?」
た、確かにそうだった……!?吸血鬼になると痛みが減る……わけないな。
いつも痛いし……まぁ最初に左手が吹き飛んじゃった時が一番痛かった。
と言うか今でもトラウマなんだよなぁ……
「確かにそうだね……ねぇローズ、最初と比べたら僕たち強くなったよね?あ、ほっぺ直すからちょっとこっち寄って!」
「う、うん……」
「そりゃあそうに決まってるだろ?訓練だけじゃなく実戦もあるんだから伸びないわけないな?」
「そうだね……でも少し寂しいね」
「寂しい?」
「あ、言っちゃってた?」
つい心の声が漏れちゃったらしい……
「これは僕の場合なんだけどね?元々人間だったのにどんどん離れていくなぁって考えると少し寂しくなっちゃうんだよ……かと言って人間に戻りたいかって言われれば違うけどね!」
「私もわかるなぁ……なんか人やめちゃったなぁって浸っちゃうんだよね〜!」
「そうそうホントそれっ!特に運動神経変わったのが一番心に来ない?」
「わかるー!」
「なぁデルフィ?若い子ってこんな会話をするのか?教師ならわからんか?」
「赴任してきたばかりですので……ま、普通はしないでしょうね……」
「ローズさまぁああああああああっ!!ここにいましたかぁああっ!!」
「ちょっ、待ってくれマティー!?あ、そうだっ!ほら、デルフィだ!久しいだろっ?」
あ、それは悪手……
「いや、職員会議であってますので……ねぇデル先生?」
「そうだなマティー先生……?」
二人の視線の間に雷が走っている気がするんだけど……気のせい?
「昔はよく私の夜這いを邪魔してくれましたよねぇ?それのお返しがしたいんですがお時間大丈夫ですかぁ?」
「ふんっ、主人を襲う従者がどこにいる?おっと、目の前にいたなぁ?」
「これに関してはデルフィさんが100正しいけど……?」
「まどか様!?」
「ざまぁないなぁ?あ、まどか様!私のことはどうかデルフィとお呼びください!」
「あ、いいの?」
この人……お母さん並みに普通じゃない?
倫理観も常識もあってローズへの忠誠心もしっかりある……この人信用していいかも。
いや、まぁそりゃあ心臓をひと突きされたのはちょっとアウトだけど……それも主人を守るための行動と思えば普通のことか。
「あ、デルフィ?お前今日からまどかの世話係も兼任でいいか?」
「「ろ、ローズ(ローズ様)!?」」
ど、どうしろとぉ……?