メタルギアの世界に転生したので少しでも救える人を救いたい。 作:名無しのダンボール兵
作者は現在MGSVを一度クリアしたのですが、データが完璧に吹き飛んだため、もう一度攻略しております。
……気がつけば転生していた。
前世では男で、メタルギアをはじめとしてゲームばかりして過ごしていた記憶だけが残り、生まれたアメリカ、1950年代。
ボクは前世とは違い女で、それも美少女に生まれていた。
そして何にも気がつくことなく生きていた1964年の8月30日。
前世のゲームの影響もあって機械や生体工学を学び、人生2周目なのでそれなりに優秀な成績を残していたボクは一つのニュースを目にした。
売国奴であるザ・ボスを倒し乗り越えたビッグ・ボス。
その記事は数週間すれば別のニュースが現れて消えて行った。
それでも、ボクの中にこの世界がメタルギアの世界だという確信と、あの物語を少しでも救いのあるものにしたいという独善的な使命感にも似たナニカを抱かせた。
─────
それからボクは彼方からの招待もありCIAに身を寄せ、コスタリカあたりのエメリッヒやストレンジラブと共に研究をしていた。
生体工学などによるエメリッヒの作るピースウォーカーやその他機体の制作に手を貸した。
ホット・コールドマンの思想など興味はなかった。
ただ一つを待ち続けた。
数日前、エメリッヒが基地から消えたと聞いた。
そろそろだろうかと考えながら待ち続けた。
そんなある日。
ボクは、この一帯に監視カメラを仕掛けてあの男の動向を追っている。
だからこそあの男が、伝説の傭兵がボクを狙っていることがわかった。
エメリッヒの前でやたらと
「ここから出たい。別の組織に鞍替えしたい」
と呟き続けた甲斐があったと言ったところか、彼が何かしらを吹き込んでくれたのだろう。一直線にこちらを目指してやってくる。
エメリッヒの研究する基地とストレンジラブの
その上で警備兵まで付くというのだから少しだけ罪悪感を覚えたが、彼の元に行くためにも少しは特徴のある出会いにしたかった。そのためのこの場所だ。
この部屋のすぐそこまで彼が迫っている、それでも扉の鍵は開けておく。きっと彼はボクがこの場所に誘い込んでいることなんてわかっている。
ドアの開く音がする。きっと彼は様々な用途のために無駄に広いボクの部屋の入り口から、散らかった物を蹴らないように慎重にこっちに歩いてきて、自動で彼の映る監視カメラの映像を映し出すようになっている監視モニターを見て困惑していることだろう。好奇心が湧いたので、少し挑発的に話してみよう。後ろは向かず、背を向けたまま。
「ようこそビッグボス、祖国の英雄。会えて嬉しいよ、こんな場所までご足労いただいてすまないね。さて、既にわかるようにボクはずっと君を見ていた。そして待っていたよ、全く……エメリッヒはボクをなんと紹介したんだろうね?君直々に来るなんて、まるでボクが単身でメタ……ピースウォーカーを動かす重要人物みたいだ。」
途中だった研究を進めながら言葉を続ける。
実際に話すと緊張と興奮で言葉がとめどなく溢れる。
遮られなければ最後まで話してしまおう。
「なんと言えばいいかな、ずっと君のファンだったんだ。初めて見たその時からずっと。その称号も、現在の基地の場所も知ってる。ボクは君のことなら大体は知っているよ。さすがにその思いや内面は何も知らないけれどね。君が何を成したのかは知っている。何を助け、何を殺したのか……。さて、この部屋は防音だ。兵士の巡回ルートに入っているのは部屋の手前まで、中には入ってこない、祖国の英雄はボクを助けるのかな?それとも、ダレカと同じように殺すかい?そしたら、その後に知ることは多いかもしれないよ」
「……お前」
「そのどちらでもないのなら……少し休憩していくかい?即席麺とカロリーメイトくらいしか用意していないけど」
少しふざけた、しかし本人には絶対にその訳がわからないセレクトだ。
目的を見失わないように思い出せるものをと考えてわざわざ取り寄せていた品をここで使うとは思わなかった。
それに頷いた彼、ビッグボスことスネークはボクの斜め後ろにあった椅子に腰掛ける。
それを見てお湯を沸かしておいた給湯器から即席麺にお湯を入れる。
「これで会話の時間を引き延ばすつもりか、用意がいいな。」
「だろう?なんたって君のファンだからね。気に入った相手との会話はできるだけ長くしたいものさ。」
席に着いてくれたのなら、あとはボクが余程の地雷を踏まなければマザーベースまで行けるだろう。途中だった研究は意味がないのでやめてスネークの方を向く。
「そんなものか。それで?何処まで知ってる?」
「言っただろう?君の歩みならほとんどを知ってる。勿論君と共にいたわけじゃないし、国から情報を盗んだわけでもない。ただ知っている、それだけだよ。……そうだな、前世の記憶とか言っておこうか。」
「前世……仏教か何かか?俺はそんなことを聞きたいんじゃない」
「知ってるよ。でも、そうとしか言えない。そうじゃなければボクはここにいない。ボクの中にある知らない記憶がボクを君の元に導いたんだよ。自白剤を打ったって構わない、これが事実だよ。」
彼はボクの瞳を覗き込む。狂人か、はたまた本当にそんな記憶が存在するのかを考えながらボクの瞳が泳いではいないかと覗いているんだろう。即席麺のタイマーが鳴る。彼の分を彼に渡して自分は自分で同じものの蓋を開ける。
「霊的な経験ならあるだろう?ほら、コブラ部隊の。」
「なっ……驚いた、本当になんでも知ってるんだな。そこまで知っているなら、今はお前を信じる。で、お前が博士の言ってた助手の女で間違いはないな?」
「その通りだとも!ファンの一人として、握手を求めても?」
「順序がおかしい気がしなくもないが、いいだろう」
彼が差し出してきた右手を両手で包み込むようにして握手する。
戦ってきた男の、ゴツゴツとして大きな手だった。
前世からの憧れ、そして伝説の英雄であり、これから世界を大きな因果に巻き込む男と握手をしている。
喜びと達成感がないまぜになった感覚に目を細める。
長くそれに浸りすぎたのだろう、彼は僕の手を振り払った。
「外に出てヘリでマザーベースまで同行してもらう。それでいいな?」
今世はずっと研究をしていた弊害だろうか、またも好奇心が湧いた。
「あぁ、それでいい。でも興味が湧いてきた、試していいかい?ボクの作ったものが、君にどれほど通用するのか」
「……面倒だが、そうしなければ気が済まないならそうすればいい。」
「なら遠慮なく!」
首の付け根に装置を装着する。それは極細の針で脳から発される信号の一部を読み取り、もう一つの制作物である機械性の液体金属へと流し込む装置だ。指示を受け取った液体金属がボクの右腕の前腕を包み大きな刃へと変える。
それを勢いよく彼へと振りかぶるが、腕を掴まれ地面へと押し倒される。
「なんだこれは?」
「流体金属、頸につけた装置が極細の針から読み取った脳からの命令を受信してボクの意のままに液状化、そして硬化する。便利だろ?」
液体金属を流体化させ、それを彼に向けてもう一度硬化させようとするが彼はそれを避けると立ち上がった僕に再び肉薄しようとする。が、ボクは流体金属で一時的に壁を作り後退する。流体金属を全てボクの元に集めて両腕を刃に変えもう一度接近するが、両方であろうと彼は余裕で対応してボクを抑えつけた。
「これで満足か?」
「あぁ、大満足だよ。一科学者の身で君のCQCを直接受けられたなんて、この痛みを一生収まらないように保存したいくらいさ」
「…………そうか。」
彼の頬が引き攣ったのは見なかったことにして裏口から外に出る。
ついでに人事異動と嘘をついて全ての兵士を適当な別の基地へと移す。
「それで、ボクの発明品はどうだった?容易く攻略されたように感じたけど」
「悪くなかった。お前が敵だったらかなり厄介だっただろう。……そういえば聞き忘れたな、名前は?」
「え?エメリッヒは伝えてないの?」
彼は首を縦に振る。あの男に文句を言いたい気分になったが、とりあえず名乗ることにする。
「アオイだよ。一応アメリカ人だからちゃんとした名前はあるけど、コードネームはアオイだし、そっちをいつも使っているからそう呼んで。専門は生体工学と
「あぁ、こちらこそよろしく」
そんな会話をしていると、ヘリがこちらに降りてくる。
それと同時に一つのボタンを取り出す。
「それは?」
こちらにそう聞く彼に、答えるのはヘリに乗った後だと搭乗を急かす。
そうして飛び立ったヘリの中、後世に残すべきでないものは工房に置き去りに、必要なものは全て持ち出した。
「それで、そのボタンはなんなんだ?」
「ボクが君へ尽くす忠義の証明だよ。」
ボタンを押し込む。目下にあったボクの工房だったものが派手に弾け飛ぶ。
「ヒュー、やってみたかったんだよねぇ、こういうの」
すると、彼の通信機から焦った声が聞こえてくる。
エメリッヒとカズヒラ・ミラーの二人だ。
『どうなってるんだ!?今、彼女の工房が爆発したって報告が聞こえて……!』
『ボス!何があった!研究者は回収できたのか!?』
さて、彼はボクのエメリッヒが名前を伝えなかったことへの不満を感じ取ったのか、こちらにアイコンタクトをする。
ボクが頷くと彼は通信機へ
「……エメリッヒ残念だが彼女は……」
大きく息を呑む音がした。
そして、エメリッヒが絶望し切ってシリアスな空気になるよりも前に彼は言葉を続けた。
「俺たちのヘリでまるで実家のように寛いでる。」
こうしてボクはマザーベースへとやって来た。
ここからどうするべきか、どうするのか既にいくつかは考えている。
これから先の未来、少しでも明るい結末になるようにと祈りつつ、ひとまずの眠りについた。
読了ありがとうございました。
なんか書きたかったものをとてつもないほどに詰め込んだ気がします。
読んでいただき本当にありがとうございます。