メタルギアの世界に転生したので少しでも救える人を救いたい。 作:名無しのダンボール兵
「やぁやぁ、ドスケ……ンンッ、際どいスナイパーさん?」
某日未明、アオイはクワイエットが軟禁されている牢へとたった一人で姿を現した。
クワイエットは彼女を強く睨みつけた。
それもそのはず、アオイはクワイエットに服を着せようと試みたスタッフの一人であり、クワイエットから見て最もしぶとく迫ってきた人物であったからだ。
「そう睨まないでおくれよ、ボクは君のことを考えて通気性をできる限り確保したものを持ってきたんだよ。まぁ、拒まれたのだからダメだったんだろうけどさ」
「………………」
「あぁ、そういえばそうだったね。話せないんだよね?それのことでまだ迷っているから」
アオイは喉を指先で指すようなジェスチャーをした。
「……っ!」
「誰にも言わないさ、安心して。ボクは科学者のアオイだ、よろしく。……これでも生体工学とか、その他にも色々生物に関するものを調べてたりしてて、君がまだ悩んでるならそれを預かっておけるんだけど……どうかな?」
クワイエットの表情が驚愕と葛藤に歪む。
アオイは不気味なほどの笑顔で話を続ける。
「君もウワサくらいは聞いたかもしれないけど、ボクの腕は流体金属で、しかも土の粒より小さい大量の機械の集まりだ。だから、これを使えば君の喉のソレを取り出せるし、しっかり保存するための容器も持ってきた。……君が望むなら、このボクが君に
「…………?」
クワイエットはアオイの方を指さして少し首を傾げる。
アオイにとっての対価は何か、というようなニュアンスだった。
「そのかわり、君の気が向いた時に君の動きに関するデータを取りたいんだ。どうにも普段通りの感覚だとこの手足のスペックを活かしきれなくてね。それで、もし取引に乗ってくれるなら、一度その檻から出てくれる?あ、あと15時間くらいは待てるからゆっくり考えてね」
クワイエットは透明になって姿を消したかと思うと、次の瞬間アオイのすぐ目の前に姿を現した。
アオイはよろしい、と言って頷くとクワイエットへと歩み寄る。
「ちょっと絵面がアレだけど、許してね?」
そう言ってクワイエットの顎に手を添えて口を開かせると、そこに自らの指を躊躇なく押し込んだ。
当然、クワイエットはそれを押し除けようとするが
「指を通じて喉までボクの金属を送ってるんだ。結構集中する作業だからさ、ごめんだけど我慢して」
──────────
そうしてクワイエットが自らの口に真剣な表情で指を突っ込まれる絵面に耐え続けること一時間弱、喉の奥で何かが変わったような感覚があった。
「……はい、お終い」
アオイはそう言ってクワイエットの口から指を引き抜いた。
「これで喋っても大丈夫なはずだよ。有害なのは第三英語株だけだよね?」
「………………そうよ」
「話すのにだいぶ迷ったね。久しぶりすぎて話し方を忘れちゃったなら、このボクが手取り足取り教えてあげようか?」
「いらない、演劇みたいな……鼻につく口調になりそうだから」
「……うわあ、割と毒舌?まぁとにかく、これで話せるんだから、言いたいことは言えるうちに言いなよ」
「……そうする」
そう言って牢の内側へと戻ったクワイエットを見てから軽く手を振ってアオイは立ち去った。
アオイはクルクルとペンを回すかのように一本の葉巻を手で弄びながら、珍しく凪いでいる海を見つめた。
「……はぁ、〝言いたいことは言えるうちに〟なんて言えた口じゃないか。──ここでのボクのやり残しといえば、あとはちょっとした私怨くらいかな」
そう言ってアオイは、その白衣の内側に隠したリボルバーを握り締めた。