メタルギアの世界に転生したので少しでも救える人を救いたい。 作:名無しのダンボール兵
真夜中、コンコンとヒューイを監禁している部屋の扉が誰かにノックされる。
「……僕はこのドアを開けられない。誰かは知らないが諦めてくれ」
ヒューイが監禁されている区画のドアはスネークと、他数人しか開けられない。
そのはずだった。
何事もないかのようにドアが開くと、その先にいたのはアオイだった。
彼女にこのドアを開く権限はなかったはずだ。
「こんばんはエメリッヒ博士」
「や、やぁ、どうやって扉を?」
「ちょっとした〝抜け道〟だよ。機械の手足も悪くない……、少し外で話さないかい?すぐそこの海を見ながらってくらいなら許されるだろ?」
そう言われて、ヒューイは誘われるままに外へと向かい、海を眺めた。
アオイはヒューイより少し後ろの位置からヒューイへと話しかける。
「あれからの9年間はどうだった?」
「……ストランジラブにはフラれたよ。でも、他のAI研究者だった女性と知り合ってね、意気投合して付き合ってた」
「……そう。今も上手く行ってるのかい?」
「あぁ、まぁまぁうまくいってるよ」
「そう」
少しの間、無言の時間が流れた。
無言のプレッシャーに耐えられなかったヒューイが口を開こうとした次の瞬間、アオイが続けて口を開く。
「君以外の人達は、皆何かを失ったんだ。ボクは四肢を、ボスは時間と、仲間を……、ミラーは見ての通りだ。ねぇ、キミは──」
「僕だって失った、仲間も何もかも失ったじゃないか!それに、あの襲撃は元を辿れば君のためにスネークがマザーベースを離れたのが悪いんだ!」
「そうだね。その通りだ。ところで話は変わるんだけどさ、トロッコ問題って、知ってるかい?」
「……あぁ」
「ボクはね、迷わずレバーを倒す人間なんだ。ついでに言えば、一度手遅れになったことでも、やるべきことはやり通す人間なんだよ」
ヒューイの頭に冷たい鉄が押し当てられる。
息を呑むヒューイ、アオイがトリガーに指をかける。
「や、やめろ!僕を殺したって何もないぞ!僕はマザーベースに貢献するために研究を……」
「いい加減黙れよ。今後の全ての為に、お前をここで殺す。殺したってなんの影響もないからね」
「──やめろ、アオイ」
しかし、低い声がその場を制する。
「ボス?なんでここに?」
「お前ならそうすると思ってたからだ。銃を下せ」
「……コイツは改心も反省もしてない、また大勢を殺すよ」
「お前なら止められる。そうだろ?」
「……──っ、わかった。諦めるよ」
そう言ってアオイが放り投げたリボルバーはそのまま海へと消えた。
アオイはヒューイとスネークに背を向け、暗い真夜中のマザーベースの奥へと消えていった。