メタルギアの世界に転生したので少しでも救える人を救いたい。 作:名無しのダンボール兵
あれから数日、ミラーの尋問を前に頑なに沈黙を貫いていたクワイエットは唐突に
「博士を呼んで」
と、たった一言話した。
『博士』という該当者の多い名詞にミラーが固まっていると、クワイエットは続けて
「鉄の博士」
ともう一言。
鉄にかかわる研究者はマザーベースにも多く存在するが、“鉄の”博士と代名詞的に使うことで表すことができるのはこのマザーベースにはたった一人、アオイのみだった。
ミラーが部下に指示を飛ばして10分と経たないうちに尋問室にやけに大きな足音(それは、彼女の鉄の足と鉄製の床がぶつかり合う衝突音である)を立てながらアオイがやってきた。
「アオイ、この女とどういった関係だ?」
「なぜそんなことを聞くんだい?」
「マザーベースに来てから、何度尋問しても口を割らなかった
ミラーは感情的に声を荒げた。
その声には、昔からの仲間を疑いたくないという希望と、拷問が行われていたとはいえ、一度サイファーへと渡った経歴のあるアオイへの不信が滲んでいた。
「彼女の喉を治したんだよ」
「……は?」
「彼女の喉は喋れない状態にあった。だから、ボクが治療をした。今はもっぱら
「────小1時間は喉奥に指を突っ込まれてたと思うんだけど」
クワイエットが咎めるような視線とともに言葉を発すると、アオイは
「苦労なくして得られるものはないんだよ。はははっ」
と言って目を逸らした。
ミラーはそんな様子を見て、アオイへ詰め寄る。
「こいつとはマザーベース崩壊前からの付き合いか?何のためにこいつを治療した?」
「……まず、彼女との関係が少し前からなのは認めるよ。ボクがサイファーに行ったとき、ボクを拷問して右腕をへし折ったのが彼女だ。治療したのは、彼女とボスの意思疎通をスムーズにするためだよ」
クワイエットこそ、自らの腕を失わせた下手人である。
その事実を、アオイはさも気にすることでもないような仕草で言い放った。
「…お前は、憎くはないのか?お前の腕をへし折り、奪い取ったこの女が。この女は、サイファーなんだぞ!」
「憎んではいないよ。ボクたちがボスの下で自ら銃を握るのとは違う、彼女はそれが仕事だったんだ。逃げられない、タチの悪い仕事だったんだよ。だから、別に気にしていないさ」
アオイはにこやかな笑みを崩さず、ミラーへそう語った。
ミラーは大きくため息を吐くと、もう一度アオイを見つめる。
そこには、熱に浮かされたような憎悪の色はなく、ただ冷静な眼差しがアオイを見据えている。
「それは、“必要なこと”なんだな?」
「あぁ、少なくともボクはそう思っているよ」
「そうか、なら俺から言うべきことはない。この女のことはお前に任せる。いいな?」
「はいはい、じゃあお手くらいはできるようにしとく?」
「…冗談じゃない」
にやけながらクワイエットの瞳を覗き込んだアオイに、クワイエットはため息とともにそう返した。
保護された少年兵たちがマザーベースを訪れたのは、その日のことだった。