メタルギアの世界に転生したので少しでも救える人を救いたい。   作:名無しのダンボール兵

9 / 10
break the quiet

あれから数日、ミラーの尋問を前に頑なに沈黙を貫いていたクワイエットは唐突に

 

「博士を呼んで」

 

と、たった一言話した。

『博士』という該当者の多い名詞にミラーが固まっていると、クワイエットは続けて

 

「鉄の博士」

 

ともう一言。

鉄にかかわる研究者はマザーベースにも多く存在するが、“鉄の”博士と代名詞的に使うことで表すことができるのはこのマザーベースにはたった一人、アオイのみだった。

ミラーが部下に指示を飛ばして10分と経たないうちに尋問室にやけに大きな足音(それは、彼女の鉄の足と鉄製の床がぶつかり合う衝突音である)を立てながらアオイがやってきた。

 

「アオイ、この女とどういった関係だ?」

「なぜそんなことを聞くんだい?」

「マザーベースに来てから、何度尋問しても口を割らなかった沈黙の女(クワイエット)が、ようやく口を開いたかと思えばお前を呼べと言った。……正直に話せ、この女とお前にどんな関係がある!?」

 

ミラーは感情的に声を荒げた。

その声には、昔からの仲間を疑いたくないという希望と、拷問が行われていたとはいえ、一度サイファーへと渡った経歴のあるアオイへの不信が滲んでいた。

 

「彼女の喉を治したんだよ」

「……は?」

「彼女の喉は喋れない状態にあった。だから、ボクが治療をした。今はもっぱら機械(メカニック)だけど、一応生体工学とかも修めているからね。楽な仕事だったよ」

「────小1時間は喉奥に指を突っ込まれてたと思うんだけど」

 

クワイエットが咎めるような視線とともに言葉を発すると、アオイは

 

「苦労なくして得られるものはないんだよ。はははっ」

 

と言って目を逸らした。

ミラーはそんな様子を見て、アオイへ詰め寄る。

 

「こいつとはマザーベース崩壊前からの付き合いか?何のためにこいつを治療した?」

「……まず、彼女との関係が少し前からなのは認めるよ。ボクがサイファーに行ったとき、ボクを拷問して右腕をへし折ったのが彼女だ。治療したのは、彼女とボスの意思疎通をスムーズにするためだよ」

 

クワイエットこそ、自らの腕を失わせた下手人である。

その事実を、アオイはさも気にすることでもないような仕草で言い放った。

 

「…お前は、憎くはないのか?お前の腕をへし折り、奪い取ったこの女が。この女は、サイファーなんだぞ!」

「憎んではいないよ。ボクたちがボスの下で自ら銃を握るのとは違う、彼女はそれが仕事だったんだ。逃げられない、タチの悪い仕事だったんだよ。だから、別に気にしていないさ」

 

アオイはにこやかな笑みを崩さず、ミラーへそう語った。

ミラーは大きくため息を吐くと、もう一度アオイを見つめる。

そこには、熱に浮かされたような憎悪の色はなく、ただ冷静な眼差しがアオイを見据えている。

 

「それは、“必要なこと”なんだな?」

「あぁ、少なくともボクはそう思っているよ」

「そうか、なら俺から言うべきことはない。この女のことはお前に任せる。いいな?」

「はいはい、じゃあお手くらいはできるようにしとく?」

「…冗談じゃない」

 

にやけながらクワイエットの瞳を覗き込んだアオイに、クワイエットはため息とともにそう返した。

保護された少年兵たちがマザーベースを訪れたのは、その日のことだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。