薄幸の堕天使   作:怒雲

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魔族らは想う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ……困りましたなァ。」

 

 山奥の古城の大広間。そこには、魔族の幹部と呼べる者達が集まっていた。

 

 喰鼠と牛若を除く魔星十二支の面々。

 

 後に十二支達のまとめ役である万龍の跡継ぎ予定の者、水辰(スイタツ)。

 

 

 更に、攻勢部隊、『牙』の総隊長である獅進(シシン)。

 防衛戦に特化した部隊、『壁』の総隊長である蜃明(シンメイ)。

 空を移動出来る者達を集めた部隊、『翼』の総隊長である凰華(オウカ)

 そして、人里に入り諜報活動や暗殺等をこなす部隊、『朧』の総隊長、忍讙(ニンカン)らも来ていた。

 

「喰鼠が死んだってのは確かなのかい?」

 

 

 一頭の羊が声を発して、擬猿は神妙に頷いた。

 

「ウキャキャ、貘予さんが嘘でもついてない限りは確かですなァ。どうやら魔王と戦い負けたようですぞ。」

 

 

 擬猿の言葉に、魔族達は沈黙する。

 

 

「ぬぅ……!なんという事じゃ、喰鼠……!」

 

 薄紅の羽衣を身に纏う、長い黒髪の美しき女性、水辰は悔しげに下唇を噛んだ。

 

 

「……ま、腐っても鯛とでも言いますかなァ……流石は魔王の力といったところでしょうかな。」

 

 自嘲の笑みを浮かべながら、擬猿は続ける。

 

 

 

「向かわせた『牙』の方々も、鎌鼬さんが戦死。霊孤さんもまァ、帰って来ないところを見るに戦死とみて良さそうですな。」

 

 

そこまで言って、タメ息をひとつ……擬猿は、視線を虚空に彷徨わせた。

 

 

「……なんにせよ、我らが同胞の死。黙祷でもしましょうかなァ」

 

 

擬猿がそう言うと、周りの魔族らはその通りだと頷く。

 

 

 

そして、しばし目を閉じて……今は亡きその姿を想った。

 

 

 

 

 

 

「……なら、これからどうするんです?なんなら、この天鵬が向かいますが。」

 

 

 一歩前にでる美麗なる青年は天鵬。最初に、アクルを襲った魔星十二支だ。

 

 

彼としては、今この状況に責任を感じている。自分があの時、魔王を逃さなければ……。

 

更に、討たれた仲間を想い、その眼は義憤に満ち溢れていた。

 

 

 

 

そんな天鵬に対して擬猿は首を横に振る。

 

 

「魔王が人里を歩く以上は、人間からの横槍が入るでしょうからな。鎌鼬さんも、それで戦死しましたわけですし……あまりリスクの高い行動は避けたいところ。」

 

「………しかし」

 

「うきゃきゃ、天鵬殿。とりあえず頭を冷やしなされ。今はまだ、貴方の動く時ではありませんぞ?」

 

「………分かり、ました」

 

 

悔しげにしつつも、すごすごと引き下がった天鵬に対し、うんうんと擬猿は頷く。

 

立て続けに十二支が討たれるなんて事はあってはならないし、なにより天鵬はこう……退かぬ媚びぬ省みぬなタイプなので、心配なのである。

 

 

 

「だが、魔王を放置はしたくありませんな」

 

 そんな擬猿の発言に、虎顔の魔族、従虎が笑う。

 

「……つまり、死んでも構わない奴を送りたいって訳か。と、なると……。」

 

 

「ウキャキャ。気は進みませぬが……『凶(マガツ)』を動かすとしましょう。」

 

「凶……。」

 

 十二支の一人、白髪と死装束が印象的な少女、蛇影(ジャエイ)が復唱する。

 

 

 『凶(マガツ)』とは、魔族の中でも性格やらなんやらに問題のあるもの達……まぁぶっちゃけ犯罪者達である。

 

 処罰したいところではあるが、やたら強く、殺すには惜しい者達だ。ある魔族らの力により、普段は封印してあるのだ。

 

 

 

 そして、とりあえず鉄砲玉みたいに使う訳である。

 

 もっとも、そんな簡単には使えないし、言う事を聞かないし、味方に迷惑かけるしで、正直さっさと処罰した方が良いのだが……人間達との戦争の真っ只中である昨今。強い戦力は少しでも欲しいものである。

 

 

 凶は、十二支にさえ肉薄する者もいる連中である。やはり、殺すには惜しいのだ。

 

 だが、生かしておくには厄介である。

 

 殺すには勿体なく、生かしておくには厄介という鶏肋の様な連中なのだ。

 

「……すんなり動かせるもんなのか……?」

 

 擬猿に尋ねたのは十二支の一人、走馬(ソウマ)だ。上半身は人、下半身は馬の青年である。

 

 

 黒髪をリーゼントにしてある特徴的な髪型と……白い、まるで日本の暴走族の様な特攻服を羽織っている姿が印象的である。

 

 

「ウキャキャ。まっ、上手く交渉出来そうな奴を起こしますよ。

 報酬次第では動いてくれるでしょうしなァ。」

 

 

 

 

 

 死んだら死んだで構わないというスタンスは、冷たく見えるかもしれない。だが、当然と言えば当然である。

 

 

 魔族は、基本的に結束力が高いし、仲間意識は強い。

 

 だが、凶として封じられた連中は、それだけの事をしているのだ。

 

 

 ルールを破る者を、ルールで守ってやる必要など無いのである。

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