「…………。」
アクルは微妙な気分だった。なんというか、魔族には十二支の他にもまだまだ強い奴が多いらしい。
牛若によると、以前戦った魔族達は、『牙』と呼ばれる戦闘部隊なんだそうだ。
基本的に高い戦闘力と、何より高い機動力を持つらしい。
戦地に赴き、出来るだけ帰還する為に、身軽さが重視されるそうである。
その他に、『壁』という部隊はディフェンスに定評があるそうだ。
とにかく戦闘力を重視ししてるらしい。重要な場所を守る為に、逃げる事はあまり考えて無いそうだ。
まぁ、アクルとしては別に魔族の重要な拠点に攻め込む予定はまったく、これっぽっちも。ヤムチャがベジータに勝つ確率程も無いので出会う事は無いだろう。
気になるのは先程説明した『牙』と、空を飛べる魔族で構成された遊撃部隊『翼』と、諜報から暗殺等をこなす部隊、『朧』の存在だ。
この辺は戦う事になるだろう。『朧』はあまり戦闘力は無いらしいが、暗殺者みたいな連中なら怖く無いはずが無い。
『翼』なんかは空飛んで来るのだ。気が滅入る。
更に話しを聞くと、この前に戦った『牙』の連中のうち、鎌鼬は隊長の一人だったらしい。
ちなみに、最初にアクルを襲った闘鶏とかいうバイオレンス・キチンヘッドも隊長だそうだ。
なんにせよ、鎌鼬や闘鶏くらいならアクルでも勝てるぜと魔王が励ます。まぁ、牛若によると隊長が絶対強い訳ではないらしいが。
適切な判断をくだせるかが重要なのだ。鎌鼬らにしたって、鎌鼬本人よりも一緒にいた伸熊や霊狐の方が強いだろう。
ただ、例えば霊狐なんかが隊長になったりしたら、撤退なんかまったく考えずに攻めこんでしまうだろう。無謀な戦い大好き奴だから、劣勢なんて知ったこっちゃない。部隊の全滅は免れないだろう。
故に、適切に判断出来る者が隊長になれるのである。
……闘鶏が魔王を深追いし一人で単独行動の独断専行した挙げ句、人間と勝手に戦い討ち死にしたのは気のせいである。適切な判断出来てない気がするが、何かの間違いだろう。
しかし……鎌鼬に空鹿、伸熊、霊狐と隊長合わせて四人しかいないなとアクルは思ったが、どうやらいきなりの事だった為にメンバーが集まらなかったらしい。
そういえば、闘鶏(バイオレンス・チキンヘッド)の部隊は結構多かったとアクルは思う。二十近くはいたから、一つの部隊につきあれくらいなのだろうか?
と、思ったが部隊によって結構ばらつきがあるそうだ。戦死した分が補充出来なかったり、隊長が部隊増やすのをサボったりで。
まぁ、なんにせよ厄介な話しである。アクルとしては気が重いが、それでもわりと落ち着いていられた。
一人じゃないというのは、本当に心強いものだとアクルは思う。
一人ならば、今はもっと絶望していた事だろう。
「さて、と……」
やがて道が舗装された街道に変わる。相変わらず、両端は木々で覆われた山道だ。
剥き出しの地面の街道はそこそこ広く、馬車くらいなら二つ通っても余裕があるくらい。
「……非羊の奴は、ここいらと言っておったが。」
牛若は辺りをキョロキョロして、坂道の街道を上に行く。
その後を追いながら、アクルは牛若の顔を見上げ尋ねる。
「あのっ、何かあるんですか?」
「うむ。旅をする以上は必要なものを揃えたいからな。
儂は良いのじゃが、アクル殿は今何も持っておらぬじゃろ?」
問われてアクルは確かにそうだと思う。荷物は置いてきてしまった。
今の持ち物は、何時もの黒い外套と、身に着けている汚れたワイシャツと七分丈の黒いズボン。それに、髪に着けてる六花の髪飾りくらいだ。
この可愛らしい髪飾りは、以前十二区で……そこの聖護士であるピスケラ・アルレーシャと会う前の街道で、野犬退治をした際に出会ったリザドというオネェ口調の青年から貰った物である。
ふと、今なにをしているのだろうとアクルは思った。
まぁ、もう会う事もないだろうし、会う訳にもいかないかもしれないのだけれど。
「まぁ、それでじゃ。」
牛若は、アクルに歩幅を合わせながら言葉を続ける。
「非羊の奴が、腕利きの商人を紹介すると言っておってな。」
「商人……ですか?」
「うむ。優秀な術具等を売っているそうでな。
必要そうなものを揃えておきたい。
……のじゃが、結構性格に問題がある者のようでな。」
はぁ、とアクルは呟く。まぁ、この五区の人間だ。まともな訳が無いのだろう。
会いたくは無いが、確かに着替えとかくらいは欲しいところである。
「一応そこに、非羊の使いもおるらしいしな。今頃は魔族の幹部らが集まっておるじゃろうし、聞きたい事もある。」
成る程と呟いたあたりで、山道の街道は分かれ道になっていた。
大体九十度くらい直角に道が別れ……真ん中に、デデーン! と大きな白い屋根のお店がかまえてあった。
百合の花商店という名前らしい。