薄幸の堕天使   作:怒雲

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 それからもいろいろと便利機能を説明された。何が入ってるのか解らなくなったら、袋に話し掛ければ応答してくれるらしい。勿論フルールドの音声で。

 

「えと……今は何が入ってますかー?」

 

 

 試しにやってみると。

 

『はい。今は衣類が───』

 

 と、妙に鮮明で大人びた声が返って来た。こういう声も出せるらしい。

 

 フルールド自身は、まるで酔っぱらいの様な感じだが。

 

 まぁ、今の状態は薬ヤってラリっていないので、これでもマシな状況なのだが。

 

 

 ともかく、アクルはこのスーパー便利アイテムに感動している。

 

「ふひひー、お気に召された様で何よりですよぉ。

 お次はぁ、このナイフなんてどぉでぇすかぁ?」

 

「ひっ……!」

 

 一見普通のナイフである。既に乾いた血がべっとりと付着しているが。

 

「なにその使用済みナイフ……なんに使ったんよ?」

 

 魔王が尋ねると、フルールドはよくぞ聞いてくれましたと笑う。

 

 しまったと魔王は思う。聞かなきゃ良かった。

 

「私がぁ。私にぃ。使ったんですよぉ。」

 

「なにそれ……まるで意味が解らんぞ!」

 

 

 つまりですねぇ、とフルールドは頭をぐるんぐるんさせる。

 

 

「このナイフをぉ。私のアソコにぃ。ずっぽずぽしたんですよぉ。」

 

 

「え……と、あそこって…」

「なんでそんな奇行に走ったし……。」

 

 アクルの質問を遮り、魔王は別の疑問を投げ掛ける。

 

 

「つまりぃ、私流ナイフオ……ぎゃふん!」

「ちょっと黙ってね?」

 

 

 フルールドの言葉の途中で、横から羊が突進頭突きをくらわせて、フルールドは壁に頭をぶつけた。

 

 

「まったく、やめてよね本当にさ。」

 

 呆れた口調の羊に対し、まったくだと魔王は同意する。

 

 

「この物語りは子供でも楽しめる健全な王道ファンタジーだってのに、こいつやリュエンのせいで健全さが薄れるというもんだぜ…………」

 

 

 魔王は深刻そうに言ったが、アクルにそんなメタい話しが解るはずがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 それからは役立ちそうな物をいくつと、衣類等や塩等の調味料を貰って、アクル達は去って行った。

 

 それにあわせて、話したい事は話したと羊も消える。

 

 

 軽く静まり返った店内に、不意にフルールド以外の足音が響いた。

 

 

「……誰か来てたのか?」

 

 

 カウンターの奥から、寝惚けた顔のスネルフが姿を現せる。

 

「ええ、まぁ。……ウヒヒ、噂の魔王アクルちゃんですよー。可愛かったですよぉ。」

 

「……起こせよ。」

 

 

 欠伸混じりに言ってから、スネルフは軽く首を鳴らす。

 

 

「あひゃひゃ。今は会う意味もあんましないですしぃー。スネルフ君がきもちよさそーに寝てたからぁ。起こしにくかったんですよぉ。

 お疲れみたいでしたしぃ?」

 

「……主にテメェのせいでな。」

 

 

 若干うんざり気味にスネルフは言った。昨晩寝てたら襲われたのだ。初めての事では無いが、あれはウザい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、行くかのぅ。」

 

 街道からそれて、牛若はまたもや山道を歩き出す。まだネズミ被害にあった街が近い為に、人目には着きたくないのだ。

 

 

 そこらへんはアクルも理解しているので、大人しく牛若の背を追う。アクルとしても、木々の生い茂る道を歩くのは慣れたのだ。

 

 ふと振り返って見ると、フルールドの店は無くなっていた。

 驚くアクルに対し、魔王曰く、あの店自体が物凄い術具であり、多分ワープ機能が備わってるんだろうとの事である。

 

 

 

 

 

「……アクル殿、儂の傍に。」

 

 

 数十分くらい歩いた辺りで、牛若は後ろにいるアクルの手を掴み、軽く引き寄せた。

 

 

 ふと回りを見渡すと、野犬の群れである。

 

 

「よしアクルたん。ここは前に見せた必殺技、『血輪車』の出番だぜ! 久々に見せてやりなぁ!」

 

 

 テンション上がる魔王の声を聞きながら、アクルは大剣を出そうとするも。

 

「アクル殿、軽く跳んでくれぬか?」

 

「え?あ、はい。」

 

 

 牛若にそう言われて、ぴょんとアクルはその場で軽くジャンプした。

 

 

 そして次の瞬間………回りに轟音が鳴り響く。

 

 

 牛若が右手を握り締め、地面をぶん殴ったらしい。

 

 

 牛若周囲の地面が陥没し、周囲の地面に亀裂が走り、辺が揺れた。

 

 

「えっ…………」

 

 

 着地し、よろけるアクルを優しく肩を抱くようにキャッチする牛若。周囲の野犬達は、揺れた地面に驚愕し、時が止まったかのように動かなかったが……牛若が歩き出すと弾かれた様に逃げて行ってしまった。

 

「うむ。行こうか。」

 

 

 そう言って歩き出す牛若の背を、アクルはしばしキョトンとした後あわてて追う。

 

 

 背後を振り返ると、陥没し、周囲に亀裂が走った地面。

 

 

「ちなみに、アイツは人化の法使ってる状態だから、力がいくらか落ちてるぜぃ。

 つまり、制限されててこのパワーって訳だようん。さっすが十二支やでウッシーの奴……。もうアイツ一人でいいんじゃあないかな。」

 

 

 ゴクリとアクルは喉を鳴らす。

 魔星十二支って凄い。改めてそう思った。

 

 

 

 

 牛若さんが刺客として現れなくて本当に良かったと、アクルは心の底から思うのであった……。

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