薄幸の堕天使   作:怒雲

118 / 164
七区にて

 

 

 

 

「結構、長くなったなっ!ようやく帰って来たぞっ!」

 

 人形の様に愛らしい容姿をした少女、エリダヌスは歓喜の声をあげた。

 

 透き通る様な白い肌。紫の瞳とウェーブヘアーの長い金髪。そして、抱き締めると壊れてしまいそうな小柄で華奢な体。

 

 

 儚げなその顔立ちから見て、彼女は疑う余地が無い程の美少女と言えるだろう。が、その口調からはあまり美しさを感じ無い。

 

 

 コロコロ変わるその表情はコミカルで、親しみ易さすらある。

 

 

「おー。ま、実家って訳じゃあねぇけどな。」

 

 その隣の所謂イケメン的な感じだが、チャラそうな感じの青年、ユークリッドが笑う。黒っぽいヘアバンドと、ツンツンした茶髪が特徴的である。

 

 

 二人は街中にいた。周囲の建物は、レンガ造りだったり木造だったりと、統一感が無いが、全てが赤を基調としており、視覚的にはかなり統一感がある。

 

 

 ここは七区のとある街。規模としてはそれほどでも無いが、特徴的な街である。

 

 

 何故ならば、この街はほとんど学生か先生。もしくは、学園の関係者しかいないからだ。

 

 

 

 

 

 十二聖護士養成学科。もしくは学園。

 

 

 

 

 

 

 エリダヌスとユークリッドは、真っ直ぐに真ん中の赤い宮殿みたいな建物を目指し歩く。

 

 

 その途中にで声をかけられ、二人の足が止まった。

 

「よーっす、お疲れさん。」

 

「おーっ。サザンクロス先輩。それにアノース先輩。何だか久しぶりですだなっ!元気そうで何よりだですぞっ!」

 

 

 そう言って、一組の男女に向けてエリダヌスは手を振った。

 

 

 紫のクセのある髪を、大きな赤いリボンでくくり、ポニーテールにしてる少女、サザンクロスと金髪碧眼の青年、アノース・ハドリアース。二人はこの学園の四年生である。

 

 

 四年生……いわば、十二聖護士準備期間といった感じだ。二人とも、今いる聖護士に何かがあれば、彼らが次の十二聖護士となるだろう。

 

 

「……遠征帰りかい?」

 

「うっす、そんな感じッスね。」

 

 

 アノースに問われ、笑みを浮かべたまま。ユークリッドは答える。

 

「奥さんは元気ッスか?」

 

「ああ、プリキュオンは何時も元気だね。あまり帰ってやれなくて申し訳無いよ。」

 

 

 そう言って、アノースは肩をすくめる。

 

 

 

「十二区だっけ?なんか面白い事とかあったか?」

 

 なんとなしにサザンクロスが聞いて、ユークリッドとエリダヌスは顔を合わせて……ある事を思い出して、同時に噴き出した。

 

 

 

「崖の下で、毒キノコ食ってラリってた奴を見掛けましたぞっ!」

 

 思い出して爆笑しているユークリッドとエリダヌスを交互に見ながら、なんだそりゃとサザンクロスは詳しく聞く。

 

 

 

 聞いて見ると、謎の小柄な黒髪みつあみの……かなり小柄なエリダヌスより更に小柄な可愛い感じの少女が、「どすこーい! あへへへへ~、ロマンチック~! 諸葛亮の北伐成功~!」 とか言いながら、クネクネしていたとか。成程、それはインパクト絶大だ。自分もその場にいたら爆笑だろうなとサザンクロスは苦笑する。誰だよショカツリョウって。

 

「面白いね。その子の名前は分かるかい?」

 

 アノースが尋ねてみると、二人とも忘れてしまったらしい。

 

 

 

 ………まさかねとアノースは思う。妻であるプリキュオンという少女からの手紙で、『アクル』という少女と出会った話があった。容姿も酷似してる気がする。

 

 

 その娘も十二区に向かったらしいけれど…………。

 

 

 

 

「…………なぁ、お前ら知ってるか?」

 

 その子、アクルって名前じゃないかい?そうアノースが尋ねようとした時………ふと、サザンクロスが声のトーンを落とした。

 

「まだ噂だけどさ、魔王が復活したんだってよ。」

 

 

 少し、トーンを落としたその声を聞いて、エリダヌスとユークリッドは顔を見合わせた。

 

 

「ああ……あくまでも噂だけどね。」

 

 

 苦笑混じりにそう言ったのは、アノースである。ふわりとした金髪と青い目。

 

「私の住む八区に現れたそうでね。今は詳しく調査中みたいなんだよ。」

 

 

 へぇ、と二人は呟く。それなら、自分ら三年生も忙しくなりそうだ。

 

 

 死ぬかもなー、とユークリッドは思う。実際、二年、三年生は死にやすい。

 

 

 エリダヌスもユークリッドも、自分は生き延びられるだろうと楽観視はしていない。

 

 

 楽観視していたものは、とっくに墓の下だ。そういう世界なのだ。

 

 

 

 

「………ところで、サザンクロス。もう行った方がいいんじゃない?一区で任務なんだろう?私も、十二区まで行かないとだしね。」

 

「あー。そろそろ切りあげるか。」

 

 ちょいと長話になったなとサザンクロスは苦笑する。

 

 ついでに、乗り気しないんだよなぁとサザンクロスは思う。エリス聖護士からの依頼だが、あの人は胡散臭いから苦手なのだ。

 

 

 

 ………まぁ、評価上がるから、行くんだが。

 

 

 

 

 

 

 じゃあなとサザンクロスとアノースは手を振り、去り行く二人を見送ってエリダヌスとユークリッドは再び校舎を目指し歩き出した。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。