「そうなんですか?」
アクルは牛若から話しをあれこれ聞いていた。
列車というものは、この世界においてかなり最近出来たらしい。
魔王も、こっちで見たのも聞いたのも初めてらしい。つまり、十年前には無かったのだという。
ちなみに、まだ列車は全ての区に繋がっている訳では無いらしい。
場所をちゃんと考え無いと、間違いなく魔族とかに狙われるだろうし仕方ないだろう。
ここらは、防壁やらなんやらが遠くを囲んでたり、街や拠点や砦やらが守っているので、突破でもされない限りは攻めこまれる事は無い。らしい。
突破されるような事件があればすぐに解るそうなので、その時は発進させなかったり、まぁケースバイケースである。らしい。
「そういえば………アクル殿は何区の出身なのじゃ?」
ふと牛若は尋ねた。魔王が降臨したのは八区だと聞いているが、アクルはあまり八区の人間には見えない。
五区に住んでた訳でもなさそうだし、七区人っぽくもない。
どうにも、アクルは人里のどの区にも当てはまらない様な気がした。
「え……? あっ! えと、その……えーと……」
狼狽しながら、アクルはあちこちに視線を泳がす。バタフライでもしてるかの様に忙しない。
落ち着かない様子で手を組んだりモジモジしてから、遠慮がちに上目遣いでアクルはおずおずと呟く。
「そのっ……あたしは、この世界の人間じゃあなくてその……」
「……ふむぅ?」
牛若は少しばかりアクルを繁々と眺めて、軽く思案した後に尋ねる。
「……もしや、異世界からやって来たのかな?」
「えっ……!? あ、いやそうです。そうなんですけど……」
予想してたよりも圧倒的に早く正解が出されて、アクルは驚く。
意外に普通の事なのだろうか?
「……成る程な。」
牛若は口元に手を当てて、考える。
十年前……牛若も詳しく知っている訳では無いが、魔王は人間により討たれた。
魔王は死ねば魂となり、次の魔王を探して世界をさ迷う。
普通ならば、遅くとも半年程で次の魔族に宿るのだという。
ちなみに、さ迷っている魂は、一部の魔族ならば感知する事が可能だ。
現在アクルに宿る魔王も、しばらくはこの世界にいたのだが、ある日を境に感知出来なくなってしまったのだという。
消えたのではと言われていたが、微かだが魔王の力は感知されていた為に、消えた訳ではないのだろうとは言われていた。
一部からは、異なる世界に行ったのではと言われていたが……。
「あ、あのぅ……牛若さん。」
「ああ、すまぬな。なんじゃね?」
えーと、と前置きしつつ……アクルは困惑したままの表情で牛若に尋ねた。
「異世界の事って……その、伝わってたりするんですか?」
ふむ、と牛若はまた少し思案した後、口を開く。
そして……伝わっていると、そう言った。
「まぁ、伝わっているとは言っても詳しく伝わっているわけではないがのう。
儂もほとんど知らぬが……。」
そう言って笑いながら、そうじゃな、と牛若は呟く。
「たまに、この世界の物では無い物が流れてくる事があるそうじゃ。
魔族はさして気にもとめぬが、人間達は随分とそれらを研究しているようでのう。」
この列車も、その産物である事を知って、アクルは成る程と呟く。
「まぁ、異世界の存在があるという事だけは事実なようじゃな。」
「……その、異世界から流れてくる人とかっているんですか?」
気になったので尋ねてみた。
行方不明になった人の中には、異世界に行ってしまったなんて話しを、オカルト雑誌か何かで見た事がある……気がするので、気になったのだ。
「……そうじゃな、人であったのだろうな、というのなら流れて来る事もあるそうじゃ。」
「……えと、それって?」
聞かぬ方がよいぞと苦笑する牛若を見て、なんとなくアクルは察してしまった。
「つまり、ネギトロめいた姿になったりするって訳さ。」
そして、せっかく牛若がぼかしてくれたにも関わらず、KY大魔王は普通に言うのであった。