雪の様な肌と血の様な眼。
映すは世界の儚さ、聴くは同胞達の断末魔。
もう沢山だと思ったからこそ進むと決めた道。
────争う世界に反骨魂。
店から出て来て、自称ウサギちゃんヘアーの女は再びタバコを口にくわえた。
マッチで火を着けて、煙りを盛大に吸い込むと、タバコは物凄い勢いで灰になり、すぐに短くなる。
直後、スパーッ!と煙りを吐き出す。
青い空に、紫煙がゆらゆら………ウサギちゃんヘアーかっこわらいの女は、再び装着したサングラス越しにそれを眺める。
「なんというか………相変わらずじゃな、お主。」
呆れた様子の声色が、その耳に届く。
視線をやると、そこには呆れたような表情で牛若が腕を組んでいた。
牛若は、やれやれと溜め息を吐いて──それから、苦笑を浮かべる。
「…………じゃが、助かったぞ。音兎(オト)」
本名を呼ばれた彼女は───魔星十二支が一人、音兎は、ふっ………と笑いタバコを捨てる。
タバコは空中で弾けて消し飛んだ。
「…………そっちのお嬢ちゃんが、魔王サマか?」
牛若にくっついて、あわあわ言ってるアクルを見て音兎はうっすらと笑った。
ソレに対して、アクルはぎこちなく笑う。
なんというか………とりあえず、アクルとしては苦手な相手。そんな印象であった。
音兎は、特に気にした様子もなくスタスタと歩いてアクルに近付いて行く。
スラッとした高身長の女性。………細身でこそあるが、その背の高さからは威圧感があり、アクルはだいぶおっかなびっくりである。
アクルに近付いて、音兎は両膝を曲げて、両手をそのまま曲げた両膝に置いて。
「魔星十二支が一人、音兎だ。─────夜露死苦ゥ。」
「えっ、あっ、えと……………」
なんというか、独特なイントネーションだとアクルは思う。
しかし、よろしくと言われたのならば、こちらも答えねばならないだろう。
少しキョドキョドした後、アクルは進んで一歩前に歩み寄り、そして頭を下げた。
「あ、えとっ、アクルですっ。よ、よろしくお願いしますっ。」
緊張しつつもハッキリ挨拶をするその姿に、音兎は軽く笑った。
「頭を下げる必要はねぇぜ、魔王ちゃんよ……アクル、か。OK。」
そこまで言ってから、音兎はニヒルに笑いサングラスを外した。
切れ長な鋭い目付きと真紅の瞳。これまた、アクル的にはちょっと怖い。
…………けれど、敵対するようなモノは感じない。というかむしろ、何処か親しげな空気を感じた。
「生憎、私は礼儀知らずなんでな。だから、私に変に気を使う必要はねぇぜ、アクルちゃん?
ククク……仮にも魔王サマな訳だしな……?」
そう言って………音兎は身を翻し、着いて来なと歩き出す。
牛若が追って歩き出して、アクルも小走りに後を追う。
「あ、いえ、そのっ……あたし、魔王って自覚まったくありませんし……」
そう言って、困った顔をするアクル。
その横に、牛若が並ぶ。
「何処に向かっておる?」
「立ち話もなんだろ?宿をとってあるんでなァ、そこに行こうや……」
そう言って音兎は、再びタバコを取り出し口にくわえた。
今度は、先程と違いゆっくりと味わうつもりだ。
ゆらゆら揺れる紫煙と、嗅ぎなれない煙草の臭いと共に………アクルは共に、宿へと向かうのだった。