薄幸の堕天使   作:怒雲

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 放たれた鉄砲玉の如く、真っ直ぐ飛んで命を奪う。

 隻眼は狙う。人に仇成す存在を。


十二聖護士──『魔弾の銃撃手』 アエアリス·ガニュメディアル

 

 

 

 

「……────シィット!」

 

 

 空中に投げ出されたアエアリスは奥歯を咬む。

 

 まさか、このオレがこうもアッサリ吹き飛ばされるたァな。

 

 宿から飛び出し夜風を身体で浴びながら、油断してたかと少し反省。オレもまだまだか。

 

 

 空中で軽く回転し、アエアリスは着地……と、同時に跳んだ。

 

 

 弾丸の如し速度で、アエアリスは自分が飛び出した、割れた窓まで向かう。

 

 

 その際に、その手は自身の得物であるリボルバー式の拳銃を握っていた。

 

 その拳銃は、実に特徴的な見た目をしている。

 

 まず、拳銃と呼んでいいのか解らないくらい妙に大きく武骨だ。

 なんとなく、水瓶を思わせる見た目のシリンダーには、六発の弾丸を込める箇所と、真ん中に野球ボールが入りそうなくらいの大きな穴。

 

 

 ただの弾丸が飛び出すにはあまりに大きい銃口と、その上に普通の弾丸が飛び出しそうな銃口。

 

 

 

 

 アエアリスの、拳銃を握る方とは逆の手から、手品の様に野球ボールサイズの銀色に輝く弾が現れる。召喚術……なのだろう。

 

 

 それを得物のシリンダーの、丁度セット出来そうな箇所にセットした。

 

 割れた窓から宿内に侵入した瞬間、拳による一撃がアエアリスに襲いかかる。

 

 対するアエアリスは拳銃の引き金をひく。

 

 

 鳴り響く発砲音。弾丸は……発射されない。

 

 

 薄い幕の様な、波紋の様な何かがアエアリスの前方に現れ塞いでいた。

 

 

 銀色の弾────『バリア・ブレット』

 

 

「む……!」

 

 

 牛若の拳は防がれてしまい、軽く顔をしかめる。そう上手くは行かぬな、やはり。

 

 

「ヘィ!ご挨拶じゃあねぇか!」

 

 

 アエアリスは先程の和装の少年を見据える。

 

 髪は黒から灰色になり、頭には牛の角がはえている。

 

 

 人化の法……本当に、あそこまで上手く化けれるもんとはな。

 

 

「……テメェ以外に、そこまで化けれる奴があと何人くらいいるよ?」

 

「…………」

 

 

 アエアリスに問われたが、答える必要は全く無いので牛若は黙る。

 

 静かにアエアリスを見据えながら、必殺の左手を軽く垂らした。………魔王の目的や音兎達の目標の為に、十二聖護士を殺すのはまずいが、いざという時は仕方がない。

 

 

 

 

 

「ヘィ!ま、別にいいけどな!」

 

 

 アエアリスの目前からバリアが消えて、それを見て牛若は彼に向けて駆け出した。

 

 アエアリスの特殊なシリンダーには、既に新しい色の弾がセットされている。

 

 牛若は左手の人差し指を構えながら間合いを詰める。さっきのならば、手は打てるが……。

 

 

 アエアリスは拳銃を構えたまま静観する。

 狭い室内という場所……拳銃は少し不利か。

 

 

 牛若が目前まで迫る辺りで、アエアリスは引き金をひいた。また発砲音が室内に響く。

 

 それに対し牛若は身体をそらして避ける動作をするが……またもや弾丸は発射されない。

 

 変わりに大きな銃口からは片刃の剣が伸びていた。

 

 鋼色の弾、『ブレイド・ブレット』

 

 少し牛若が面くらい、同時にアエアリスは踏み込んで剣を振った。

 

 

 牛若は剣の斬撃を避けつつ隙を伺う。

 

 

 アエアリスは剣を振りつつ一歩下がり、引き金をまたひく。

 

 普通の弾丸が小さな銃口から飛び出し牛若を襲った。

 

 何発か被弾した牛若だが、ダメージはあまり無い。人間で言えば、厚め服越しにエアガンで撃たれたくらいな感じだ。

 

 

 それを見てアエアリスは軽く舌を打つ。頑丈だな……オレの相棒は並じゃあねぇんだがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦いが始まる音を聞きながら、音兎は不敵な笑みを浮かべたまま自身を取り囲む十一区の兵士達を見据える。

 

 

「お、音兎さん……!」

 

 

 下ろしてとアクルが言う前に、響く発砲音。

 

 

 音兎は、迫り来る弾丸を避けながら軽く手を伸ばす。

 

 

 そして、パチン、と指を鳴らす音をアクルは聞いた。

 

 

「─────ガッ……!!」

 

 

 それとほぼ同時に、兵士達は物凄い衝撃波に吹き飛ばされる。

 

 

 背後にある宿の窓とかも割れていた。

 

 

「え……」

 

 

 一瞬で片が付き、アクルは目を丸くする。

 

 

「クク……なかなか、キマッた異能力だろ?」

 

 まぁ、実はあんまり得意じゃあないんだがなと音兎は笑った。

 

 

 音をいくらか操り、時には衝撃波を産み出す異能力、『爆音夢花火(ホワイト・ノイズ)』

 

「ざっとこんなもんよ。」

 

 

 そう言って笑う音兎を見詰めながら、十二支って凄い。改めてアクルはそう思った。

 

 

「あ、あの……牛若さんの加勢、行きませんか……?」

 

 

 それはそれとして?おずおずとアクルは尋ねる。十二聖護士はかなり強いだろうが、流石に十二支二人がかりは捌けないだろう。

 

 なら、二人がかりの方が確実なはずである。

 

 

「それもいいが……」

 

 

 音兎は少し思案してから、また笑う。

 

 

「まずは、アクルちゃんの安全確保が先だぜぇ……。

 今のアイツは、アクルちゃんが近くにいると集中出来ねぇだろうからなァ。」

 

 

 たく過保護はよくねぇってのによと笑う音兎から目をそらし、アクルはうつ向く。やはり自分は足手まといか。

 

 

 そんな様子を見て、心配すんな、と音兎は言う。

 

 

「そのうちどーにかなるさ。魔王サマなわけだしよォ。」

 

 

 まぁ、こっちとしちゃ多少強くなってもらわなきゃあ困るしな。

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