薄幸の堕天使   作:怒雲

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人類の敵対者であり、その頂点。

傷付いても瞬く間に再生し、数多の武器と魔法を操る生物の頂点。


魔王

 

 

 

 

 

 

 

 

「なん……だと……!?」

 

 

 頭の声は……否、『魔王』は驚く。

 

 

 いや、ちょっ、待てよ! こいつ、この威圧感……『十二聖護士(じゅうにせいごし)』だよなこいつ……? なんでこんなちんけな町にいるんだよ!

 

 

 

「アエアリス!」

 

 

 ぽかーんとしているアクルの耳に、別の男の声が聞こえた。

 

 

「ヘィ、来たかタウルス! 魔王だ、そこの女! そいつが魔王だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オイオイオイオイオイオイオイオイオイ!

 ナァナァナァナァナァナァナァナァナァ! なんか、また十二聖護士らしき奴が出てきたぞ!?

 どーなってんだ、なんでこんなちんけな町に二人いるんだよ!?

 

 

 めちゃめちゃに焦り散らしている魔王をよそに、町の人々は蜘蛛の子ちらした様に逃げて行き、町の入り口の辺りには二人の男とアクルだけが残された。

 

 

「……」

 

 

 青ざめた顔で、アクルはもう一人の男を見る。褐色の肌と巨体……これまた、目立つ風貌だ。この町では浮いている。

 

 

 アクルと同じ様に見ていた魔王は、待てよ? と呟く。

 

 

 んーと、あっちのスカした茶髪鬼太郎ガンマンはどう見ても十一区の十二聖護士だよな。んで、あっちの褐色の筋肉モリモリマッチョの変態は二区の十二聖護士だろうな。

 

 

 

 

 

 肝心の、この八区の十二聖護士がいねぇ……!

 

 

 つまりつまり、下手すりゃこの町に三人の聖護士が揃うってのか? 冗談じゃあねぇぞオイッ! 三人がかりに勝てるわけないだろ!馬鹿野郎、我なら勝てるけど!多分!今のアクルたんじゃ、絶対に無理!

 

 

 

「あ、アクルたん! とりあえず逃げるんだ!」

 

 魔王に言われて、アクルはハッとなる。のと同時に、ガンマン風の男、アエアリスの銃から赤い大きな弾丸が発射され、直撃。

 

 

「くたばりな化物が!」

 

 

「ぁがっ……!」

 

 

 腹の辺りに当たるのと同時にその弾は爆発し、アクルは腹に大きな風穴を開けながら吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アクルは……なんと吹き飛んだ衝撃を利用して地面を転がり、その勢いを有効に活用しながら撤退を開始し。

 

 

「なぬ!?」

 

 逃げろとは言ったものの、まさかそこまで良い逃げっぷりをみせるとは思わなかった魔王からは、思わず驚きの声がもれた。

 

 

「や、やるじゃないかアクルたん……ナイス逃げっぷり!

 見たか聖護士共!これがアクルたんの『逃走経路』だっ!」

 

 

 わき目も振らず町の内部に逃げて行く魔王を見て、一瞬だけ呆けるアエアリスだったが、追跡を開始したタウルスを見て同じく追う……が、足が止まる。

 

 

「ヘィ! ざっけんなよ、まだいんのか!」

 

 

 再びあちこちに湧いて来たワームを見て、アエアリスは思わず悪態をついた。

 

 

 タウルスは一瞬立ち止まる。魔王を逃がす訳にはいかない。だが、ワームを無視すれば町に被害がでるだろう。

 

 

 

 ……長い目で見れば、ここは魔王を追うべきだろう。その方が、後々の犠牲者は減るはずだ。……だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ワームを駆逐し町を守りつつ、魔王も始末する。十二聖護士が二人もいるのならば、そのくらいはしなければならないだろう。

 

二人の十二聖護士が、地面を蹴って行動を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒髪のみつあみを揺らしながら、とりあえずアクルは必死になって走っていた。あのままだと、いろいろまずそうだったし……流石に、人間とは戦えない。

 

 

 とはいえ、どうしよう? どこに逃げよう?

 

 

「……え?」

 

 

 そんな事を考えていたアクルの足が、思わず止まりそうになった。

 

 その大きな目に映った、無数のワームの残骸を確認したからである。

 

 

「なに……これ……?」

 

 

 ポロリと疑問が口から漏れて、魔王が答えを言う。

 

 

「あの十二聖護士の二人組の仕業だな。間違いねぇ。」

 

 

「…………うそ」

 

 

 自分が、たった一匹のワームを倒すのにどれだけ頑張ったのだろうか。

 

 

 町を歩いている間、ワームはいなかった。町外れの森に行って、ワームが現れて戦った時間は数十分程度だ。

 

 

 ……たった数十分の合間に、たった二人でこれだけのワームを片付けたとでも言うのだろうか。

 

 

「……───ッ」

 

 

 あの二人は本当に人間なのだろうかと、アクルは思った。

 

少なくとも、化物呼ばわりされる筋合いはないと思う。

 

 

 

 

 

「……その『じゅうにせいごし』って、何なんですか?」

 

 アクルの問い掛けに、頭の声はそうだなと呟く。

 

 

「人間の住む場所が全部で十二区あって、そのひとつひとつにいる最強の人間ってとこだな。」

 

 

 そうなんですかと、アクルは相槌をうちながら、ああ、あれ本当に人間なんだと思う。

 

「……それで、その……貴女は、魔王……なんですか?」

 

「え? うん。言ってなかったっけ?」

 

 

 そしてこの軽い返答である。

 

 

 

 

 

「いや……聞いてないですけど………」

 

 

「……あ、そっか。あんたを驚かそうと思って溜めてたんだっ……あ、いや、いきなり言ったら驚くかなぁ、とか人里離れさせるつもりだったから、そん時言おうかなぁ、とか。

 名前問われ時、丁度いいから魔王だって言って、町から離れて貰おうと思ったら空気読まねーメガミミズが現れたんだった!」

 

 

「…………」

 

 

 そんな馬鹿なとしか言い様がない魔王の言葉に、唖然としつつも、しっかり走るアクル。

 

 何処に逃げよう。周囲は高い防壁だ。流石にあれは、飛び越えられないだろう。

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