朝靄が晴れる頃、赤と金細工の門前には生徒達が集まっていた。
二年生と三年生。そして、並ぶ彼らの前には四年生の姿だ。
「……二年生の奴等、やっぱり緊張してんなぁ。」
ユークリッドという三年生の少年が言う。
白いワイシャツ的な上着と銀のネックレスに黒いジーパン的な服装をした、所謂イケメン的な顔立ちではあるものの、チャラそうな雰囲気を醸し出している。ヘアバンドと、ツンツンした茶髪が特徴的だ。
「まぁ、仕方ないわよ。
……何人くらい生き残れるかしらねぇ。」
その隣で、まるで女性の様な口調でリザドは喋る。
長めの青い髪と、胸元まで開けた、ユークリッドと同じ様なワイシャツを着けた青年である。なんとなく小綺麗で清潔な雰囲気のお陰か、さほど気持ち悪さは無い。
「んー……っても、何人かは後方支援だろ? 全滅する事はねぇんじゃね?」
「それはそうだけど、やっぱり前線に出る子は心配だわ。
………まぁ、私にはそこまで気を配る余裕は無いでしょうけどね。」
そう言って、リザドは肩を竦めて苦笑して、そうだなとユークリッドもまた同じように笑う。
「おー、集まって来たなぁ。」
すっかり集まった様子にサザンクロスが笑い、隣にいるサジッタは、そうだねと相槌を打つ。
「それじゃあ、僕は名簿読んでくるよ。」
そう言って数歩前に出るサジッタの後ろ姿から視線を外し、サザンクロスは隣にいる痩身長身で黒の長髪。それにメガネを着けた、黒い法衣を身に纏う少年、メンサの方に向けた。
「赤い印がついてる場所が、来ると予見されてる場所だよな?」
地図を拡げて尋ねるサザンクロスに、そうだな、とメンサは頷く。
「……そんな解りやすい事をわざわざ聞くという事は、縁の地でもあるのか?」
「あー……まぁな。ここ、実家あるわ。」
いくつかのうち一つを指差し、サザンクロスは笑う。まぁ、家族はみんな死んだから誰もいないんだけど。
「……アイツ……いや、いいか。」
ふと、三区にいた時の知り合いを思い出し、まぁいいかとサザンクロスは呟く。
三区からはもう出て行ったと聞いたし、会う事は無いだろう。
そう言えば、三区に寄る事はわりとあったが、魔族からの攻撃に備えてとは言え滞在するのは久しぶりだなと思った。
住んでた家は、壊されたかなー。………なんて少しセンチになってみたり。
「えっ。馬車とか列車は使われないんですか?」
「うん。走って行くよ。」
二年生らの合間にどよめきが走る。
七区のこの街から三区まではかなりの距離がある。走って行く等、正気の沙汰ではないように思えた。
「訓練ついでだよ。二年生の皆はまだ、留年組以外は戦力としては期待されてないしね。」
そう言って、サジッタはニッコリと微笑む。別に、馬鹿にしているわけでは無い。
「安心してよ、僕らも一緒に走るから。
まぁ、早馬が来た場合は、一部はともかく置いてくけどね。」
まだしばらくは、攻められる事はないだろうけどね。
「さて、準備はいいかい? ああ、シルドは後ろからゆっくり来てね。」
「心得ている。」
フルプレートの鎧を着込む青年が、サジッタに話題を振られて快く頷いた。
白髪で傷の多い顔から強面な雰囲気ではあるものの、どことなく取っ付きやすい空気を持つフルプレートの青年が、兜を脇に抱えながら列の最後尾まで歩いて行く。
「シルド~。脱落しそうな人と衛生班をよろしくねぇ~。」
手をヒラヒラさせながら笑顔のサジッタに、シルドもまた口元に笑みを浮かべる形で返事をする。
四年生である彼なら、もしもの時の守衛として問題ないだろう。
まだ戦いに慣れてない者を、みすみす死なせたく無い。
シルドは少し考えて、三年生の者達を何人か呼んだ。
呼ばれた者達は、シルドの元に向かう。
「よーし、行くぞエリダヌスちゃん!」
「やめろーっ! はなせーっ!」
その中には、以前アクルが列車で会った二人の少女がいた。
エリダヌスと、コンパス・クリクニースの二人組である。
お人形の様な金髪美少女の両腋を掴み、持ち上げながらシルドのところに行く背の高い眼鏡女を横目に見て。
「それじゃあ行くよ。」
と、サジッタは軽く走り出し、他の生徒達もそれを追う。
初陣をする者が多い二年生。年齢は、平均で十三~十五といったところか。
三年生は、十四~十八くらいである。
ここにはいないが、一年生は十~十二くらいなようである。
「さて……夜営はどこでする? このペースだと、一日では着かぬぞ。」
メンサがサジッタに耳打ちすると、サジッタは地図を拡げて一ヶ所を指差す。
「ふむ……。先に行って、夜営の準備、終わらせておくか?」
メンサがそう尋ねると、サジッタは、そうだねぇ、と一言呟いてから首を横に振った。
「いい経験になると思うし、その必要は無いよ。」
「ふむ、確かにそうだな。」
メンサは納得したように頷き、後方を見る。
生徒らは、まだ余裕であった。