「やほー。」
リュエン、ラビィ、アメリオンの三人は、とある空き家の中にいた。
プリキュオンは、旦那と会ってくると言っていたので、一度別れた。水入らずの方が良いだろうと、アメリオンが考えてである。
それから少し歩くと、一頭の羊を路地裏に見付けた。
「メリーさんの羊だね。僕らに用事かな?」
とリュエンが言ったので、路地裏に消える羊を追って、そしてこの空き家にたどり着いたのである。
「やぁ、三人供。よく来てくれたね。」
メリーは三人を見据えて、あつものあっけらかんとしたような声をかけた。
「一応、最終確認にね。
……この三区が戦の地となるよ。君らには、今後の為に参加してみて欲しいってところなんだ。私達に組する事になるからね、魔王と関わる以上は。」
そこで少し間をおいてから、メリーはまた語り出す。
「引き返すなら今だよ。依頼しといてなんだけど、私達に協力出来ないなら半端に関わって欲しくないからね。」
それを聞いて、リュエンはラビィに視線を向けて、へらりと笑って。
「だってさ。どうする?アクルちゃんの荷物をメリーさんに渡して、とんずらする事も可能だよ?」
「……じゃあ、リュエンとアメリオンは五区に帰るといいわよっ!」
引く気が無い様子に、だよねー、とリュエンはケラケラ笑う。
ラビィが引かないなら、リュエンも引くという選択肢はない。
まぁ、ラビィとしてはアクルちゃんにまた会いたいんだろうねぇ、とリュエンは思う。
少し境遇が似てるからほっとけないのだろうか。
まぁ、アクルちゃん自体がなんとなくだけど、ほうって置けない雰囲気があるしねぇ。ある意味、カリスマなのかもね。魔王なんだし。
リュエンがそんな思案をしている隣………アメリオンがなにか考え込む仕草をして……それから、ゆっくりと口を開く。
「……すまない。俺は、少し考えさせてもらうよ。」
それを聞いて、リュエンとラビィは軽くお互いに目を合わせる。
一瞬の間。………ラビィは、軽く笑ってアメリオンに視線をやって。
「そう言えばっ、なんかやりたい事があるって言ってたわねっ?」
ラビィに問われて、アメリオンは、ああ、と短く返事をする。
「それを済ませてから、また考えるさ。………勝手ですまない。俺みたいな─────」
「OK!別にそれでいいよねメリーさん?」
アメリオンの言葉を遮り、リュエンはパンパンと手を叩いた。
言葉を遮られたアメリオンは……ポケットからタバコを取り出して、口にくわえた。
そんな様子に、やれやれとメリーは軽く頭を振った。
「……そっか。まぁ、解ったよ。まだ猶予はあるし、じっくり考えて欲しい。」
メリーの羊は静かにそう言って、少し頷いてみせた。
「聖護士養成所からも結構来るし、この区の兵士達も強い、大丈夫とは思うけど……無理だと判断したら、すぐに逃げてくれよ?」
メリーの羊がそう言って、リュエンは静かに頷いた。
そんな風にリュエン達が 打ち合わせをしている頃。
「貴方ー!」
プリキュオンは門前の広場にてアノースと再開していた。
金髪で青い優しげな瞳の、軽装の鎧姿の美青年を見て、弾む様に駆け寄り、彼女は子供の様に抱き付く。
「わっ……と、プリキュオン? どうして、ここに?」
意外そうに尋ねると、プリキュオンはアノースから少し離れて、はにかんで見せる。
「ふふ……此度の戦に参戦すると聞きましたからですわ。」
そう答えてから、プリキュオンは得意気な顔をして軽く胸を叩く。
「夫が死地に向かうのですもの。武家の妻として、馳せ参じるのは当然の事にございましょう?」
それを聞いて、そっか、とアノースは微笑みプリキュオンの頭を撫でる。
長身のアノースと比べ、小柄なプリキュオン。並ぶと、結構な身長差のカップル……否、夫婦だ。
「それに、あの日は結局ほとんど会えなかったですし。」
ああ、とアノースは呟く。あの日とは、以前プリキュオンがアクルと会い、別れた後である。
家に帰っていたのだが、アノースはすぐに任務に行ってしまったのだ。
「ごめんね、プリキュオン?」
申し訳なさそうな笑みを浮かべるアノースに対し、プリキュオンは軽く首を横に振る。
「気にしないで下さいまし。アノースは……我が夫は、重要な立場におりますもの。
ですが此度の任は死地に赴く事。このプリキュオン、妻としてお供しようと馳せ参じたのですわ。」
「そっか……。」
アノースは微笑みながら、そう言えば、と周囲を少し見る。
「従者の方々はどうしたんだい?」
その問い掛けに対し、ああ、とプリキュオンはあっけらかんと笑った。
「死地に付き従って下さる訳ですもの。
もしかしたら死んでしまうかもしれませんわ。だから、せめて少しでも楽を与えてあげようと、休暇をとらせましたの。
この三区を観光してもらってますわ。」
「……そっか。」
護衛無しで街を練り歩くお嬢様に対し、アノースは少し苦笑を浮かべるのであった。