リュエン達は、三区の街をプリキュオンらと歩いていた。
前のメンバーに加えて、リザド、ユークリッド、エリダヌス、コンパスら四名の学生が追加されている。
四名はプリキュオンの夫であるアノースとはそこそこの仲らしく、この街で合流した際に話をしていた。
その時にアノースがプリキュオンを妻であると紹介し、興味津々になった四名はアノースが軍議に向かった後も、こうして着いて来ているのだ。
基本的に、三年二年は自由行動なのである。
「うーん。僕好みの子が多いなぁ~。それにしても、一区って本当に美人さんが多いんだね。」
お人形さんの様な美少女、エリダヌスを見ながらリュエンは呟く。まぁ、中身はちょっと残念だが。
彼女は今、同じ一区人であるラビィとは気があうらしく、「だぞっ!だぞっ!」 「わよっ!わよっ!」と、会話していた。
「ところでお嬢ちゃん、可愛いね。」
不意にコンパス・クリクニースがリュエンに声をかけた。
んー? とリュエンはオレンジ色の髪をした、背の高い眼鏡少女を見上げる。
後ろが短めのボサボサしている髪に、青っぽいつばつき帽子。そしてさらに、青っぽい長袖の上着と長いスカートを身に付け、背中には何やら巨大な斧を背負た少女。
リュエンはそんな彼女に、ニッコリと微笑んだ。
「ありがとう。お姉さんも可愛いよ。」
「マジで? 可愛いとかあんまり言われないから、お世辞でも嬉しいですねー」
ニコニコしながらそう言って、さて、とコンパスはリュエンを見下ろす。
そして、満面の笑みで口を開いた。
「だっこしてもいいかね?」
「本当に!?是非お願いしますっ!!」
半分くらいは冗談でコンパスは言った。こういう事を言うと、恥ずかしがったりとか、そんな可愛い反応見せてくれるやろな〜くらいな気持ちである。
しかし、リュエンはそんな彼女の予想と違い、テンション爆上りである。
そんな反応に、思わずコンパスは、おぉぅ、と少し身を引く。
だが、自分から言った手前、退く訳にはいかないという!謎の意地が彼女を奮い立たせた。
「よーし、やってやろうじゃあないですか! そりゃ!」
リュエンの両脇を掴み、掲げるようにするコンパス。
それから抱き寄せた為に、とても柔らかいくふかふかな感触に包まれたリュエンは、「イヤッホーイ!」 と、更にテンションが上がった。
「ちょっ! なにしてんのよっ!」
「おいっ!この前別の奴にそれやってっ、ライブル聖護士に怒られただろっ!」
ラビィとエリダヌスの一区女子コンビがその光景に気付き、声を荒げた。
コンパスは少し引き攣った笑みでリュエンを下ろし、リュエンはとてもツヤツヤのニコニコ。
「うん。いいお胸だったよお姉さん。」
「ムムム……こやつ、もしやガチの娘か……?」
冗談めかした口調でコンパスは言うが、何か悪寒が走り僅かに距離をとる。
コンパスの中で、リュエンという少女(しょうねん)に対してほのかな苦手意識が芽生えた瞬間であった。
「あー、もうっ……。」
軽く溜め息混じりにラビィは頭をおさえた。
リュエンが男とは、まだ言っていない。
言おうと思ったのだが、リュエンが 「いいのかなー? そんなヘンタイの仲間(ファミリー)だと思われるけど、いいのかなー?」 なんて事をぬかしよった為に、言えなかったのである。
こいつを出来る限り女の子と関わらせてはならないわっ、とラビィは思ったが……。
「お兄さん達、イケメンだねっ! 僕は好きだよ!」
しまったとラビィは思う。厄介な事に、こいつはバイなのだ。
バイだけにバイバイしたい気分である。
「見掛けに反して恐ろしい娘だな……」
ふぅむとコンパスは呟き、ふわふわの長い金髪の美少女、エリダヌスに視線をやる。
そしてにんまりと笑い、エリダヌスは頬を引き攣らせ一歩、二歩と後退り…………
「やっぱりエリダヌスちゃんに限るな!」
「やめろーっ!はなせーっ!」
そう言って小さいエリダヌスをだっこし、エリダヌスはモガモガと抵抗をしている。
そんな様子を尻目に、ラビィはとりあえずリュエンの耳を引っ張り引き離していた。
「いやぁ、しかしアノース先輩の奥さんかぁ……べっぴんさんッスね。」
「あら、ありがとう。ふふ、貴方も素敵でしてよ?」
軽く会話をした後、プリキュオンは話題をふる。
「アノースは、学園ではどんな感じですの?」
夫の事だ。当然、気にもなるのだ。
彼女のそんな問い掛けに対し、そうねぇ、とリザドは微笑む。
「優しいし丁寧だし、嫌いな人はいないんじゃあないかしら?
家庭ではどうなの?」
「まだまだ新婚ですし、あまり帰っては来ませんが……優しくて素敵ですわ。」
そう言ってプリキュオンは幸せそうに微笑む。
ちなみに、アメリオンの姿は無い。彼は、野暮用で別のところにいるのだ。