「お前達か、丁度いいところにいたな。」
エリダヌスらが、リュエンやプリキュオン達と街中を歩いていると、そこに痩身長身で黒く長い髪を風に靡かせた、黒い法衣を身に纏う十代後半くらいの少年が現れる。
「ああ、メンサ先輩!チィーッス!」
「うむ。」
そんな彼───メンサに対し、ユークリッドは人懐っこい笑みを浮かべて手を振り、それに対してメンサは軽く頷き、眼鏡を軽く上げて一同を見る。
「む?諸君らは?」
そこでプリキュオンやリュエン達を見て軽く小首を傾げる。
対してプリキュオンは、優雅に笑みを浮かべて、ドレスの裾を指先でつまみ、一礼。
「私はプリキュオンですわ。プリキュオン・ハドリアースと言えば、解っていただけるかしら。」
「ハドリアース……?」
メンサは少し眉間に皺を寄せて。
「ああ! 君がアノースの奥方様か。
お会い出来て光栄だ、プリキュオン嬢。彼には、いつも世話になっているよ。」
そう言って破顔し、片手を差し出す。
プリキュオンもまた、にこやかに笑いながらその手を取るのだった。
メンサは、少しばかりアノースの学園での活躍話しをした後、コホンと咳払いをした。
「それで、奥方様は何故にこの三区に?」
「夫の加勢ですわ。」
「おお、やはりそうでしたか。『八区の小さな猛犬』と謳われる実力、是非とも拝見したいものですな。」
プリキュオンの顔に苦笑が浮かんだ。その異名は、あまり好きではないのだ。 かっこ悪いし。
そんな会話をしている後ろでリュエンがリザドに、「あの人だれ? 偉い人? エロい人?」 とか無礼極まりない事を聞いて、リザドの頬を引き攣らせている。
「そちらは?」
メンサがリュエンらを見ながら問うと、そうですわね、とプリキュオンは呟く。
「気持ち従者みたいなものですわ。」
と、実際に従者という訳ではないのだが、そう説明した。
「此度は戦になりましょう? 私と共に、参戦したいと思ってますの。」
「成る程……」
そう呟き、メンサは鋭い目線をリュエンとラビィに向ける。
「ふむ……片方は魔術師……いや、召喚師か?
片方は剣士………ふむ。」
………一人は五区人か。ふむ、とメンサは呟く。
「実力は確かなようだな。コンパス、そちらの黒衣のお嬢さんは、お前より強いのではないか?」
「な、なんですとー!?」
いきなり格下にされ驚くコンパスの後ろで、へぇ、とリュエンは呟く。
見ただけで相手の力量が解るのか。性別は解ってなさそうだけど。
「ところでメンサ先輩、軍議は終わったんですよね?」
話しを戻そうと、リザドがメンサに問い掛けると、ああ、と彼は返事をする。
「その事について、先に話しておこうと思ってな。
まぁ、後で宿に戻った際にサジッタから改めて話しがあると思うが……」
そこで一度区切り、メンサは説明を始める。
地図上、三つの街が狙われているという事。
戦場になるであろう地点、『A』『B』『C』に生徒らを分散しておくらしい。
『A』『C』に魔族が多く散見される為に、恐らく狙われるのはどちらかだろう。
「故に、この街には主力はあまり置かない。
……仮にこの街が狙われたなら、他二つから援軍を出す。 挟撃が出来るという訳だ。」
淡々と説明をするメンサに対し、うん? とラビィは小首を傾げる。
「三ヶ所同時に攻撃される可能性は無いのっ? ……ですかっ?」
それに対しメンサは、そうだな、と呟く。
「無い事は無いと思うが、あちらに分散するだけの数は無いと思われる。
精々二ヶ所が限度だろう。」
メンサはそう言って、軽く眼鏡をあげる。
「あちこちで見掛けるわりには、なかなか攻め込んで来ない。
これは兵力が整うのを待っているのだろうな。
……だが、多すぎれば問題が発生する。」
「ああ、まぁそうですよねぇ。食料とかどうすんのって話しだもんねぇ。」
リュエンはヘラヘラと笑いながら言うと、そうだな、とメンサは笑う。
一週間くらい経過しているので、そう遠くない内にあちらも攻め込んでくるだろう。
「移動中に襲われるのが怖いッスねぇ。」
ユークリッドが呟き、そうだな、とメンサは頷く。
「故に、街から街への移動は素早くだ。」
そう言ってメンサは、プリキュオンらに視線をやる。
「貴女はアノースと行動を共にして下さい。
今日中に、彼から話しがある事でしょう。」
「ええ、解っておりますわ。」
そう言ってニッコリと微笑むプリキュオンに、メンサは同じく笑みを浮かべて礼拝をひとつ。
そして身を翻し、三年組に、また後でなと一言……彼は人混みに消えて行く。
「さてと……僕はちょっと、アメリオンの様子を見に行くよ。
ラビィはそのままにしてなよ。」
そう言って、リュエンもまたプリキュオンらに背を向けた。