「……うしっ、今日はここらにするァ。」
音兎はが呟き、そうじゃな、と牛若が頷く。
深い深い森の中。山奥。
アクルの頭上でフクロウが鳴く。もうすっかり日は落ちた。
「今宵のディナーにも期待だぜェ……。」
ちなみに音兎の顔は少し赤い。普通に酒を呑み酔っ払っているからだ。
結構呑んでいるはずなのに、森の中を平気で歩いて凄いなとアクルは思う。牛若と魔王は呆れているが。
「あはは……期待して申し訳ないですが、お昼の残りですねー……」
昼頃に羽毛をかむしって、適当に切って、雷神のハンマー、ミョルニールの電熱で焼いた簡素なソテー。
味は、塩と醤油だけだ。塩は元々持っていたが、音兎は竹筒に容れられた醤油を持っていてくれたのだ。
せめて砂糖とかみりんとかも欲しかったなぁ、と少し残念に思う。
まぁ、それでもどうにかそこそこの味付けは出来た。と、アクル的には思う。
元々の肉の美味しさもあり、わりといい出来だった。魔王も、醤油があるだけで全然違うぜと喚いていた。
ちなみにこの料理を出したお昼頃に、音兎らウメーウメー! とか言いながら、自分の大きな布袋から酒を取り出し、ゴクゴク飲み出したのである。
牛若は昼間から飲むなとたしなめたが、「酒ッッ!飲まずにはいられないッッ!!」 とか言って聞かずに、やけ酒の様な勢いでガブガブ飲んだのである。
そして昼食が終わっても定期的に呑んでいた。
それは水分補給というより、アルコール補給であった。彼女の血液は、本当にアルコールかなにかなのかもしれないと思う。
「なあに、充分美味かったからよォ〜。残りで構わねェぜェ〜」
そう言って、新しい酒を布袋から出す音兎。これで何本目だったかなとアクルは思う。
どんどん出てくる酒瓶を見るに、あの袋もあの時に五区でもらったのと同じ様な感じなのだろうかとアクルは自分の布袋を見て、あの女の事を思い出し軽く身震いする。
「うむ、良い場所に出たな。」
寝そべれそうな広い空間に出て、牛若は満足そうに笑う。それから、支度を始めた。
「……焚き火の跡がありやがるなァ。」
真ん中に行き、音兎は炭になった木に軽く触れる。
「……三日か、四日ぐれぇかな。」
「ふむ。……魔族の誰かが、通ったのやもしれぬな。」
丁度三区に向かう道なので、有り得るなと魔王も言った。
「……」
どうなるのだろうかと、アクルは空を見て思う。
そして、弱気になりそうな自分を叱咤し、拳を握った。
頑張らなきゃ。このまま、こうやっている為にも。