「……どういう、事だ?」
円卓の広間に腰掛け、集う何名かの十二聖護士。そのうち、黒髪弁髪メガネの女性、ライブルは少し困惑した表情をガンマン風の男……アエアリスに向ける。
「ヘィ、そのまんまの意味だぜ。なぁ、タウルス?」
話を振られたタウルスは、腕を組みながらしかめっ面で頷いてみせた。
それを見て、他の十二聖護士達はそれぞれに顔を見合わせる。
「魔族が……魔星十二支が、魔王に攻撃していた……?」
口元に手を当てながら呟くのは、白い金を基調とした法衣を纏う、とても美しい、ブロンドの長い髪を持つ碧眼の女性。
六区の聖女だの女神だのと喩えられる程に美しい容姿を持つ、十二聖護士の一人。名を『ヴァルア・デメテェール』という。
「……何故だ?」
誰に言うでもなく、ライブルは呟く。当然ながら、答えられる者はいない。
アエアリスとタウルスは、天鵬が魔王に攻撃したのは見えていたが、その時は遠くて会話までは聞いていないのだ。
「それと、魔王も何か妙だった」
タウルスの言葉に、まだなんかあんのかと、緑髪で人相の悪い細目の小柄な男がぼやく。彼は十区の十二聖護士、『カプリコット・アイギスバーン』である。
「……魔王から、人間の気配を感じた」
「……なに?」
それぞれがタウルスに注目する。
「その話し、真か?」
部屋に老人の声が響き渡り、十二聖護士達がそれぞれ立ち上がった。
「来られましたか……ゼース人王」
部屋に現れた老人に、ライブルが一言礼拝をし、他の者達もそれに倣う。
「うむ」
長めの白髪と髭。それと、力強い目を持つ老人である。何気に、体格も良い。齢七十とは思えない。
「……全員は、集まれなかったようですね」
その隣に立つ、女性の様に温和な顔立ちをした青年が円卓を見ながら呟いた。
彼は『タリアス・アルナスル』青く、長い髪を後ろで編んだ青年。この王都、九区の十二聖護士にして、聖護士達のまとめ役でもある。
「……人間の様な気配をもつ魔王……そして、その魔王を傷付ける魔族、か」
ゼース人王は一人、呟いて玉座に腰掛けて聖護士達を静かに見据える。
相変わらず、この人はでけぇなとカプリコは思う。齢七十の雰囲気では無い。
「……状況が解らない以上、慎重に行動しなくてはなりませんね」
タリアスが呟き、ヴァルアは少し緊張した表情をした。
「うきゃきゃ、お帰りなさいませ天鵬殿。話しはうかがっておりますぞー?」
そこは古城の一室。帰還した天鵬を、猿顔の魔族が出迎える。
「擬猿(ギエン)。早いですね、もうみんな集まってますか?」
はいはい、と笑う擬猿。彼もまた、魔星十二支の一人である。
古城の通路を歩き玉座の間。そこに集いし、全員では無い十二支達。
「牛若(ウシワカ)と……喰鼠(クウソ)。それに、狂狼(キョウロウ)はまだ来ていないのですね」
「ええ、ええ、まだ来てませんなァ……ま、我らの話し合いなんて、この擬猿と従虎(じゅうこ)殿に非羊殿。なにより万龍(ばんりゅう)様さえいらっしゃれば事足りるんですがなァ」
うきゃきゃと擬猿は笑い、天鵬は苦笑いを浮かべる。
「まぁ……私も難しい話しは苦手ですしね」
「うっきゃっきゃっ、天鵬殿は見た目だけですからなァ、賢そうなのは」
その発言に、天鵬は少しムッとした顔をしてみせた。
自覚はしているが、ハッキリ言われるのはちょっと嫌だ。
「擬猿。少しばかり口が過ぎませんか?
……確かに、私は任務を失敗してきましたが……」
顔を曇らせながらの天鵬の発言。それを、擬猿は、あーあーと遮った。
「まっ、それはいいです。聖護士がいる可能性は考えておりましたが、二人もいるというのは厳しかった。
こちらとしても急な話しで、あまり駒を動かせませんでしたしなァ」
それはさておきと、擬猿は天鵬に向き直る。
その表情には、冷笑が浮かんでいた。
「で? 聖護士二人を相手に、なーに殺る気になっとるんですかなァ?
私めは、そういう場合は時間稼ぎに徹して、死にそうならさっさと逃げろと言っておいたはずなんですがなァ……?」
「そ、それは……。」
見るからに天鵬があたふたし始める。一応、同じ十二支であるこの二人は同格だ。
だが……魔族というのは、どうにもテキトーであり、あまり物事というのを深く考えないものである。
天鵬もそうであり、他の十二支達も似たり寄ったりなため、この擬猿が作戦やらなんやらを立てる事が多く、あまり頭が上がらないのだ。
「ものすごーく、安っぽい挑発に乗ったそうですなァ?」
「なっ……! ひ、非羊……黙っておいて下さいと言っておいたのに……」
「うきゃきゃ! まぁ、良いでしょう。今はこれからの話し合いが先ですぞ。
ああ、ちなみに天鵬殿は、この話し合いが終わったら説教ですじゃ。魔星十二支としてどうあるか、みっっっちり教えて差し上げねばならないようですからなァ」
ちょっとこめかみをヒクヒクさせながら言い終える擬猿。
対する天鵬は、しゅーん、と項垂れトボトボ部屋を歩いた
そんな哀れな姿を軽く笑いながら、虎顔の男……従虎は、ばーかと茶化しつつ肩をポンポンと叩いていた。