薄幸の堕天使   作:怒雲

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Sparking!!!

 

 魔王少女、樋山 アクルは真っ青な空の下、ぽやっとした表情で黒いみつあみを揺らしながら街道を歩いていた。

 

 

 両端の内、右手は崖で左手には森。道は幅広く、妙な事でも起きない限り落ちそうには無い。

 

 

「……………はぁ」

 

 

 少し歩いて、溜め息。昨日までのベッドと布団が恋しい。

 

 

 野宿に慣れて来ていたアクルにとって、布団の魔力は凄まじいものだった。

 

 あんなに柔らかく温かい物に包まれて眠れるのだ。まさしく、天の上、雲の上の様な寝心地。

 

 

「まぁ、ドンマイドンマイ! そのうちまた寝られるって!」

 

 

 そんなアクルを励ます、相変わらずお気楽極楽大魔王。

 

 ……なんだかんだで、そのテンションはアクルを気楽な気分にはさせてくれる。

 

 

 とはいえ、やっぱり気分は優れなかった。

 

「……あたしって、強くなれるんですかね?」

 

 

 ふとアクルは呟く。柔らかな風が吹き抜け、木々がさわさわと葉の擦れる音を立てている。

 

「そりゃあ我のパワーがあるからな。そのうち聖護士にも負けないくらい強くなるさー」

 

 とてもじゃないが、信じられない話しだ。

 

 魔王の力が凄いのは解る。よーく解る。自分が今、こうやって生きている事が何よりの証拠だ。

 

 もし魔王の力が無ければ何回くらい死んだのだろうか? 一日に一回くらいは致命傷を負っていると思う。

 

 

 今日だって、こうやって平和に歩いているちょっと前に死にかけたのだ。森の中を歩いていると、熊に出会って。

 

 

 あの巨大な熊は何かと魔王に問うと、魔王はただの羆(ひぐま)と答えた。絶対嘘である。

 

 

 周囲の木々は、かなり間隔をとって生えている。それこそ、結構先が見通せてしまうくらいだ。

 

 

 大きな生き物も、苦もなく行き来出来るだろうという間隔で生えている。恐竜とかでも、問題無さそうである。

 

 

 

 そう、恐竜みたいなでかさの熊に襲われたのだ。二階立ての民家くらいの背の高い大熊に。

 

 魔王曰く、ただの羆だというが絶対に嘘だ。赤カブトかなんかの親戚に違いない。

 

 

 ちなみに、熊に出会った際の魔王のアドバイスはというと

「アクルたん!早く大声わめき散らしながら背を向けて全力で逃げて木によじ登って死んだふりするんだ!」

 

 である。ちなみに全部死亡フラグだ。

 

 まぁ、しかし、なんだかんだで上手く逃げのびる事が出来て今に至る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今アクルは北に向かっている。港があるらしいのだ。

 

 

 ピスケラが言うには、流石にこのまま十二区に居座るなら立場上見逃せない。

 

だから他の区に。……五区の聖護士はいるけどいないようなものらしいから、五区に行けとの事である。

 

 

 治安がとてつもなく悪く、犯罪者天国らしいが、木を隠すならなんとやらとの事。それに、場所によってはわりと治安もいいとか悪いとか。どっちだ。

 

「……魔王の件は、まだ聖護士とか極一部しか知らないみたいですし、やっぱりそんな危ない所に行く必要無いんじゃあないですかねぇ」

 

「ふむぅ」

 

 

 魔王は少し考える。周囲からは、癒しを与える様な小鳥の囀ずる鳴き声が聴こえる。

 

「つっても、広まるのは時間の問題だぜぃ。

 ほれ、八区の町で、聖護士二人が盛大に魔王だの叫んだからな。噂は広まるもんさー」

 

「……ですかねぇ」

 

 それなら五区も同じじゃあないだろうかと思うが、まぁピスケラさんを信じようかなとアクルは思う。

 

 

 どのみち、他の区に行って……十二聖護士と出会ったら、今度こそ終わりであろう。今回の件で、勝てない事が嫌という程にわからされた。まぁ、元々勝てると思っていた訳では無いのだが。

 

 

 十二聖護士とは、力無く自分の身すら守れない者達の為に立ち上がり、己を鍛えぬいた者達から選び抜かれた、精鋭十二人の戦士達である。

 

 

 いくら魔王の凄い力を手に入れたからといって、ケンカもろくにした事が無い女子中学生が勝てる様な相手なはずがないのだ。

 

 

「……どうすれば、強くなれますかね?」

 

 やはり力を使いこなしたりとか、必殺技的なのとか必要なのだろうか。

 

「んー、そうさねぇ。まぁなんにせよ、覚悟とかかな」

 

「覚悟、ですか……」

 

「おうよ。強い奴らは皆これが出来てるからな。無いと、同じ土俵にすら立てやしないさ。」

 

 

 アクルは、少し黙った。覚悟……なんて出来ない。痛い思いするのも怖いし、殺したり傷付けるのも嫌だ。

 

「……あたしには、きっと無理ですね……。戦うの、怖いですし」

 

「ん。それでいいさ」

 

 そこで区切って、魔王は続ける。

 

 

「怖いと思うのは恥ずかしい事じゃあないさ。戦うのはみんな怖いもんだ。

 あのプリキュオンのお嬢様だって、闘鶏(バイオレンス・チキンヘッド)と戦う時ゃ怖かっただろうし、ピスケラの奴だって戦う事に恐怖くらい感じるだろうよ」

 

 

 それは嘘だろうとアクルは思う。プリキュオンのお嬢様はあんなに自信満々だったし、ピスケラさんなんて、あの十二聖護士だ。

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