「………………ん」
樋山 アクルは、少し埃っぽい山小屋の中で目を覚ました。いつぞや見た様な景色だと思う。
まだ霧がかかったような頭を動かし、少しばかり視線を泳がせて見ると……少し離れたところで一組の若い男女が話しているのが見えた。
男性の方は、白いワイシャツ的な上着と銀のネックレスに黒いジーパン的な服装。
顔は所謂イケメン的な感じだが、チャラそうだと魔王が言う。黒っぽいヘアバンドと、ツンツンした茶髪が特徴的である。見た感じ、高校生くらいだろうか。
もう一人の少女の方は、小柄でふんわりした感じの、ウェーブヘアーの長い金髪が特徴的である。
雪国から来たかの様な服装をしているが、それでもとても綺麗な白い肌をしているのが伺える。まるで、お人形さんの様な雰囲気を持つ、抱き締めると壊れてしまいそうな美少女である。
ふと、お人形さんの様な少女がアクルを、その紫の瞳を向けたために視線が重なった。
「おー、起きた見たいだぞっ! ユークリッド、見ろ見ろっ!」
「おー?おお、おはよさん。大丈夫か?」
目覚めたアクルに二人が微笑みかけて、アクルはぼんやりする頭をおさえながら起き上がった。
「おおっ、良かったなっ。無事そうでなによりだぞっ」
お人形さん的な少女が立ち上がり、人懐っこく笑いながら……妙な口調でアクルに近寄る。背は低いが、アクルよりかは高い。
「……あ。えっと」
なんでこんな所にいるのだろうかとアクルは小首を傾げる。記憶がだいぶ飛んでいた。
魔王と、恐怖がどーこーな話しをした辺りまではギリギリ覚えているが……。
「よう、どうだ? 意識はハッキリしているかい?」
軽そうな男性が、そう言って、手をアクルの目の前でヒラヒラさせた。
「あっ……。えと、大丈夫です。その、あたしに何があったんでしょうか……?」
その発言を聞いて、二人が顔を見合わせる。
「ああ、何か崖下の近くで倒れてたんだよお前」
軽そうなイケメンが笑いながらそう言って、お人形少女が愉快そうな笑みと口振りでアクルに問う。
「お前アレだろっ。なんか、変なキノコ食っただろっ。味はどうだったのか聞いておくぞっ!」
その発言に、男の方が軽く吹き出して、アクルは少し思い出す。確か、魔王が食べれるとか自信満々に言ってのけたので、そう言えば食べた。
「絶対それが原因だぞっ! お前気絶しながらも訳の解らん事を呟いてたからなっ!」
はぁ、とアクルは呟く。どうやら毒キノコだったらしい。
……………… 魔王さんのウソつき。
「で、味の方はどうだったんだ?」
軽そう男に問われて、アクルはえっと、と呟き。
「まぁ、美味しかったですかね……?」
その発言に、二人は顔を見合わせた。
「マジかっ。いや、美味しいらしいとは知ってたけどなっ! そっか、美味いのか、私食べてみようかなっ?」
「やめとけやめとけ、命に別状が無いって言われてるけど、普通に危険だぜ?」
軽そうな男が苦笑混じりにそう言って。
「だいたい、とんでもねぇ醜態晒す事になるぜ?」
「自分の部屋なら大丈夫だぞっ。多分なっ」
「やめとけやめとけ、部屋滅茶苦茶になるぜ?」
やれやれと軽く首を振って、軽そうな少年はアクルに視線を投げた。
「おお、そうだそうだ。
オレはユークリッド。そっちのちんちくりんはエリダヌスって名前なんだ、君はなんて名前だい?」
「あ……えと、アクルです。」
「アクルかっ! 可愛い響きだなっ、いい名前だと思うぞっ!それとユークリッド、ちんちくりんとか言うなっ!」
エリダヌスという人形の様な少女の妙なテンションに、アクルは微妙に困惑する。
「こりゃあ、一区人だな」
魔王が頭の中でそう告げる。
「スゲー綺麗な容姿だろ? ああいうのを、『一区美人』っていうんだぜ。多分、この前に見掛けたメリーってガキも一区人だな」
成る程とアクルは思う。そう言えば、服装もそれっぽい。気がする。
「あと、一区人はなんか知らんが、語尾を強調する事が多いらしいな。一区訛りって奴だそうだ」
魔王の解説を聞きながら、アクルはエリダヌスの方を向く。
黙っていると物凄く可愛いらしく、大人しそうで儚げな印象だが、喋るとコミカルというか……なんだか……
「残念な美少女だよな」
そう言って、魔王はゲラゲラ笑ってアクルは苦笑を浮かべるのだった。