薄幸の堕天使   作:怒雲

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突如現れた男に対して、全力で露骨な塩対応をするフルールド。

 

 

「そんな事を言わずに助けてくれよぉ!」

 

 両手でガシッとフルールドの華奢な両肩をつかむ男に対し、フルールドは若干不愉快そうにする。

 

「えぇ~……そんな事を言われまひてもねぇ~」

 

「そんな釣れないこと言わないでおくれよ!僕と君の仲だろう?」

 

「……あれれぇ? 私と貴方って、知り合い以上の仲でしたっけぇ?」

 

 

 言い合う二人をよそに、紅茶飲んでたら茶菓子的なのが欲しくなったスネルフは、カウンターの奥に無断でズカズカと入って行く。

 

 そして、勝手に戸棚を開けて中を漁り始めた。

 

 

「おいおい!ベッドであんなに愛し合ったじゃないか!」

 

「愛し合ってません~。快楽を貪り合っただけですぅ。

 ていうか、一人で盛り上がってただけじゃあないれすかぁ、私はぜんぜぇ~でしたしぃ。離せよ~早漏野郎~」

 

 

 何やらアレな会話をしている二人のところに、ポッキーみたいなお菓子をくわえながらスネルフが戻って来た。そして口を開く。

 

 

「おい。これ貰うぞ。」

 

「うっげぇ~既に食ってる~。貰うぞとか言いながら既に貰ってるぅ~。

 スネルフくぅん、助けてくらさいよぉ。」

 

 

「知るか。てめぇの客だろうが」

 

 

 ぶっきらぼうに言いながら、スネルフはまた奥に引っ込んで行ってしまった。

 

お菓子は無断で貰う。しかし助けない。

 

 

 

「むぅ。このままだとスネルフ君におやつ食べ尽くされてしまいますねぇ~。

 あぁ~……薬がキレてきたぁ~」

 

 

 フルールドの目が僅かに普通の人っぽくなっていく。どうやら危ないお薬の常習犯らしい。

 

まったくもって、意外な話である。

 

 

「またベッドで可愛がってあげるからさ~助けてくれよぉ~」

 

「ちぃ~……下手くそが一丁前にぃ……仕方ないですねぇ、埒があきまへん~……」

 

 

 はぁ、と気だるげにタメ息を吐き出して……フルールドは、大きく口を開いた。

 

そして、開いた自らの口の中に片手を突っ込み、男がギョッとて思わず手を離し後退る。

 

 

 彼女の腕は、肘の近くまで口の中に入っていた。

 

 

「んっ。んぐっ、んげっ、あー、んべぁ。 ……はい、これあげまひゅよ」

 

 

 何やら、手のひらサイズのビンを渡され、男はおずおずとそれを受け取る。ねちょっとしていた。

 

 

「それさえ飲めばぁ~貴方は~強くなーるぅ~」

 

 

「ククク、やったぁ。よぉーし。」

 

 

 若干引いていたものの……強くなると聞いて、男は蓋を開けて中の液体を迷う事なく勢いよく口にいれた。すると……。

 

 

「ふぉ……ふぉ……フォーイ! まるふぉーい!」

 

 

 どんどん男の身体がでかくなり、筋肉におおわれて行く。

 

 

 やがて、先程より二回りくらいの巨大さになり、男は白目を向きながら恍惚とした顔をしていた。

 

 

「ち、力が……! 力がみなぎる! たぎっていくー! 今の僕……否、今の俺なら今まで出来なかったあんなことやこんなことだって!」

 

 

 もうなにも怖くない!そう叫ぶや否や、男は出入口へと走り、そのまま出て行ってしまった。

 

 

「あっ!金ー!代金おいてけばかーっ!」

 

 

 フルールドが叫ぶが、もう男は外にいるので聞こえちゃいないだろう。

 

それ以前に、男は舞い上がっちゃってますね~私!な状態の為に耳元で叫んでも変わらないだろう。

 

 

「ちっくしょ~……まぁ、いいれしゅよぉ。生きて帰って来たら金払ってもらいましょ~」

 

 

 呟きながら窓から外を見てみると、何やらマッチョになった男が、カンフーやってそうな服をした眉毛の太いおかっぱ黒髪の男と対峙しているのが見えて、フルールドは窓際に移動する。

 

 

 ちなみに、マッチョになった男はまだ筋肉が成長だか膨張だかしているらしく、さらに巨大化し衣服を突き破っていた。

 

 ズボンも破けたが、大事なところはセーフであった。

 

 スネルフは、フルールドが見学に行ったのを見て興味を持ったのか窓際まで歩いて行く。

 

 

「……アレ、副作用あるやつだろ」

 

「ありましゅけどぉ、大丈夫ですよー。」

 

 

 副作用があるのに何が大丈夫なのかは不明だが、それはさておき成り行きを見守る二人。

 

 

 マッチョになった男は、カンフー男に対してパンチを放つが、あっさり懐に入られタックルをされてしまう。

 

 

 その後、壁に激突し……口から血へどを撒き散らしながら崩れ落ちるが、そこからめちゃくちゃに蹴り潰されてしまい、数分程で壁の染みになってしまった。

 

 

「おい。」

 

 スネルフは思わずフルールドに視線を向ける。

 

「あの薬(ドーピング)全然役に立ってねぇぞ。不良品かよ。」

 

「そんなはずないれすぅー。アイツがザコいだけですぅー。あいつってほんとバカ!」

 

 

 ずいぶんと酷い言われようである。なんというか、哀れだ。

 

文字通り死人に鞭を打つような暴言は、まだまだ続く。

 

「ギリギリギリギリ。結局ツケ貯めるだけ貯めて死にやがったですよぉ、ギリギリギリギリ。ちくしょお~。ちっくしょお~」

 

「……ずいぶん嫌ってんな。」

 

「そりゃあ金払わない客れしゅからねぇ。嫌いにもなりましゅよぉ~。

 行為の際も、下手くそなくせにいちいち『気持ちいい?ねぇ気持ちいい?』とか耳元で何度も何度も聞いて来て、挙げ句、いれたらすぐに出してはてやがりますもんよぉ~。」

 

「そうか。テメェにゃぴったりだ。」

 

 

 やれやれとスネルフは肩をすくめて、まだ愚痴ってるフルールドに対し真面目な顔をして尋ねる。

 

 

「ま、そりゃあもういい。……んで、仕事の話しなんだが────」

 再び、バターンと乱暴に扉が開き、スネルフは若干うんざりした表情で扉を見る。

 

 

 するとそこには、さっきの早漏マッチョになった男を惨殺した男が立っていた。

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