薄幸の堕天使   作:怒雲

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凶刃

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここいらに落ちたと思うんだよねぇ……」

 

 先程までアクルと戦っていた青年、トライアングルとドルドォは、少女が落下したであろう崖下まで来ていた。

 

なにかが落下したような跡を見付けて、二人はニヤリと笑う。

 

 

「ぐふっ、ぐふっ……きっと、近くなんだな。」

 

 

 そんな会話をしている二人の視界に、人影が映りそちらに目をやると。

 

 

「ねぇ、アンタら。ちょいと聞きたいんだがねぇ。」

 

 

 女が、一人いた。和風な、花の模様が施された着物姿の女だ。

 

 

 長いきつね色の髪と、狐の耳。それに、狐の尻尾。

 

 

人ではない。つまり、魔族である。

 

 

「…………魔族だぁ。」

 

「ぐふふ、魔族なんだな。」

 

 

 

 

 二人はニタリと笑いながら魔族を見る。顔には狐の面を被っている女性。

 

お面は下半分が割れており、その口元は綺麗な肌と形をしていた。

 

 

「仲間とはぐれちまってねぇ……他に魔族を見なかったかい?」

 

その言葉に、二人は笑みを強くする。そうか、仲間がいるのか。

 

じゃあ今日は、いっぱい遊べるな。

 

 

「……ああ、見たよ。」

 

 

 ニヤニヤ笑いながらそう言うと、へぇ、と狐の魔族は嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

 

「いいねぇいいねぇ。是非とも聞きたいねぇ。」

 

 

 狐の尻尾を揺らしながら、魔族の女は無防備にヘンタイコンビに近付いて行く。

 

仮に敵であるはずの人間に対し、異様にも見える行動。

 

 

しかし、二人は特に、なにも思わずその行動を眺めて。

 

 

「……ああ、ごめん。やっぱり嘘。」

 

 

 ニヤリと笑って、トライアングルはその剣を振った。

 

 

「あっ……ごふっ……!」

 

 

 振り抜いた刃は魔族の腹を裂き、その腹から内臓が飛び出して、女は口から血反吐を吐きながら膝を着いく。

 

 

「ぐふっ、トライアングル。ズルいんだな。オラもヤりたいんだな。」

 

 

 

 笑みを浮かべながら、女に近付くドルドォ。対する魔族の女は……口から血をダラダラと垂れ流しながら、笑っていた。

 

 

 

 

 

「…………!?」

 

 

素早く、女が動いた。どう見てもまともに動けるはずのない程の重傷なのにも関わらずだ。

 

 

突然の事に意表を突かれ───なんとか防御の体勢に入ろうとするドルドォだったものの。

 

 

 

「ぐぶぇっ!?」

 

 

 防御は間に合わず。魔族の女が手を振ると、ドルドォは同じ様に腹を裂かれた。狐の魔族の手には、剣が握られている。

 

 

 鋭い切っ先を持つ片刃の剣。刀、というよりかは、大きな肉屋の包丁といった形状の剣。サラワーと呼ばれる物である。

 

 

「な……お、オラの……はら、ガッ!?」

 

 

 喉に熱を感じた。女の刃が、ドルドォの喉を貫いていた。

 

 

大きく仰け反り、そのまま巨体は地面へと倒れる。

 

 

そんな様子を、トライアングルは冷めた目で眺めていた。

 

「…………あーあ。ドルドォ、死んじゃったかぁ。」

 

 

 ドルドォの亡骸を見て、残念そうに呟いた後……その刃で遺体の首をはねた。

 

 

「あ~……いい感触」

 

うっとりと笑うトライアングル。

 

それから彼は、女に向けて笑みを浮かべる。

 

 

「それで、なんで君も死なないの? もしかして、さっきの女の子みたいに再生能力があるのかな?」

 

 その言葉に、女の狐耳がピクリと反応を示した。

 

 

「……そうかい。近くに、いるのかい?

 そりゃあいい事を聞いたよ!」

 

 

 腹からあれこれ出しながら、女が物凄い速度で急接近。

 

 

「……ッ!」

 

 

 先程以上の速度!思っていた以上の速度で近付かれ、トライアングルは驚きながらも剣を振る。

 

 

 刃が、狐の魔族の首半分に食い込むが……女は止まらない。

 

今まで、ここまで防御無視で襲ってくる奴なんていなかった。首さえ切れば動きは止まると思っていたが、女は止まらない。

 

「………くそっ」

 

 

振り上げた女の刃が──頭半分を縦に斬り裂く。青年はそのまま、がくりと膝を着き、止まった。

 

 

 

 

 

 

「…………おっと。」

 

 

 狐の魔族は、落ちた自分の臓物を、裂けた腹に捩じ込んでから満足そうに笑う。

 

 

「ククク……さぁて、鎌鼬の奴らと合流しなきゃねぇ。」

 

 

 その耳が、誰かが争う音をキャッチする。

 

仲間の声も聞こえる。女もまたそこに向かうのだった……。

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