少し玄関の方で止まっていると、すぐにリュエンはやってきた。
「やほー、OKもらって来たよー。
二人は何してたの? レズプレイ?」
そして第一声がこれである。
「リュエンはちょっと黙ってて欲しいわよっ!」
軽く怒鳴るラビィするとリュエンは………
「……………」
本当に黙った。この時リュエン、意外に素直!
まったくと一言、それじゃあ行こうかとばかりにラビィが扉を……人形騎士に開かせた。
「便利ですね」
思わずアクルが呟くと、ラビィはそうねと同意する。
「私の魔法は、『人形遣い』って言うのよっ。聞いた事は無いかしらっ?」
聞いた事あるはずがないアクルは、小さく首を振った。
「よーし街中だ! 野外プレイしたいね!」
するとどうしたことか。大人しくなったはずのリュエンが、突然騒ぎだしたではないか。
「リュエンは黙ってて欲しいわよっ!」
「ちょっと黙ったじゃん。もうダメー。」
ケラケラ笑うリュエンに対し、ぐぬぬとラビィは下唇を噛む。
「魔王さん、やが……」
「いやー、今日はいい天気だなぁ!」
魔王に聞こうとしたら、即座にはぐらかされてしまい、アクルの中にはモヤモヤしたものが残った。
……が、まぁそれはつまり、あの魔王から見てもろくでも無い話しなのだろうなとアクルは納得するのだった。
晴れた空。それなりに綺麗に舗装された路と、木で出来た家々。
都会と呼べるであろう街並み。見た感じだと、結構普通の街だという印象をアクルは受ける。
「ていうかさー、ラビィ。わざわざ騎士(ナイト)出す必要あるー? 僕もいるのにさ。」
「アクルちゃんがいるんだものっ。もしもの事があったら困るでしょっ?」
ふと後ろを見ると、うさ耳人形が後ろを歩く。それなりに大きな人形は、まさにガーディアンといった雰囲気を醸し出している。
アクル的には、リュエンも結構アレな人物だという印象があるので、そういう意味でもこの人形騎士があるのは心強い。
「これはいい感じに安心だな。」
魔王が、よかたいよかたいと笑う。実際に、人形騎士のお陰で誰も寄って来ない。
「…………」
アクルは人々を見ていた。簡素な衣服の人々が、ふらふらと歩いていたり、路地裏で酒を飲んでたり、袋に入っている片栗粉らしき白い粉を持ってたり、ニヤニヤしながら注射器を自分にうってたりと、なんだかアレな感じだ。
目が合うのが怖いアクルは、ラビィの方に、スススー、と移動する。
「僕の胸に飛び込んでおいでよ!」
それを見ていたリュエンが両手を広げて、アクルはビクッとラビィの後ろに隠れてしまい、ラビィは腰に手を当てながら溜め息をひとつ。
「あーもう、アクルちゃんは可愛いなぁ。」
「からかうんじゃあないわよっ! まったく……。」
アクルは、本当にラビィがいてくれて良かったと思った。
「まずっ、アクルちゃんの為に衣服とか買ってあげたいわねっ。」
ラビィに言われてアクルはふと思い出す。そう言えば、衣服とかをいれていた布袋が無い。
ヘンタイ二人組の時か、魔族との戦いの時か、崖から飛び降りた時か……。
「その外套があるから大丈夫じゃない。それ、水洗いで汚れや臭いを落とせるやつでしょ?
破けても、ある程度なら元に戻る魔術も施されてるみたいだし。」
「いやっ、外套だけでどしろってのよっ。ねぇアクルちゃん?」
アクルも当然ラビィと同じ事を思う。裸の上から外套を纏えとでも言うのだろうか?
「裸の上から外套纏えばいいじゃない。露出プレイも出来て一石二鳥だよ!」
言った。本当に言った。こいつはどうやら、アクルに裸マントの変質者に成り下がれと言うらしい。
「こいつ……一流のヘンタイだな……。」
口を開く度に、ヘンタイ力を上げていくリュエンに対し、流石の魔王も反応に困る。ヘンタイとしか言い様が無いのだ。
「こんなヘンタイの言う事は、聞かなくていいわよっ!」
ラビィが、ドン引きして青ざめているアクルの背中を片手に押しながら、歩く。
「無視よ無視っ!」
「放置プレイかい? 望むところさ!」
「なんやこいつ……。」
シカトされてもテンションが上がるリュエンに対し、どうすればこいつは盛り下がるんだと魔王は珍しく真剣に考え始める。
「とりあえずっ、ここらは寂れてるけどっ、南に行けばもっと栄えてるわよっ!」
ラビィが言う通り、南下して行くと結構普通そうな人々がいた。
基本的に黒髪率が高く、服装はやはりというか、簡素なものである。
「ここからもうちょっとで商店街よっ!」
「あ、あのお姉さん綺麗だなぁ~。受け派かな? 攻め派かな?
まぁ、僕はどっちでも器用にこなせるんだけどね!」
通りすがりの黒髪長髪の女性を見ながら、リュエンがぼやいて、ラビィが一瞬うざそうな顔をする。
が、気を取り直して再び歩きながら、ラビィは説明をする。
「とりあえず服とっ、お昼だしご飯も食べたいわよねっ。それから……。」
「お、あのお兄さんかっこいいなぁ。抱いて欲しい。あ、あのマッチョマンいいね!抱いて欲しい。」
ラビィの表情がうざったそうになる。リュエンは気にせずにキョロキョロしながら、少し遠くにある公園を見た。
そこには、青いつなぎの様な服を着た男性が、ベンチに腰掛けながら胸元のチャックを開いていて───
「ウホッ! いい男……。」
「ちょっとリュエンッ! うるさいわよっ!」
ついに声をあらげるラビィに対し、リュエンはクスクス鈴の音を転がした様にと笑った。
「あらら、もう放置プレイは終了かい?」
「ぐぎぎぎぎぃっ!」
ラビィが悔しげに歯軋りをして、アクルはまたもやオロオロあわあわである。