「はふぅ……。」
なんやかんやでいろいろ食べて、お腹一杯のアクルは歩きながら満足げに息を吐く。
「美味しかったねぇ。」
リュエンは軽く頷きながら、さて、とラビィの方を向き顔を見上げる。
「次は何処に行くの? ソープ?」
「そんな訳ないでしょっ……。」
そういう事しか頭に無いリュエンをよそに、そうねっ、とラビィは呟く。
「服の前に、術具を買いにいくわよっ! そろそろ買い足しときたいしっ。」
「ああ、火の術がもう切れそうだしね。」
術具という単語に、アクルは少し反応をする。魔王から、以前聞いた事があった。
今現在、羽織っているこの黒い外套も術具というものらしい。
「……高かったりするんですか?」
なんとなく高そうな気がして、アクルがラビィに尋ねると。
「高いのもあるしっ、安いのもあるわよっ!
今から買いに行くのは、そんな高いやつじゃあないわよっ!」
と、答えた。そういえば、この外套はかなり高いらしいという事を、アクルはなんとなく思い出した。
ラビィに促されるがままに歩きながら、街並みの景色をアクルはその大きな目に映す。
ここいらは活気があると言っていただけあって、人が多いい。五区の人々は、どうやら黒髪率が高いらしい。たまに灰色も見掛けた。
木で出来た建物達は、アクルでも一目でなんの店か解るものもあれば、ちんぷんかんぷんなものまで様々である。
「着いたわよっ!」
ラビィに言われて、ハッと見てみると、なんとなくお洒落な配色の二階建ての建物。民家くらいの大きさだ。
彼女が嬉々として扉を開いて入って行き、アクルもそれに倣った。
入って目に着くのは、カードである。丁度、トランプに使えそうなサイズのカード達が、木の壁に大量に張り付けてあった。
カードには、火や水っぽい物が描かれているものや、アクルには何が何だかな物まで様々である。
特に、所謂ショーケースに入っているカードは、文字ばかりだったり、よく解らない絵だったりで、アクルには判別がつかない。
魔王が、青眼の白龍とかないかなとか言っているが、なんのことやらである。
店の中から、なんとなく窓の外の景色をアクルはその大きな目に映す。
見える人達は、やはり黒髪率が高くてちょっぴり親近感。
この世界の人々の髪は、赤かったり青かったり緑だったりと、なんというか忙しないというか、やりたい放題というか。
魔王によると、魔力の質的なのが関係しているとかしていないとかだそうだ。どっちだ。
一応、髪の色は区によって少し違うらしい。八区は基本的に、金か白、灰色が多かった。赤髪のプリキュオンお嬢様は珍しいそうだ。
十二区は金か青が多かったと思う。
チラッとアクルはラビィの銀髪を見る。一区人は、金か白か銀なのかなとなんとなく思った。
……自分は、行く事があるだろうか。
「……おう。いらっしゃい。」
長い髪の青年が奥の部屋から現れた。
髪の色はオレンジである。なんとなく、五区の生まれの人間では無い気がした。
「やほーアメリオン店主。相変わらずイケメンだね!」
「リュエンにラビィ……。それと、新入りか?」
アクルの方に切れ長な目を向けて、少し訝しげな顔をするアメリオンと呼ばれた青年。
「あ、アクルです……えと、よろしくお願いします」
ちょっとビビり気味にペコペコするアクルに対し、アメリオンだと短く名を告げて、彼は灰色のローブのポケットに手を突っ込む。
「術具師アメリオンよっ! 基本的には術紙のエキスパートなのよっ!」
ショーケースのカードや、壁に張り付けてある綺麗なカードを見せながらラビィが説明をする。
「いい人だよー。ルックスもイケメンだ。」
「その情報はどうでもいいだろ。」
魔王がぼやく。アクルは、チラリとアメリオンを見る。確かに、かっこいい顔をしている。と、アクルは思う。
「イケメン……ね。まぁ、よく言われるからそうなんだろうな。
だがな……人間は顔じゃあねぇよ。顔が良くてもてんでダメな奴だっている。
……この俺が……そうであるようにな……。」
いきなり自虐な発言をするアメリオン。
「こ、こいつ……!」
魔王が驚きながら、声をあげた。
「し、死んでる……!(目が。)」
アメリオンは、死んだ魚の様な目をしながら、そう言ったのだった。