突然、なんか自虐的な話題を繰り出して来たアメリオン。
「えっ……えっ、えと……あの……」
そんな事を言われても、どう言えばいいのか分からない。反応に困ってオロオロするアクル。
「あっはっは、またアメリオンのネタが始まったー。」
リュエンがケラケラと笑いながら、術具達を見る。よくみると、カード以外の物も結構見受けられた。
とりあえず、リュエンとラビィの反応を見るに、何時も通りらしい。
「…………」
ラビィが少し何かを考えるような仕草をして、ぶるると少し身体を震わせてからキョロキョロした。
それから彼女は、アメリオンを見る。
「アメリオン店主。えっと、ちょっと手を洗いたいわよっ!」
「ん? ああ……好きにしろよ。」
店主に言われて、店の奥に向かうラビィ。
その姿を見て、リュエンはパッと顔を輝かせて近付いて行く。
「トイレだね? ラビィ、トイレだね!? どっち!? 小? それとも───」
言いかけて、リュエンは固まった。
ラビィは、人殺しの目をリュエンに向けていたからだ。流石のヘンタイ大明神も黙り込む。
「リュエンのバカッ! もう知らないわよっ!」
プンスカ怒りながら奥に消えていくラビィを眺めながら、リュエンはやれやれと肩をすくめた。
「何をあんなに怒っているのさ。」
「いや、逆になんで怒らないと思ったんだ……」
馬鹿なんじゃねぇかコイツと魔王は思う。アクルはもちろんドン引きだ。リュエンに対し、何回ドン引きしたか解らない。
「ああ、せっかくだ……ちょっと待ってな……。」
そう言って、アメリオン店主も店の奥に行ってしまった。
ラビィとアメリオン店主がいなくなり、部屋にいるのは……。
「これは────まずい!」
思わず魔王が警戒の声をあげた。何故なら今は二人きりだ。
「……………ふふふ」
よりにもよって、この男……リュエンと────。
「ふひひ。ようやく二人きりになれたねぇ、アクルちゃん?」
「ひっ、ヒェ~…あ、あたしに何か……?」
ニヤリと笑ってにじりよるヘンタイリュエン。
対して、後退りをするアクル。しかし、その華奢な背中はすぐに壁にぶつかって止まってしまった。
そう……ヘンタイ野郎を相手に壁に追い詰められてしまったのだ。
「まぁまぁ、そんなに怯えないでよ?」
「ひっ。」
アクルの……頭の横にある壁に手を起きながら、野獣の如き笑みをリュエンは浮かべて。
「パンツ見せて。」
「い、いやです……。」
そしていきなりこれである。アクルは、若干青ざめた表情だ。
「なんで? いいじゃん、減るもんじゃあないでしょ?」
「いや……減ると思います。その、心の大事な何かが、なんといいますか……」
だらだらと冷や汗を垂らすアクルを見て……リュエンは、ぷっ、と軽く噴き出す。
「あはは、ごめんごめん。アクルちゃんがあんまり可愛いから、ついつい、からかっちゃったよ。」
そう言ってリュエンはケラケラと笑う。女の子みたいな顔立ちの彼だが、この笑い方は普通の少年といった印象を受けた。
なんにせよ、下がってくれた事にアクルと魔王はホッと胸を撫で下ろす。
「いやぁ、アクルちゃんは可愛いなぁ。」
「……なにしてんだ?」
そんなやりとりの中、ようやく店の奥から訝しげな顔をしたアメリオンが現れて、アクルはまたホッと胸を撫で下ろした。
「ほれ。」
アメリオン店主が、アクルに何かを差し出した。
見てみると、それはシュークリームだ。
「わぁ……。」
あんまり食べる機会が無かったシュークリームを見て、アクルは顔を輝かせてアメリオンを見る。
「……やるよ。」
アクルはおずおずとシュークリームを手に取り、口に運ぶ。そして、ほんわかとした表情で口をモゴモゴさせた。
「アクルちゃんは可愛いなぁ。……僕の分もある?」
「ああ……。」
アメリオンはもう一個のシュークリームを手渡し、直後に奥からひょっこりと出て来たラビィにも手渡した。
「わぁいっ! ありがとうなのよっ!」
ラビィは大喜びでそれを受け取り、ほんわか顔でモグモグした。
「ラビィも可愛いなぁ。」
リュエンは笑いながら、壁に張り付けてあるカードを何枚か手に取る。
火のマークが描かれたカードをだ。
「これ買うよ。」
「ああ…。」
リュエンからお金を手渡され、確認してからアメリオンをそれをしまう。
「ありがとうございました。」
シュークリームを食べ終えたアクルが、キラキラの笑顔をアメリオンに向けて言い放つと、彼は軽く首を横にふり、笑う。
「俺みたいなクズに、お礼なんざいらねぇさ…。」
「えっ?……えと、あのぅ…………え?」
「俺は、クリームの入っていないシュークリームの様な奴なんだよ……だから、そんな役にたたねぇ男に礼なんて必要ないのさ……」
そんな事を言われても、アクルにはどう返せばいいのか解らなかった。