「んじゃあアメリオン店主、また来るねー。あ、その時は僕を抱くか、僕に抱かれるかしてね?」
「……気が向いたらな」
そんな日は来ないだろうが。
挨拶をそこそこにして、リュエンが店から出て行き、ラビィも、それじゃあねっ、と一言、手をヒラヒラさせて出て行く。
「あ……えとえと……。」
少ししどろもどろした後、アクルは意を決した様に背の高いアメリオンを見上げた。
「その、あたしにはよく解らないんですけどその……。
お店を持てるなんて、とても凄い事だと思います。アメリオンさんは、きっと凄い人ですよ。
あたしみたいな、何の才能も無い生まれてくるべきじゃ無かったような人間より、ずっとずっと……」
「アクルたんぇ……お前さんも自虐的だなおい……」
自分を扱き下ろすアクルに、魔王は大変微妙な気持ちになってしまう。
「…………」
アメリオンはしばし目をパチクリさせた後、やんわりと微笑んでからアクルの頭をポンポンと、軽く叩く。
「俺みたいなクズ野郎にありがとよ……でもな?
自分の事をそんな風に言うんじゃあない……。俺みたいな、掃き溜めに棄てられて虫さえたからないよつな、本当のクズなら話しは別だけどな……。」
「いえ、あたしは本当ダメでして……。」
「うん……。もう、やめろよ……」
謎の自虐合戦が始まり、それを最前線で聞かされる魔王は凄くなんというか……暗い気持ちになってしまうのでした。
嫌な自虐会議をそこそこに、アクルはラビィに呼ばれて店を出た。
アメリオンが、「俺みたいな、ごみ溜めに住む虫けらの糞以下の男の為に、時間をとらせて悪かったな。」 と、最後まで自虐っていた。いっそ、そこには何かしらの信念があったのかもしれない。
てぽてぽと、二人の後ろをついて歩きながら、アクルはふと浮かんだ疑問を口にする。
「そう言えば……あのえっと、その、お二人は何をしているんですか?
あの、えと……あたしを助ける依頼を受けたとか、そういう話しをしてましたけど……。」
所謂、何でも屋的なものでも営んでいるのだろうか。
「んー……そうだねぇ、自警団的な感じかな? 僕ら以外にもいるけどね、この街は広いし。」
「少なくともっ、この辺りは私達の管轄だわよっ!」
はぁ、とアクルは呟く。自警団……。
「後は、便利屋というか、何でも屋というか?
まぁお金貰って、いろいろやってるんだよ。」
リュエンが言って、そんな感じよっとラビィが頷いた。
なるほど、とアクルは思う。だからメリーさんはこの二人に依頼したのか。
……いやでも、何であたしを?
うーんと考え込むアクルだったが、ふと騒がしい声が聞こえて来てその思考は中断される。
「……わー、やーな予感。」
リュエンが軽く嫌そうに笑って、ラビィが眉を寄せた。
「アクルちゃんがいる状態だからっ、タイミング最悪だわよっ!」
「え? え?」
なんだろうかとアクルは思う。何人かの人々が走って来て、リュエンとラビィを見てから嬉しそうにその足を止める。
「おお、リュエン! ラビィ! いいところに!」
「ちょっと来てくれよ、大変なんだ!」
五区の住人にそう言われて、リュエンは、「あーあ。」 と苦笑を浮かべた。
その隣でラビィが何かをぶつぶつと呟く。足下に水面の様な波紋が浮かび、ウサギの耳を着けた人形の小さなぬいぐるみが姿を現す。
指を鳴らすと、ぬいぐるみが猛スピードで去って行く。
「ベアルの頭(かしら)達が来るまでに済めば上出来かな?」
ぬいぐるみを見送り、さて、とリュエンは歩き出す。
「気は進まないと思うけど、アクルちゃんも一緒に来てねー。」
「一人になるほうが危ないわよっ!」
二人に言われて、アクルは恐る恐る後を歩く。
何が起きてるのだろうかと、不安になった。