五区に来て。この街に来て初日以降は、今までに無いくらいに穏やかな日々だった。
基本的に、寝て起きて散歩したり買い物して寝るという日々だ。
それだけというのも何なので、アクルは料理等を作ったりしていた。
基本的に、みんなでローテーションでやっていたらしいが、アクルの料理が絶品だと大好評であった為に、料理当番を任される事になったのだ。
このまま何もせずにいるのも何だか落ち着かないものがあった為に、アクルとしては都合がいい。なにより、認めてもらえるというのは本当に気分の良いものである。
ちなみに、料理をする際に、どうしたらいいか解らなかったが、コンロみたいなのがあり、そこに何やらカードを差し込む場所があった。
ラビィによると、アメリオンから買ったカードを差し込んで、簡単に起動の為の言葉を喋れば、誰でも火を起こせるんだとか。
まぁ、一応は元の世界にいた時と同じ様な感覚で料理が出来た。元々、家でやっていたので、特に苦労は無い。
アクルとしては、とても充実した日々である。
「さて、どう思う?」
アクルが上の部屋で寝てる頃、居間にはベアル、キーレース、リュエン、ラビィの四人が揃って椅子に座りテーブルを囲んでいた。
それぞれのグラスには、安物の白ワインが注がれている。
「見た感じ……自分には、少し間の抜けている普通の少女という印象ですな。」
キーレースの言葉に、だよねー、とリュエンは笑う。
「メリーさんも、何を考えてるのやら。まぁ、あの娘は可愛いからいいんだけどさ。」
ラビィの作ったクッキーをとりあえずつまみながら、リュエンが笑う。
「んー。でもっ、アクルちゃんからは時々、壁みたいなのを感じるわよっ!」
ラビィの言葉に、キーレースはそうですな、と頷いてみせる。
「なんと言いうか……隠し事をしている様な。」
まぁ、こちらとしてはそれを言及する気は更々無いのだが。
「うん、そうだよね……僕も、アクルちゃんには警戒されてるみたいなんだ。」
「リュエンは言動と行動が駄目なせいに決まってるわよっ!」
「僕が現れる度に、アクルちゃんは何やら腕を畳んで手首を曲げて、そうだな……まるでカマキリの威嚇のポーズみたいな構えをとるんだよ。しゃーっ、とか言いながら。なんでだろうね?」
「だからっ、どう考えてもそれはリュエンの日頃の行いのせいだわよっ!」
相変わらずぎゃあぎゃあ言う二人を見ながら、やれやれとキーレースは苦笑まじりにグラスを手にとった。
「わっはっは! まぁ、よいではないか!訳ありであろうからな!」
ガハハと大笑いしながら、ワインをボトルのままグビグビ飲むベアルがそう言って、そだねー、とリュエンは呟く。
「まぁ、あと数日くらいの付き合いだしねー。」
「スネルフ殿が来られれば、また話しが変わるでしょうな。」
ふむ、とベアルは呟く。『鬼遣いスネルフ』 ……この五区においては、ちょっとした有名人だ。
「もうちょっとだねー。」
リュエンは呟いてから、大きくアクビをした。
軽く片手で目をこすり……それからゆっくりと席を立つ。
「さて、僕はもう寝るよ。ラビィ、おやすみのチューは?」
「そんなものは無いわよっ!」
ラビィをからかい、ケラケラと笑いながら、リュエンは自室に向かう。
それを見届けてから、ラビィも席を立つ。
「それじゃあ、私もねるわよっ!」
おやすみと一言、ラビィは二階へと。
それを見届け、ベアルとキーレースの二人はまた酒盛りを始めるのだった。