昼頃。アクルはラビィに連れられて、再びアメリオンの店を訪れていた。
オレンジのロン毛に灰色のローブと、いつもの格好で、椅子に腰掛けてタバコを吸っている。
「いろんなのがあるんですねー。」
なんとなくだが慣れて来たアクルは、興味津々に壁やショーケースに飾られた、火やら氷やら雷やらが描かれたカードを見る。
魔王が、一応解説はしてくれるものの……人間の技術はよくワカンネ!との事であった。
「日常品から護身用。工作用もある。本格的な戦闘用もな……。」
紅茶を淹れながら、アメリオンは気だるげにそう説明し、アクルにひとつ、カップを差し出す。
「あ……えと、ありがとうございます。」
ズズー、と紅茶を飲むアクルを、アメリオンは眺めた。
なんというか……無防備である。本当に、五区の外から来たんだなと思う。
少し考えて……アメリオンは壁にかけてあるカードを数枚手にとって。
「……やるよ。」
短くそう告げて、その数枚を差し出す。
「……え?」
差し出された何枚かのカードを見て、アクルはキョトンと目を丸くした。
「お前、危なっかしいからな……護身用にとっとけ……。
気に入ったら、買いに来い……催促用ってやつだ。」
「……あ。」
半ば押し付けるように手渡され、アクルはおずおずとそれを受け取り、照れた様に。そして申し訳なさそうにしながらも背の高いアメリオンを見上げて、ちょっと笑みを浮かべた。
「あ、えと……あの、なにからなにまで、えと、ありがとうございます……」
「…………損して得とれって奴さ。ま、俺みたいな酒瓶のそこにわずかに付着して臭いを放つカスみたいな野郎の術具がどの程度役に立つかは知らないがな。」
そして、返ってきた返答は相変わらず自虐的だった。
「アメリオンは相変わらず暗いわよっ……」
そんな様子を見ていたラビィが、少し呆れたように呟く。この街にいる術紙師の中でも屈指の実力者なのだから、もっと胸を張ればいいのに。
言われたアクルちゃんも困っているわよっ。
「あ、いえ……そんな……アメリオンさんは凄いと思います、えへへ。
あたしみたいな、生まれて来た事がそもそもの間違いだったようなやつと違って───」
「あー、もうっ!他人を上げる為に自分を下げないのっ!」
そしてまた謎の自虐合戦が始まりそうだったので、ラビィは両手をパンパンと叩いて会話を中断させる。聞いてるこっちまで暗くなるわよっ!
それから、使用する為のカードをいくつか持って行き、財布を取り出す。
「アメリオンは凄いしかっこいい顔してるんだからっ、もっと自信を持つのよっ!」
「オレは凄くもないしダメな男なので失礼する……」
「ちょっ、まっ、失礼するなわよっ!お金お金っ!お金受け取って行きなさいだわよっ!」
そんなやりとりを終えて……ラビィはアクルと共に店を後にする。なんでか知らないけど、ちょっと疲れたわよっ。
「さて……買う物も買ったし、ご飯食べに行くだわよーっ」
先程買ったカードの束を、ラビィは軽く何もない虚空に放り投げる。
すると、水に落ちた波紋の様なものを空間に残して、カードは消えた。
召喚術というやつらしい。とても便利だとアクルは思う。
あれは自分も覚えられないだろうかと思うが、魔王曰く、そもそもやり方が分からないし、解っても多分無理との事である。
生まれついての能力持ち……異能力者は、不思議と魔術等を覚える事が出来ないらしいというのを思い出して、少し残念だと思うのだった。
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