拠点に帰って、アクルは一息ついていた。
今はラビィと二人きりだ。リュエンはカリブディーとバーベキューしてるらしく、ベアルとキーレースは別の所にいるらしい。
「んー!美味しかったわよっ!」
アクルの作った料理を平らげて、ラビィは満足そうに笑った。
「あ……えと、良かったです、えへへ……」
照れて微笑むアクルを見ながら、うんうんとラビィは頷く。
「あ、片付けは私がやるわよっ!」
「あ……い、いえ、あたし、お世話になりっぱなしですし……」
「いーのいーのっ!私がやりたいのよっ!」
笑顔で席を立つラビィ。……ここに来て、アクル的には一番お世話になっているのがラビィであった。
ベアルとキーレースは、基本的に最低限しか会話はしない。邪険に扱われてるとかでなく、たんにそういう距離感という感じだし、アクル的にもどんな話をしたらいいのか分からないのでこれで良いと思う。料理とかは、普通に誉めてくれるし。
リュエンは……よく話し掛けてはくれるが、まぁ、なんというか……嫌いでは、ないのである。嫌いではないのだ。ただセクハラが嫌だし、こう、なんか……面倒臭いのである。魔王も、あいつは苦手だし教育に悪いからあんま関わらんほうがいいぜと言っていた。
「まったく、アクルたんは下手すりゃ赤ちゃんの作り方すら知らないっぽいってのに……」
「いや……授業で習いましたし、普通に知ってますよ……?」
なんて会話をしたりもした。……なんというか、そんなに自分は子供っぽいのだろうかと流石にちょっとショックであった。
そしてラビィは、基本いつも一緒にいてくれるし、話し掛けてくれるし……本とか貸してくれるしで、甲斐甲斐しくお世話してくれる。
それがアクル的には嬉しくて───申し訳ないのである。
自分なんかの為に、時間や気を使わせてしまっているのが。
それが、メリーから頼まれたお仕事なのは解っている。わかって、いるのだけれど。
「……ラビィさんは」
「うんっ?」
「その……どうして、こんなによくしてくれるんですか?えと、お仕事なら、守ってくれて、ここに居させてくれるだけでも……」
「…………」
ラビィは、伏し目がちなアクルを眺めて、ふむ、と少し考える。考えて……。
「……あ、迷惑だったかしらっ?」
少し寂しげに笑って、そう尋ねてみた。
「えっ……ちがっ!」
即座に血相を変えたアクル。……実は予想していた反応で、ラビィはクスクスと笑った。
「そんなつもりはないって解るけどっ、そう聞こえちゃったりもするわよっ!」
クスクスと笑ったままに、安心させるようにラビィはアクルの頭を撫でる。
少し恥ずかしそうに、でもちょっと嬉しそうにアクルはされるがままにうつむく。ええ子や……とか魔王が言っていた。
……年齢より、子供っぽい子よねっ。見た目通りというか……。
「そうねっ、お仕事なのはもちろんだけどっ……まぁ、どうせなら楽しいほうがいいわよっ!それに……」
メリーから聞いているので知ってる。理由は分からないが、この子は魔族に狙われていて……何故か、人々の場所にも居場所がないらしい。
────他人事じゃあ、ないのよねっ……。
「そのっ、ねっ。アクルちゃん、私も昔───」
言葉の続きは───突然鳴り響いた鐘の音に打ち消された。
「………っ、な、なんですか──!?」
明らかに、異常な音にびっくりして動揺するアクル。
対してラビィもまた、目を見開いていた。
「………───警鐘」
敵襲?ここに?異常事態……とにかく!
「アクルちゃん!」
「ひゃい!?」
両肩を掴まれて、アクルは驚き、背中のみつあみを跳ねさせる。
ラビィは、真っ直ぐにアクルを見詰めて言葉を続けた。
「いい?ここはっ……とにかく!ここは安全だと思うわよっ!だから、ここにいてっ!絶対に出たらダメだわよっ!」
「えっ……あ、ラビィさ………」
ポンポンと軽くアクルの頭を叩いて、ラビィは笑う。
「ちょっと、行ってくるわよっ!お話の続きは───私が生きてたらっ!」
そして少女は、長い銀髪を靡かせ身を翻す。
「ラビィさん!」
制止を聞く事なく、ラビィはそのまま出て行き……夜闇の中に姿を消すのであった。