疾風に乗せて   作:狭間です

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 新年あけましておめでとうございます。初っ端から日本は色々と大変ですが、少しでも皆様の娯楽になれたら幸いです。今年もよろしくお願いいたします。


【11】青葉城西戦(2)

 

 

 

 

「ま、待て影山! 気持ちは分かるが抑えるんだ!」

 

「ーー……まだ、……何も言ってませんけど」

 

 最早暴力事件を起こしそうな勢いである。翔陽のフルスイングサーブを後頭部で受け止めた影山は、一セット目が終わったというのに一向にそこから動きを見せない。

 

「ブッハー!! うぉい後頭部大丈夫か?!」

 

「ナイス後頭部!!」

 

「ちょ、お前ら煽るんじゃねぇよ!!」

 

 ナチュラルに爆笑している田中先輩、煽る月島。試合中にずっと我慢していた影山は、遂にそれが我慢できなくなったらようでゆっくりと翔陽に向かって歩いていく。

 

 

「まま、ま、待って、話せばわかる」

 

 ひたりひたりと翔陽に近付く影山。辺りの温度が数度下がったようなその雰囲気に誰もが息を飲む。俺はと言うと、暴力沙汰は勘弁してくれよと思いながらその様子を見守る。一応何時でも止めに入れるよう準備くらいはしておくか。

 

 

「ーー…………お前さ」

 

「ッ……ハイ」

 

「一体何にビビってそんなに緊張してんの?? 相手がデカいこと? 初めての練習試合だから?」

 

スパァン

「俺の後頭部にサーブをぶち込む以上に、怖い事って何??」

 

「ーー……とくにおもいあたりません」

 

スパァン!、スパァン!!

「ならもう緊張する理由は無いよなぁ?? もうやっちまったもんなぁ、一番怖い事??」

 

 自らの頭を叩きながら、影山は懇切丁寧に説明していく。

 

「……それじゃあ、とっとと通常運転に戻りやがれバカヤローーッ!!」

 

「…………アレ? 今のヘマはセーフ?!」

 

「はぁ?! なんの話だ」

 

 影山は言いたいことを言い終えたようで、次のセットに向けて水分補給をしにベンチへと戻ってきた。

 

 おおかた翔陽は自分のせいでセットを落としたから影山に見捨てられるんじゃないかと思っていたのだろう。結果的にそれは免れたものの、自分がやった事の責任が無くなる訳ではない。安堵と緊張、後悔など様々な感情が入り交じって肩を落とす翔陽。

 

 それに向かっていくのは田中先輩、俺が何かを言わなくても彼ならどうにかしてくれるだろう。

 

 

「影山、本当に後頭部大丈夫か? いくら翔陽のサーブとはいえ予想してない衝撃は結構危ないぞ」

 

「ハッ、アイツのヘボサーブで首いわす程弱くねぇよ」

 

「マジで無理だけはすんなよ」

 

「おう」

 

 

 第二セットを始めるという合図がかかった頃、ちょうど田中先輩の励ましも終わったようで翔陽の顔には先程までの緊張は見られなかった。

 

 何処かで聞きつけたのだろうか、青城の生徒達が体育館のアリーナに集まり始めていた。これから面白いことをするのだから、どうせならギャラリーは居た方が良い。例え自チームの応援ではなくとも、俺は人に見られているという状況が好きなんだ。

 

 

ドッ!

「月島!」

 

「っ!」

 

「影山カバー!」

 

 相手の速攻をレシーブしたものの、月島の返球は綺麗に帰らない。本来ならば高身長で地上戦が苦手であるMBの代わりにリベロが入るのが主流であるが、現在烏野にはリベロが不在。どうしても守備面の粗が目立つ。

 

「オーライ」

 

キュッ ゴッ

 

 それでも、レシーブが高く上がってしまえば影山にはあまり関係が無い。

 

ビッ!

 

 ドッ バンッ!

 

 そう、どんな所からでも速攻に持っていく事が出来る影山には。

 

 

「「っしゃ!!!」」

 

「ア゛ッシ!!」

 

「よっしゃぁ!」

 

「やんじゃねぇの」

 

「……出たよ変人トス&スパイク」

 

 ようやく本調子を取り戻した翔陽と、そこから繰り出される見たことも無い攻撃に味方だけでなく観客からも声が上がる。

 

「おい、翔陽、影山。さっさとこっち来い」

 

「「?」」

 

「せーの!」

 

 オォーーッシ!!

 

「……!! ち、チームっぽい……!」

 

「〝ぽい〟じゃなくて、チームだろうが」

 

「っ……!! おう!!」

 

 バレーと言えばこれだな。一点の喜びをチーム全員で分かち合い、例えミスをしたとしても一人の責任にはしない。一セット25点という限られた枠内で様々な駆け引きやドラマが生まれるのがこのスポーツなんだーー

 

 

 

「チャンスボール!」

 

「オーライ!」

 

「また速攻だろ?! 来ると分かってれば怖くねぇんだよ!」

 

「なんだとおらぁぁ!!」

 

ビッ

「?!」

 

「待ってましたァァァ!!!」

 

 翔陽の強烈なスパイクが目に焼き付いていた相手ブロッカーは、易々と速攻に釣り出される。そんな大きな隙を影山が見逃すはずも無く、平行気味のトスがレフトへと綺麗に伸びて行った。

 

「ごっつぁん!!」

ドゴスッ

 

 独特な掛け声と共に放たれたスパイクは、一枚弱のブロックを力強く撃ち抜いた。

 

「うわぁぁ! おれ打つ気満々で〝なんだとぉぉ!〟とか叫んじゃったよ、ハズカシー!!」

 

「ソレで良いんだよ、お前が本気で跳ぶから相手も釣られて跳ぶんだろ」

 

「お前の速攻は読みで跳ばないと間に合わない速さだからな、Aパス帰ったらほぼ誰かしら決める」

 

「……そういうモン?」

 

「「そういうモンだ」」

 

 その後も翔陽はレシーブ面でのミスは目立つものの、攻撃面ではその実力を遺憾無く発揮し、影山のトスワークも相まって面白いように得点が積み重なって行く。

 

 特に俺、影山、月島が並んだ時のブロック決定率は異常だった。強豪出身かつ身長もそこそこ高めの俺と影山。烏野一のタッパを持ち、四体四の時は腑抜けたブロックを見せていたもののちゃんとやればブロックの精度が高い月島。

 三人が並んで出来上がった壁は壮観の一言だろう。隙間なく綺麗に創られたソレは、相手のスパイクを触らずに通すことはもちろん、決められることは一度も無かった。

 

「ちょっと、今止めたの僕なんだけど」

「あ゛?! 俺の手にも当たった!!」

「ホント飽きねぇなお前ら」

 

「おい、いい加減にしろ!!」

 

 ブロックする度に喧嘩するのは辞めて欲しいが、お互い競い合うように精度を上げているため(見ているのが面白いという理由が八割だが)止めるつもりは無い。

 

 

第二セット終了 25-22

 

 最後は翔陽の速攻が決まり、烏野は第二セットを取り返す。

 

 

 

「おっしゃぁぁあ!! このまま最終セットも取るぜぇ!!」

 

「……青城に影山みたいなサーブ打つ奴いなくて助かったな」

 

「……あぁ、ウチはお世辞にもレシーブ良いとは言えないからな」

 

 

「「油断したらダメです(っス)」」

 

 2セット目を取り返し、安心しかけていた澤村先輩と菅先輩両名に待ったをかけるのは俺と影山。例の人が未だ出てきていない気味の悪さを感じつつ警告をする。

 

「多分……ですけど、向こうのセッター、正セッターじゃないです」

 

「えっ?」

 

「俺らを出せって言った張本人がまだ来てませんからね、警戒するに越したことはないっス」

 

「……わかった」

 

 俺らの言ったセリフを聞いてチームの士気が若干下がろうとも、無警戒であの人の相手をするのは容易ではない。出てこない可能性もあるだろうから、今は頭の片隅にでも入れておけば良い。

 

 

 

「そうだ影山、次のセットで試したい事あんだけどよーー」

 

 2セット目を通して翔陽を絡めた攻撃を見ていた俺は、影山にこっそり耳打ちをする。

 

「ーー?! お前ぶっつけでそんなことやるとか頭おかしいのか?!」

 

「お前の実力ならできるだろ、……それに烏野をナメ腐ってる青城の奴らに一発食らわせてやりてぇンだよ」

 

「……どうなっても知らねぇぞ」

 

 

 その答えが聞ければ問題ない。

 

 

 俺と影山の能力ならば、その場で思いついた突拍子もない攻撃を現実にできるだろう。

 

 

ピーーッ!!

 

第三セット開始

 

 

「アララッ、一セット取られちゃったんですか!」

 

 開始の笛が吹かれた直後、気の抜けるような声が体育館に響き渡る。

 

「おぉ、戻ったのか! 足はどうだった!」

 

「バッチリです! 軽い捻挫でしたし、もう通常の練習イケます!」

 

「まったく……気をつけろよーー」

 

 

「及川」

 

 

 悠々とした足取りでやってきた男は、影山の先輩、そして俺との腐れ縁を持つ及川徹その人だった。

 

 




 次回、主人公今後の得意技が明かされます。乞うご期待。
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