疾風に乗せて   作:狭間です

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 瀧狼さん、博多メロンさん評価ありがとうございます! 最近板タブを買ったので、もしかしたら挿絵とか描くかも知れません。予定は未定です。


【7】ようこそ

 

 

「……いいか。打ち抜けないなら、躱すぞ。お前のありったけの運動能力と反射神経で俺のトスを打て」

 

「はァ?! それ速攻の説明かよ?!」

 

「? わかった!!」

 

「うそつけわかってねぇだろ!!」

 

「「とりあえずやってみます!」」

 

「〜〜っ!」

 

 どこからその自信が湧いてくるのか、影山と翔陽は二人揃って良い返事を返している。

 

 だが現実はそう甘くない、その後何度もトスが上がるもののボールに手が当たらない。

 

「よっしゃ触っ!」

 

ザスッ ピッ タッチネット

 

「漁業かコラ!!」

 

「うぅ……全然タイミングわかんねぇよ……」

 

 今まで速攻をやったことがないという事を鑑みても、影山のトスはあまりにも早すぎた。

 トスの精度はピカイチ。影山のそれは正確にスパイクの打点を通ってはいるものの、早さゆえ当てられるタイミングはほんの一瞬。届いたとしても僅かでもタイミングがズレれば思いっきり空振ってしまう。

 

「お前反応早いんだからもっとこうバッと来いよ、グワッと!」

 

「バッなのかグワッなのかどっちなんだよ?!」

 

「いや問題はそこじゃねぇダロ」

 

「ーー影山」

 

 最終的によく分からない言い合いを始めた所で、菅先輩が声をかける。

 

「それじゃあ、中学の時と同じだよ」

 

「……?」

 

「あっ、えーーっと……」

 

「日向は機動力に優れてます、反射、スピード、ついでにバネもある。慣れれば早い攻撃だって」

 

「その〝すばしっこさ〟っていう武器、お前のトスが殺しちゃってるんじゃないの?」

 

「!」

 

「菅先輩の言う通りだな。翔陽の技術はまだまだだが、運動センスという素材は本物だ。それは俺も保証する。」

 

「颯……! そんな、天才だなんて、いやそんなおおげさな」

 

「言ってねぇよ」

 

 

「……俺も、お前と同じセッターだから、去年のお前見てビビったよ……。ずば抜けたセンスとボールコントロール、敵ブロックの動きを冷静に見極める目と判断力。」

 

「全部……俺には無いものだ」

 

 

「そっ、そんな事ないっスよスガさ」

 

「田中。一回聞いとくべ」

 

「……」

 

 

「技術があってヤル気もありすぎるくらいあって、何より〝周りを見る優れた目〟を持ってるお前に」

 

「仲間のことが見えないハズがない!」

 

「っ!」

 

 

 菅先輩の言葉を、影山は翔陽をじっと見ながら考えている。

この時、初めて翔陽のことを一人のチームメンバーとして認識したのだろう。

 

 北一のように技術を持った選手では無い、それでもスピードもジャンプ力もある。そんなプレイヤーを活かす事が出来るのは、セッターのみだ。

 

 

「……お前の運動能力が羨ましい!」

 

「はっ?!」

 

「だから能力持ち腐れのお前が腹立たしい!」

 

「はぁぁっ?!」

 

「それなら、お前の能力。俺が全部使ってやる!」

 

 

「ーーお前の一番のスピード、ジャンプで跳べ」

 

「ボールは俺が、持っていく!」

 

 

「……ほう?」

 

 何やら面白い事が起こりそうだ。

 

 最強のセッターと潜在能力お化け。このふたつが合わさった時、どのような化学反応が起きるのだろうか。

 

 ……ひとまず俺はサポートに徹して、こいつらの出方を伺うとしますかね。

 

 

 

ボッ

 

「ほらよ影山! やってみろ!」

 

 極限まで集中してネット際に立つ影山へとサーブレシーブを返す。翔陽は既に走り出している。

 

キュッ!

 

 影山がどんな答えを見せてくれるのか、ワクワクしーー

 

ドッ バンッ!!

 

「ーー! よしっ!」

 

「?! 手に、当たったァァァァ!!!」

 

 

 今、何が起こったんだ?

 

 かなり早いタイミングで日向が跳んだと思ったら、ボールは既にコートに突き刺さっていた。

 

 影山を除いた両チームは呆気に取られている。何故か打った本人である翔陽ですら自分の掌を見つめ驚いている始末だ。

 

 

「手に当たった? 大げさだなぁ……」

 

「……おい、今……」

 

「日向、目ぇ瞑ってたぞ……」

 

「「「「はァ??!!」」」」

 

 目を瞑っていた。まさか翔陽のスイングのタイミングに合わせて、ドンピシャでトスを上げたというのか。

 

 そんなもの超絶技巧というレベルの話では無い、神業という言葉ですら生ぬるい。狙ってやったとしたら……、いや影山の事なら狙ってやっているのだろう。

 

 

 

 その後も、影山のトスはどんどん精度が上がって行った。翔陽はトスを100%信じて跳ぶ。そしてそれに応えるように影山も100%のトスで返して点数を重ねていく。

 

 

「……クッソ」

 

「どうした、月島クン。ジャージまで脱いじゃって」

 

「……うるさいな、体育館が暑いから脱いだだけだろ」

 

「フーン、そうかいそうかい」

 

 いつの間にか月島も煽るのを辞め、正真正銘全力で試合をするようになっていた。これでようやくーー

 

 本気のコイツをぶち抜ける。

 

「ナイッサー!」

 

「オーライ!」

 

 今まで月島のやる気の無いブロックに対して、五割程度の力でその横を抜くことかしていなかっだが、今回は違う。

 

「影山! レフト!」

 

「風見っ!」

 

キュッキュッ ドンッ!

 

 本気で止めに来るのなら、俺も本気で返す。

 

「山口! 二枚で止めるぞ!」

 

「わかった!!」

 

 

 翔陽が後衛に下がったことで、本日初の二枚ブロックとの対峙。今まで二人で練習してきたのだろうか、月島と山口は間を開けることなく綺麗な二枚ブロックを完成させる。

 

 それでも、まだまだ手の出し方が甘い。全力のスパイクで狙うのは当然ーー

 

 

「デカい方……だよなッ!!!」

 

ドッ バァァァン!!  ゴッ

 

「?!」

 

 月島の手に当たったスパイクは、僅かに勢いを削がれながらも大きく弾かれ、そのまま体育館の天井へと激突した。

 

 

「クロさんのブロックに比べれば、お前のソレはただのカモだよ」

 

「……チッ」

 

「こらぁ風見! ツッキーを煽るな!」

 

「山口うるさい」

 

「風見!」

 

 久々に思いっきり腕を振り下ろした感覚にスッキリしていると、田中先輩に声をかけられる。

 

「すっげぇパワーだな?!」

 

「あざス!」

 

「どうやってやってんだあれ」

 

「実はコツがあるんスよ、後で教えましょうか?」

 

「おう! 是非頼む!」

 

 今は試合中なため説明を割愛したが、田中先輩の向上心には感服する。先輩後輩という関係を抜きにして、聞きたい事は聞くし言いたいことは言う。そんな雰囲気を作ってくれる先輩は、この烏野バレー部にとってとてもありがたい存在なのだろう。

 

ドガッ

 

「しゃァァァ!! オラァァ!!」 ブンブンブンブン

 

 ……まぁ、テンションが高ぶると脱いでしまう癖はご愛嬌だ。

 

 

 

試合終了 セットカウント2-0 日向、影山チーム勝利

 

 

  四体四という少人数で、なおかつ途中から全員が全力で試合を行っていたため、25点2セットを終えた俺らは息も絶え絶えとなっていた。

 

 イレギュラーとはいえ、久しぶりにやった試合はとても面白かった。

 

 

「キャプテン!!」

 

「……? 何ーー」

 

 何やら話し込んでいた澤村先輩に、件の両名がくしゃくしゃになった入部届を渡しに行った。先輩はそれらをじっと見つめると、大事なものを扱うようにそっと受け取った。

 

 どうやらアイツらの入部が認められたようだ。

 

 一時はどうなるかと思ったが、これでようやくスタートラインに立つことができた。入部するのにこんな問題を起こすなんて、翔陽は本当にトラブルメーカーだな。

 

 でもまぁ、そこが面白い所なんだけどな。

 

 

「清水、アレってもう届いてたよな?」

 

「……」

 

ガサガサッ

 

「っ!! うほおおぉぉぁ!!!」

 

 清水先輩が持ってきたダンボールから出てきたのは、黒いジャージ。烏野高校排球部と印刷されたそのジャージは、俺らが入部する事を表すシンボルだ。

 

「多分サイズ大丈夫だと思うけど何かあったら言ってね」

 

「「「アザーッス!!」」」

 

 真新しいそれに袖を通すと、新品特有の匂いが鼻を抜ける。申請したXLサイズは特に問題なく身体に馴染んでいる。動きやすいようにデザインされているようで、試しに身体を動かしてみるが動きを阻害される感じはしない。

 

「うんうん、似合ってる」

 

 

「それじゃあ……これから」

 

 

「烏野バレー部として、よろしく!」

 

 

「「「おす!!!」」」

 

 

 これからこのジャージが身体に馴染むまで、いやもしかしたらより大きくなって新しいサイズを買うことがあるかもしれないが、バレーをやってやってやり尽くしてやる。

 

 

 一癖も二癖もある人ばかりだが、これからの高校生活、退屈することは無さそうだ。

 

 

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