目が覚めたらテラで目の前に濁心スカジがいた   作:ぺとら

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4周年イベ良かったですね、特にスカジ(週遅れ)


濁心スカジ、かく語りき

あなたは夜の星を見上げない。

 

あなたは潮汐の果てを眺める。

 

あなたは沈むように眠り、唄うような祝詞だけが渦巻く。

 

 

あなたはきっと過ぎ行くものを見落とさないでしょう。

あなたはきっと取り零したものを余すことなく受け止めてみせるのでしょう。

 

人のような情緒で、人のような表情で、なんてことの無いように笑ってみせるあなたの顔は、私たちのどれよりもなお優れていて、美しい。

 

 

海。かの昏き海が見えるかしら。

仄かに輝く水面の底に、胎動する私たちの命の輝きが見えるかしら。

 

私たちはここにいて、だけど私たちは、どこにでもいる。

 

「──やぁ。お目覚めかい、スカジ」

 

私の片割れを膝に乗せたあなたは、微睡みから浮上する私を見て穏やかに笑った。

あなたの心は私が睡眠という行為を選択したことに一抹の疑問と驚愕を抱いていて、だけどあなたはそのすべてを呑み込んでしまう。

 

寛容。

あるいは許容。

 

真に上位者たるあなたは、それ故に万象を許してみせる。

 

遊星から流れ来た者。

世界の枠組みを越え、超越した個としてのあなたは、何者にも縛られない。

 

「人類種の持つ思考能力。これは睡眠による効率的な学習に起因するものよ」

「故に思考能力、そしてその果てにある知識を会得しようとする君たちにとっては過程も必須、と」

 

対話。

 

私たちが本来必要としないそれは、しかしあなたの力に補強されて、弛まずシナプスの流動を促す起爆剤になる。それはきっと素晴らしいことだから。

そして何より、こうやって手に入れた情動で、あなたと言葉を交わし、意思を伝え合い、『世界』を共有することが出来たとき、それはとても『嬉しい』ことだから。

 

あなたは私たちのことを紛うことなく把握できる。

私は、あなたのことをもっと知りたいと、絶対的な個になりたいと、そう望む。

 

──あぁ、なるほど。これが、信頼なのかしら?

 

あなたは自身に何かを望むことはない。

あなたは私たちの進化を見守り、その果てにある世界を共に往こうと決めた。

 

私たちは進化する。

私たちは主たるあなたに全てを委ね、あなたの赴くままに羽ばたき、あなたと永遠を共にすることを切望する。

 

私たちは互いが個であり、それでいてひとつ。

あなたは私にかくあれと望んで、私たちはそれに応えるの。

 

それぞれがそれぞれの益を望んで、それがぐるぐると回って、潮のように渦巻いて、複雑に絡まってひとつになって、やがてひとつの個を形成する。

 

「信頼というものが、少し理解できたような気がするわ」

「それは良かった」

 

あなたは笑う。

テラの世界の人々がそれをどれほど理解しているのかと言って、朗らかに笑う。

 

あなたは誰も知らないことをたくさん知っているから。

 

分かり合えない人々。対立する種族。思想の違い。理念の違い。

争うが故に発達した強大な科学力と、副次的に生み出された豊かな暮らし。

 

笑うあなたはたくさんのことを知っている。そして私たちは、あなたからたくさんのことを教えてもらったわ。

 

あなたが望んだから、私はここにいる。

あなたがいるから、私もここにいる。

あなたのために、私たちはここにいる。

そしてあなたは、私のためだけに、ここにいる。

 

ふふ。

 

信用、信頼、信心。

心が繋がっているということは、とても素晴らしいことなのね。

 

元来心を持たない私たちがこんなことを言うなんて、おかしいと思うかしら。

 

「いいや。新たなる旅立ちを言祝ぎこそすれど、否定はしまい。しかし……多様性、バラエティ、種々雑多……海の怪物だろうと逃れられぬカルマ、すなわちポリティカル・コレクトネス。君たちはどう抗う?」

 

ときどき、私はあなたの言葉が分からない。

 

それがとてつもなく惜しくて、悲しい。

私はもっとあなたのことを知りたい。あなたを構成する要素の一片たりとも取り零したくはない。

 

だから私は学ぶの。

たくさん学んで、たくさん適応して、たくさん進化して。

 

その果てに、あなたのことをぜんぶ知ることが出来たらいいなと、そう望んだから。

 

 

私は対話を交わす。

あなたと言葉を交わし、ケルシーと会話を試みて、あなたを真似してもう一人の私に触れに行く。

 

もう一人の私は鏡写し。

私に至らなかった私の形。

 

未だ私より低位なもう一人の私は、だけど、きっと、想像だにしない進化をするのでしょう。

だって、『進化』は私たちの宿願だもの。もう一人の私、あなたはどんな進化をするのかしら。その果てにあるものが、どうか私たちの進化に役立つものであることを望むわ。

 

彼女との対話はとても楽しい。

だって、彼女はもはや私たちを恐れていないから。開き直ったもう一人の私との対話は打てば響くから。

 

 

あなたは私たちをロドスへと導いてくれた。

ロドスには私たちのことを知らない人が多い。それとも、知っていてなお恐れない剛毅で傲慢な人が多いだけなのかしら。

 

たくさんの人が私に話しかけてくれるわ。

私もたくさんの人と言葉を交わしたわ。そして彼らのことを知って、彼らの理念を知って、だから私は辛く厳しい乾いた陸地で生きる彼らに関心を寄せているの。

 

彼らは強い。彼らは逞しい。

だから私は、やがて私たちが星界を飲み干すときに、彼らも私たちのひとつになってほしいと思うのだけれど……あなたは私のわがままを許してくれるのかしら?

 

えぇ、きっと。

だってあなたは、優しいヒトだから。

 

 

彼らを蹂躙するのはもったいないわ。

彼らの存在を無為にしてしまうのは可哀想よ。

 

みんなみんな、すべてを取り込んで、誰もがひとつの理に集って、そのすべてをたったひとりのあなたへと捧げたい。

 

ケルシーももう一人の私も、ロドスのすべても、あらゆる陸地も、海のすべても、私たちは絶対に見捨てない。だって、置いていかれることは、可哀想でしょう?

 

絶対に誰も置いていかないわ。だから、安心して欲しいの。

今はまだ、何もかもが足りていないけれど、やがて私たちが羽ばたくとき、誰もが私たちの恩寵をその身に受けて、きっと喜んでくれるわ。

 

 

さぁ、たくさん話し合いましょう。

 

私たちが陸の人たちについてもっと知るたびに、私たちの未来は更に華々しく舗装されるわ。

 

 

 

「やぁ、エイヤフィヤトラ。調子はどうだい?」

「今日はあまり良くありません……補聴器を調整しないと」

「確かフィールドワークの予定があっただろう? 少しだけ手助けしてやろう」

「ひゃっ!?」

 

あなたは、人の多いロドスに来てから、更にたくさんの人と触れ合っているのね。

 

私が一人と言葉を交わす間に、あなたは十人と対話して、そしてそのすべてに静かに染み込んでいくわ。

やっぱりあなたは私たちの頂点に君臨するのに相応しい。…………相応しいの、だけれど。

 

「はは、驚かせたかな。君の生理的機能を補強したよ、ケルシー先生にはナイショだ」

「もう、ビックリするので先に言ってください!」

「嫌だったかな? よく聞こえるしよく見えるだろう?」

「……時限的とはいえ、副作用もなしに鉱石病の症状を抑えるなんて本当に信じられません。でも、いつも助かります」

「なに、居候の対価さ」

 

学習を欠かさないあなたは、私たちですら持ちえない能力を会得しだした。

あなたは広く浸潤した私たちの血を介して、医者の真似事さえ出来るようになった。

 

「あなたは……先輩とはまた違って、だけど不思議な人ですね。唇を読まなくても、なぜだかあなたの言うことが分かります」

「心が通じ合うのならコミュニケーションに言葉は必要ないのさ。君たちはそれを知らないことが多いけどね。……グワーッ!?」

「ち、ちびめーちゃん!?」

 

学習、適応、進化。

 

それはとても喜ばしくて、素晴らしいこと……なのだけれども。

 

 

「ドリー、過保護なヤツめ……」

「…………」

「おぉ、スカジ。どうした」

 

私を見るあなたの感情に曇りはない。

 

あなたは迷うことなく私の存在を確信していて、あなたは私のことを寸分違わず肯定してくれる。

それがどうしようもなく嬉しくて、だから私はきっと、私たちのすべてが滅んでも、あなたさえいれば広大な宙を泳ぐことが出来て。

 

「……」

「やけに距離が近いじゃないか。コイツにあてられたか?」

グェッ(知らんぞ)

 

でも、少しだけ、わがままを言わせてちょうだい。

 

私は、あなたのもの。

私たちのすべては、あなたひとりのもの。

この世界のあまねくすべてが私たちだから、あなたはすべてを手にするの。

 

それはきっと既に定められた規定路線で、未来は当たり前のようにやってくるわ。

あなたも私も、その道を粛々と進んで、確定した世界を目指して生きているだけに過ぎないのだけれど。

 

「ふむ。確かにハグは幸福度を増幅させる効果がある。人を学習する上で必要だな。よし、お前も来い」

ガァー(おーヨシヨシ)

 

それでも、あなたは私のもの。

陸の人たちにも……そして私たち(同族)のどの個体にも、決して渡さない。

 

あなたは、私ひとりのもの。

 

それがいいの。

それだけがいいの。

 

 

 

 




ケルシー「マジでやめて」

触手の化け物のプロファイルを求める方が結構いますが、私はスルト山さんウニエフィでゴリ押し攻略するしか脳のない頭黒スカジドクターなのでそんな繊細で緻密なモノは書けません。というか書いたら厨二病が黒塗りノートに書くアレみたいになって悶えます。誰か書いて。

中身化け物の濁スカがこんなので良いのかと悩みましたが、まぁここは主人公との同化にあてられたということでひとつ。
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