Aブロック第一回戦
シード枠
ミスターシービー
第一試合
カレンチャンVSアドマイヤベガ
第二試合
スマートファルコンVSエイシンフラッシュ
第三試合
スペシャルウィークVSサイレンススズカ
第四試合
カツラギエースVSキングヘイロー
Bブロック第一回戦第一試合
シリウスシンボリVSナリタトップロード
第二試合
トウカイテイオーVSメジロマックイーン
第三試合
タマモクロスVSオグリキャップ
第四試合
ヤエノムテキVSサクラバクシンオー
シード枠
メジロラモーヌ
スマートファルコンは、トップウマドルを目指すウマ娘である。
ダート戦線で凄まじい活躍を残し、その可愛いフォルムや、ウマドル活動におけるアイドル的な彼女と対照的に、ダートのライバル達からは畏怖の目を向けられていた。
しかし、彼女の願いは、ただただ、最強のトップウマドル足らんとすることである。
エイシンフラッシュ、彼女はスマートファルコンの同室で、時間に厳しく、人生における予定まで立ててしまう程に予定、スケジュールを重視するウマ娘である。
ドイツのパティシエである両親の下に生まれ、日本で走った彼女は、人生の予定を変更し、スマートファルコンと共に術師をしている。
予定を守るよりも、大切にしたいモノが出来たのか、はたまた他の理由か、彼女は誰にも、話さない。
少なくとも、スマートファルコンとエイシンフラッシュは芝とダートという適正の違いからレースではライバルとはならなかったが、今は、親しくもあるが、競い合う相手にも、なっている。
『さあ、第二試合は、スマートファルコン選手と、エイシンフラッシュ選手による対戦です!どのような戦いになるのでしょうか!』
『ふむ。また同室対戦だな』
『そうですね。今回、何の因果か、寮で同室関係にある方々が一回戦でぶつかるケースが多く..運命のようなモノを感じてエモエモのエモですね...っと失礼しました』
熱が入りかけたアグネスデジタルは、コホンと咳払いをし、仕切り直した。
『お二方、ご準備の程、よろしいでしょうか?』
スマートファルコンは「はーい」と元気よく笑顔で手を挙げて見せ、エイシンフラッシュは「万全です」と頷いた。
『さあそれでは、Aブロック一回戦第二試合...』
『開始です!』というアグネスデジタルの声と同時に、スマートファルコンが仕掛けた。
「領域展開」
観客席がざわめく。
「おいおい。マジかよ」
観戦する日下部一級術師も、少し身を乗り出し、驚愕を隠せずにいた。
スマートファルコンの立つ辺りは競り上がった舞台のようになり、周囲に巨大なスマートファルコンのライブであることを示すような装飾や音響器具が現れる。
そして、エイシンフラッシュのいる辺り、舞台の下全ては、観客席のようになり、空間全てがライブ会場のように塗り潰されたのだった。
「....っ!」
エイシンフラッシュは、迷わずスマートファルコンのいる舞台へと駆け出していた。
彼女の領域を破る可能性に賭けたのだ。
スマートファルコンの術式、"
つまり、歌を攻撃に転化することが出来る。
オンオフは自由であり、利便性の高い術式である。
そんな彼女の領域は、ライブ会場を模している。
つまり、術者がアーティストとして舞台で歌い、領域に巻き込まれたモノは観客となるのだ。
そして、観客は強制的に観客席に固定されてしまう。
領域に組み入れられた時点で、ほぼ、強制的にスマートファルコンのライブを聴かなくてはならなくなる。
必中効果があるにも関わらず存在するこの効果は、ライブの邪魔が入らないようにするためなのだろう。
だが当然、相手の動きを拘束するなどという効果を、何の縛りもなく実行は出来ない。
その縛りとは。
("ライブ"が開始されるまで、つまり、曲が流れ始めるまでの数秒間だけは、領域に入れられた者も自由に動けるという点)
エイシンフラッシュは、その数秒を利用するつもりなのだ。
(そして、本来、領域内にある構造物は、ただのイメージに過ぎないけれど、ファルコンさんの場合は違う。縛りの為に、中央の舞台やその装飾は、領域の核として存在している)
つまり、破壊可能。
そして、破壊されると、領域が崩壊する。
これが、縛りの肝なのだ。
(そう、だからこの数秒が勝負)
スマートファルコンも、そのことは良く理解している。
故に、エイシンフラッシュの邪魔をしようと、飛びかかった。
領域内では曲がスタートするまでは、歌えないからだ。
だが、一瞬、遅かった。
「
エイシンフラッシュの拳が、舞台の装飾にぶつかる。
エイシンフラッシュの術式は、対象を6:4に線分した点を強制的に弱点へと変える、十劃呪法だ。
そして、その拡張術式である、瓦落瓦落は、対象の構造物等に呪力を走らせ、瓦礫をも武器に変える、強力な範囲攻撃であり、構造物の破壊そのものを目的としても有用と言えるだろう。
これが、エイシンフラッシュの勝機であり、果たしてそれは、成功した。
ガラガラと音を立てて崩れて行くスマートファルコンの舞台。
それと共に、領域も、崩壊していく。
「ありゃ...」
スマートファルコンは、目を丸くさせていた。
確かに数秒動けるとは言っても、五秒にも満たないのだ。
その隙を付いて、領域を破壊出来る者など、何人もいないだろう。
「さすがはフラッシュさん..」
『同室故に、互いのことは良く把握しているのだろう。しかし、だからといって易々と破れる類いのモノではない。エイシンフラッシュの実力の高さが垣間見えるな』
シンボリルドルフが感心したように解説をし、アグネスデジタルはまたもや、昇天しかけていた。
『...はっ!..領域を破壊したフラッシュ選手、ファルコン選手に飛びかかるー!』
再び本分を思い出し、復活したアグネスデジタルの実況と共に、エイシンフラッシュの攻撃がスマートファルコンを襲う。
「わっ!」
どうにか躱したスマートファルコンだが、術式が焼き切れている為、ろくな反撃手段がない。
「術式が回復する前に..!」
十劃呪法
再び、エイシンフラッシュは試合用の模造刀を構え、狙いを定める。
「はあっ!」
そして、振り抜いた模造刀がスマートファルコンの身体に諸に直撃。スマートファルコンは、中空を舞った。
「くうっ...」
『おおっと!スマートファルコン選手、
重い一撃を喰らった!』
「しゃいっ!☆」
スマートファルコンが謎の掛け声を叫ぶと同時に、エイシンフラッシュの体躯に、衝撃が走った。
「っ...術式を..」
スマートファルコンはそのまま舞台端に落ちるように着地したが、立て直すだけの隙を稼いだのだ。
「よ~し!いっくよー☆」
術式の回復したスマートファルコンは、ポーズを決めると同時に、歌い出した。
その音は、呪力の載った衝撃波として、エイシンフラッシュを襲う。
「━━━━っ!」
(術式を回復されてしまった以上、近付くのは難しい...なら..)
呪力での防御を貫通し、エイシンフラッシュの身体に衝撃を加え続けるスマートファルコンの声に苦しみながらも、その足を踏み出した。
そして、舞台のある地点に立ち、呪力を籠めた拳をそのまま、ぶつける。
十劃呪法 瓦落瓦落
再び放たれた拡張術式によって、舞台は割れ、スマートファルコンに呪力の籠った瓦礫が襲いかかる。
「しゃーい!」
術式と呪力により防御こそしているが、其方にかかりきりとなってしまい、スマートファルコンは、飛ぶようにして距離を詰めてきたエイシンフラッシュに、対応することが出来なかった。
「はあっ!」
未だに歌は途切れさせないスマートファルコンだったが、エイシンフラッシュはそれにも関わらず、模造刀を振り抜いた。
そして、攻撃を受けたスマートファルコンは舞台を転がり、そのまま、地へと落下してしまうのだった。
『じ、場外!場外です!一回戦第二試合、勝者は、エイシンフラッシュ選手!』
アグネスデジタルの実況が終わるよりも早く、場内にざわめきが広がった。
『あれは..!』
スマートファルコンの術式を至近距離でうけつづけていたためか、エイシンフラッシュの模造刀が、音を立てて、折れた。
そして、本人も、そのまま膝を付き、安心したように、倒れるのだった。
『どうやら、エイシンフラッシュの方は限界ギリギリだったようだな。スマートファルコンの術式は、かなり強力だ。むしろ至近距離であれだけ浴びて、よく動けたと思うよ』
舞台に戻ってきたスマートファルコンは倒れるエイシンフラッシュを前に、一瞬、観客には見えないようにしながら悔しげな顔をする。
そして、笑顔を再びその丸い顔に湛え、エイシンフラッシュを抱き上げて、退場するのだった。
「今度は、負けないよ。...フラッシュさん...おめでと」
『今回も凄い試合でしたね~』
『ああ、状況やルールが違っていれば、勝敗は変わっていただろう程に二人とも伯仲していたな』
『場外がなかったりすれば、確かにスマートファルコン選手に余裕があるように見えましたものね』
ところで、とアグネスデジタルが続ける。
『舞台の修復が必要なので、暫く時間もありますし、今の話にも関連して幾つか質問が来ていたことをお尋ねしたいのですが、よろしいですか?会長さん』
『構わないよ。何かな?』
『場外ルールの意義について教えて欲しい、というような質問が幾つか事前にありまして』
『ああ、確かに、一見すると不必要に思えるルールだね。このルールの意義としては主に二つ。
一つ、対戦する術者の術式次第では、どちらも決め手にかけた膠着状態になり得る可能性があるからだ。場外を設けることにより、相手を気絶させたり降参に追い込む以外での勝機が必要なんだ。
もう一つは、戦略性だ。此方も勝ちへの道筋を複数用意することで、状況に応じた柔軟な発想や対応、想像力を鍛えることに繋がるから、だ。
一応これも鍛練の一貫だからね。術者同士の戦いでは、搦め手も必要となる。
そうした点を意識している、というわけさ』
『なるほど..ありがとうございます。実際、先ほどもカレンチャンさんは、自身の術式等から判断して、アドマイヤベガさんを場外に落とそうと作戦を立てていたようですものね』
『そうだな。ああした形で相手や状況に応じた手段を取ることが期待される』
そうして、大会は舞台修復の為に、数十分程の休息を送るのだった。
-とある街-
「はあー。ブライアンとのタイマンのチャンスだったし、アタシも大会出たかったんだけどねえ」
任務へと向かうウマ娘が二人、談笑しながら歩いていた。
トレセン学園の生徒は多い為、大会に全員が全員参加出来る訳ではなく、どうしても外すことの出来ない任務に当たることはある。
今愚痴っていたヒシアマゾンは、予選の日にも任務が入っていたため、本選には出れず、それ故、今日も任務が入っていた。
「あはは。仕方ないよ。それに、ブライアンも急遽任務が入っちゃったらしいから、どっちにしろだよ」
「本当かい?!...あいつも楽しみにしてたのに、残念だね」
「そうだね。まあ、来年を待つしかないね。私もポニーちゃん達の活躍を見たかったのだけれど」
もう一人はフジキセキ、二人とも、トレセンの寮生を纏める寮長である。
そんなこんなで、任務地へと向かう中で、路地へと入る二人。
瞬間。
「!..ヒシアマ」
「分かってる」
気配。
「...さすがはトレセンの寮長を勤めるだけはあるね」
声。
だが、姿は見えない。
「誰だい?!」
「.....」
二人は背中合わせになり、周囲を警戒する。
「上だ!」
ヒシアマゾンが叫び、動くと同時にフジキセキも瞬時に前方へ跳躍。
拳大程の刺、針のようなものが、二人の立っていた地面を割り、突き刺さっていた。
「避けられたか」
上を見上げると、顔を隠した覆面の男が、二人を睨んでいた。
「何者かな?」
「答える義理はない。だが、あんたらに消えてもらいたい奴、さ」
余裕そうに男は笑う。
ヒシアマゾンとフジキセキは、その身体に呪力を迸らせた。
「そうかい。なら...」
「倒して聞き出すまでだ」
-ある山中-
「作戦は順調か?」
巨体の呪霊が人影に尋ねる。
「ええ。トレセンの戦力を事前に可能な限り削る、ですよね。一応進んではいますよ」
「期待出来るのか?」
「我々の足が付かなくてなおかつ、というのは中々欲張りですからね。正直期待はしない方が良い。
闇サイトに"等級に応じてトレセン生に100万以上"の賞金をかけたといっても、まあ、襲うのは余程のバカか、自信家か、金欠位でしょう」
「ままならないものだな」
呪霊が面倒そうに溜め息を吐きながら言う。
「決行までに悟られる訳には行きませんからね。ああいう賞金の手合いは、時折かけられることがあるので、嗅ぎ付けられはしないでしょう。その点は安心です」
「上手く行けばラッキー、というところか」
「そうですね。期待せずに待っておくのが良いですよ」
-トレセン学園-
『さあー!皆さんのご協力のおかげで舞台は復旧致しました!これより第三試合を再開致します!』
実況と共に、観客席が盛り上がる。
『第三試合は、またもや同室対決!スペシャルウィーク選手VSサイレンススズカ選手です!』
「全力で勝たせてもらいます!スズカさん!」
「ええ。私も、本気で"走る"わ。スペちゃん。貴方には、負けない」