シード枠
ミスターシービー
第一試合
カレンチャンVSアドマイヤベガ
第二試合
スマートファルコンVSエイシンフラッシュ
第三試合
スペシャルウィークVSサイレンススズカ
第四試合
カツラギエースVSキングヘイロー
Bブロック第一回戦第一試合
シリウスシンボリVSナリタトップロード
第二試合
トウカイテイオーVSメジロマックイーン
第三試合
タマモクロスVSオグリキャップ
第四試合
ヤエノムテキVSサクラバクシンオー
シード枠
メジロラモーヌ
一回戦も折り返しとなり、Bブロックの初戦が始まろうとしていた。
『Bブロックの第一試合はナリタトップロードさんとシリウスシンボリさんです!お二人とも実力者ですから、楽しみですねえ』
実況も数多の尊死未遂を乗り越え、板についてきたアグネスデジタルが選手を紹介する。
「では、よろしくお願いしますね!シリウスさん!」
「ああ、お手柔らかにな委員長さん」
ニヤリと笑うシリウスシンボリと、凛とした表情のナリタトップロード。
二人が相対し、試合が始まる。
『それでは、Bブロック第一試合、開始!』
「"動くな!"」
ナリタトップロードの呪言によって、シリウスシンボリはその場に固まる。
「はっ!」
その隙に、攻撃を仕掛けるナリタトップロード。
見事に成功し、呪言が解けた瞬間のシリウスシンボリに打撃を与えた。
「くっ!やっぱ呪言は厄介だな」
シリウスシンボリは開始の瞬間に脳を呪力で防御しようとしたが、間に合わなかったのだ。
「だが、"触れた"ぞ」
怪しく微笑むシリウスシンボリに気付き、ナリタトップロードは距離を取ろうとする。
しかし。
「もう遅い」
ナリタトップロードの身体は、彼女の意思に反してシリウスシンボリの方へと引き寄せられるようにして飛び始めた。
「なっ」
「そおれ!」
今度はナリタトップロードが攻撃を受け、その場に膝をつく。
引き寄せられたことで勢いがついていたため、拳が普通よりも強力に感じられたのだ。
「でも..."止まれ"!」
呪言を発し、シリウスシンボリの動きを止め、どうにか立ち上がった彼女は、再び拳を向けた。
しかし。
「残念」
「わっ!?」
今度はシリウスシンボリの身体から反発するようにして舞台中央から吹き飛ばされてしまうのだった。
「あぶっ..」
場外ギリギリで止まったが、既にシリウスシンボリがナリタトップロードの眼前に迫っていた。
「"動くな"!」
呪言で隙を作り、抜け出す。
だが、また、反発を受けてしまう。
「どうして..」
『ナリタトップロード選手、苦戦していますね』
『ああ。悪戦苦闘。シリウスの術式は、彼女にとって、相性が悪いだろうからね。彼女は、術式を余り公にはしていないし、そこの攻略からしなくてはならない点も、不利に働くだろう』
「くっ..."止まれ"」
今度は距離を取ろうとするも、引き付けられ、危うく腹に拳を受けそうになるナリタトップロードだったが、呪言で何とか難を逃れる。
「磁石...ですか?」
引き寄せる、反発。
そして、「触れた」という発言。
これらから、ナリタトップロードはシリウスシンボリの術式に当たりを付けていた。
「へえ?...だが、そうだとして、攻略法はあるのか?」
シリウスシンボリはなおも余裕そうに笑うのだった。
そう、シリウスシンボリの術式は磁石に関わるものである。
"
この術式は、自身をN極、直接触れてマーキングした対象をS極とするものである。
NとSは引き付け合い、SとSは反発し合う。
つまり、ナリタトップロードを引き寄せたのはこの術式にマーキングされていたためである。
反発は術式反転によるものだ。
術式反転の対象は自分、若しくは術式反転使用時に新たに触れた対象であり、順天の際と、極を反転させる。
これにより、反発を実現させていたのだ。
また、マーキングは相手の呪力に対して行われている為、ナリタトップロードの呪言よような特殊な場合は例外だが、式神や、例えばカツラギエースの炎等に対しては機能する。
つまり、マーキングした相手の術式に限り実質的にバリアとして機能する、というものなのだ。
「"止まっ...ゲホッゲホッ!」
ナリタトップロードは呪言をかけようとしたが、喉に限界がきたようで、激しく咳き込み始めた。
狗巻家のように強力な術式ではないため、相手に遵守を強いる程に呪力を籠めた場合、実力差が大きくなくとも数回で限界が訪れてしまうのだ。
「私の術式を付与出来た段階で呪力の消費を節約する為にあえて防御してなかったんだが、それが逆に上手く嵌まったみたいだな」
「っ...!」
ナリタトップロードは悔しそうに眉を歪め、拳を握り締める。
「呪言...なく...ても..」
ナリタトップロードは、掠れる声で呟きながら、シリウスシンボリに向けて足を早める。
再び反発を受けるが、吹き飛ばされる直前に、彼女は飛び上がって、上空へと弾き飛ばされた。
「は?何を..」
シリウスシンボリは真意を図りかね、ただ見上げるだけとなる。
(術式はあくまで術式。本物の磁石じゃない。なら、呪力を可能な限りこの足に籠めて、落下速度も合わせれば、突破出来るかもしれない!)
彼女は、賭けに出たのだ。
どちらにせよジリ貧ならば、残る呪力の大部分を使ってしまおうと。
右足に可能な限り呪力を籠め、全身にも呪力を行き渡らせる。
自身の呪力の濃さで、術式を中和しようというわけだ。
「はああああ!」
「..まさか!」
意図に気付いたシリウスシンボリだったが、既に回避は間に合わない。
ドゴンと轟音が響き、飛び散ったコンクリート片が砂塵のようになって舞う。
『これは...!』
『窮余一策。賭けに出たのだろうが、これはシリウスにも予想外だっただろうね』
「まさか突破されるとはな..」
「...っ!」
ナリタトップロードの攻撃を受けた瞬間に自身の極をSへと戻し、自身の腕にナリタトップロードの足をくっつけた状態にし、そのまま彼女を舞台に振り下ろすことで、左腕はかなりのダメージを負いつつも、シリウスシンボリがどうにか受け流すことに成功したのだ。
「...くそっ...降参します」
ナリタトップロードは、未だ掠れる声を絞り出すようにして、そう宣言するのだった。
最早、シリウスシンボリの術式によって自由に身体を実質的に拘束されている状態では、後は反発を利用して場外へと放られるだけであると判断し、降参したのである。
『勝者は..シリウスシンボリ選手!Bブロック第一試合は、シリウスシンボリ選手の勝利です!』
「うへ~やっぱシリウス強いなあ」
次の試合に出るトウカイテイオーとメジロマックイーンは、舞台に繋がる通路から試合を見ていた。
「トップロードさんも、攻略法を見出したようですし、やはり学ぶことが多いですわね」
「そうだねえ。でも勝ったら次はシリウスとかあ。どう戦えばいいんだろうなあ」
「あら?もう勝ったつもりですか?次のことばかり気にかけていると、足元を掬ってしまいますよ」
メジロマックイーンがそう挑発するようにに微笑む。
「大丈夫。心配しなくても、今はキミに勝つことしか考えてないよ」
トウカイテイオーも、同じくである。
そして、二人とも楽しみで仕方ないといった様相であった。
「漸く、約束を果たせるね」
「いいえ、まだまだ先になると思いますよ」
二人は、拳を合わせ、ナリタトッブロードらが退場した後、入れ替わるようにして舞台へと出るのだった。
『さあ、第二試合はライバル対決!トウカイテイオーさんVSメジロマックイーンさん!』
「ねえ、試合前に、少しだけ良い?マックイーン」
舞台に立ったトウカイテイオーは、メジロマックイーンにだけ届くくらいの声量で呟いた。
「どうされましたか?」
すーっと覚悟を決めたように息を吸い、メジロマックイーンの目を見据えたトウカイテイオーが口を開く。
「ボクは、キミとの戦いで、術式は使わない」
その言葉に、メジロマックイーンは眉をひそませる。
「それは、わたくし相手に手を抜く、という風に聞こえますが」
「いや、そういう訳じゃないんだ」
「では、どういうおつもりです?」
問われたトウカイテイオーは、苦笑しながら、こう答えるのだった。
「これは、"ボク"の力じゃないから」