Aブロック第一回戦
シード枠
ミスターシービー
第一試合
カレンチャンVSアドマイヤベガ
第二試合
スマートファルコンVSエイシンフラッシュ
第三試合
スペシャルウィークVSサイレンススズカ
第四試合
カツラギエースVSキングヘイロー
Bブロック第一回戦第一試合
シリウスシンボリVSナリタトップロード
第二試合
トウカイテイオーVSメジロマックイーン
第三試合
タマモクロスVSオグリキャップ
第四試合
ヤエノムテキVSサクラバクシンオー
シード枠
メジロラモーヌ
「術式を使わないとはどういうことですか?」
「この術式は、ボクの力じゃないから」
「.....」
「本当に偶然に手に入ったもの」
だから、とトウカイテイオーは顔を上げた。
「あの時、マックイーンと約束をした時の、ボクの全力で、キミに勝ちたいんだ」
トウカイテイオーの真っ直ぐな目を見て、メジロマックイーンはなるほど。と息を吐いた。
「分かりました。それなら、良いです。そして、私は一切手を抜きません」
「勿論」
「負けてから後悔なさいませんようにね」
「勝つのはボクさ」
二人は、改めて向かい合った。
『それでは、Bブロック第二試合、スタートです!』
アグネスデジタルの声と同時に、二人は動き出していた。
「鵺!」
メジロマックイーンが十種影法術を用いて繰り出した鵺を、トウカイテイオーに突進させる。
「とっ!」
軽やかに身を躱したトウカイテイオーは、そのまま刀に手をかけた。
「そりゃっ!」
素早く抜いた刀身で、鵺を切りつけ、返す刀に方向転換、メジロマックイーンの下へ跳躍した。
「!..脱兎」
数多の脱兎がメジロマックイーンを包み、トウカイテイオーとの視界を遮る。
しかし、トウカイテイオーは、勘でそのまま進み、刀を振り抜く。
「...!」
ギリギリで躱したメジロマックイーンだったが、刀身が掠ったようで、左頬に僅かな傷を付けていた。
『トウカイテイオー選手、目眩ましに混乱させられることなく、メジロマックイーン選手を的確に狙います』
実況と共に、観客席も盛り上りを見せる。
「よく分かりましたわね..」
「キミとは長い付き合いだからね」
「ふっ...それは私も同じですわ...大蛇!」
後背からの奇襲にトウカイテイオーは驚き目を見張りながら飛び退いた。
「残念。避けられてしまいましたか」
「危なあ!ちょっとマックイーン!ボクを食べさせる気?!」
「あら。貴方はその程度ではないでしょう?」
お互い冗談めかして笑い会いながら、舞台上を飛んで跳ねての立ち回りを演じる。
『両者、一歩も譲りません!トウカイテイオー選手の攻撃をいなしつつ、式神で攻勢をしかけるメジロマックイーン選手ですが、かなりの確率で躱されています!』
『付き合いが長い分、互いの動きを先読み出来る故だな。膠着状態と言えるだろう』
最初に膠着を脱するため、動き出したのはメジロマックイーンだった。
「玉犬!」
白と黒、両方を顕現させ、トウカイテイオーを挟み込むようにして襲わせる。
「はあっ!」
呪力の籠もった模造刀を振り抜き、飛びかかってくる玉犬を払い、大きく踏み込んだ。
「!...鵺!」
玉犬をいなし、飛び込んだトウカイテイオーの眼前に、今度は鵺が襲い来る。
「せいやあっ!」
模造刀で鵺の体当たりを受けたトウカイテイオーだったが、鵺の帯電する特質にやられ、身体を痺れさせた。
「くうっ!...でもっ!」
痺れる足をもつれさせながらも、彼女は諦めず、突進を続ける。
『おっと、トウカイテイオー選手、鵺の攻撃により、感電してしまったようです!』
踏ん張り、足に力を込め、走るトウカイテイオーだが、先程と比較すると精彩を欠いてしまっていた。
「さすがですわね。でも、そんな動きでは、私を捉えられませんわ」
言いつつ彼女はヒラリと軽々身を躱し、トウカイテイオーと距離を取ると同時に、鵺を背後から突進させていた。
だが、トウカイテイオーはそのままメジロマックイーンに向け、突進を続ける。
「まさか!」
眼前に到達し、二人が衝突するかという直前に、トウカイテイオーは姿勢を低くし、スライディングをした。
「きゃっ!」
一瞬のことに足を取られ、バランスを崩したメジロマックイーンに、勢いそのまま、トウカイテイオーを追っていた鵺が衝突する。
「しまっ..!」
感電により動きを鈍らされ、更に転んでしまっていたため、隙を晒した彼女に、トウカイテイオーの模造刀が襲いかかった。
「かっ..」
腹に重い一撃を受け、悶える。
トウカイテイオーは更に追撃を加えようと振りかぶっていた。
「━━蝦蟇!」
蝦蟇が伸ばした舌が刀を弾き、追撃を阻止、トウカイテイオーが刀を拾う間に、メジロマックイーンもどうにか体勢を立て直した。
「まだまだ行くよ!」
再びメジロマックイーンと距離を詰めるトウカイテイオー。
(呪力を多く消費してしまいますが、仕方ないですわね)
痛む腹と感電によりなおも身体に若干の鈍重さを感じていたメジロマックイーンは、一気に勝負を付けることを考えていた。
「万象!」
万象が吐き出す濁流のような水に、術式を封印しているトウカイテイオーは抗ことが出来ず、舞台端に流されることしか出来なかった。
『トウカイテイオー選手、舞台端に追い詰められてしまいました!』
『死中求活、といった様相だね』
解説を勤めるシンボリルドルフの言葉通り、どんな手法ででも活路をどうにか見出ださねば、場外に押し出されかねない状況である。
「玉犬」
更に確実に勝利を確かなものとする為、玉犬二匹を召喚。
そこにメジロマックイーン自身も飛び込み、三方向から包囲するような形を取った。
「これで、お仕舞いですわ!」
まず、二匹の玉犬が襲いかかり、最後にメジロマックイーン自身がトウカイテイオーの懐に飛び込む。
「でえやあああ!」
だが、抗うトウカイテイオーによって、玉犬は振りほどかれ、模造刀がメジロマックイーンの首筋を掠めた。
「負ける、もんかあ!」
そのまま、彼女はメジロマックイーンの服を掴み、投げ技でもって、反撃に出た。
『トウカイテイオー選手、包囲を脱し、更に反撃に出ました!』
シンボリルドルフは、トウカイテイオーの成長ぶりに、目を見張っていた。
(術式無しでマックイーンの玉犬達を凌ぎきるとは..感慨無量。テイオー、君は本当に凄い娘だ。...私の目では、気付くことが出来ていなかった、君の強さ)
解説故、口には出さないが、シンボリルドルフは、感嘆し、トウカイテイオーに諦めさせようとしていた自身のかつてを自省し、自嘲してもいた。
彼女は、術式を得てからも、身体を、剣術を鍛えてきた。
その成果が、今、実を結びつつあるのだ。
「っ!」
メジロマックイーンは危うく場外に投げ飛ばされるかという所で止まったものの、起き上がる前にトウカイテイオーの追撃を受けることとなる。
呪力で強化した腕でもって、振り下ろされた模造刀を受け、思い切り足を振り上げ、トウカイテイオーを飛び退かせ、その勢いのまま立ち上がった。
「鵺、玉犬!」
二種同時に召喚し、メジロマックイーンは畳み掛ける。
さすがに三体の式神を同時にさばききることは難しく、再び鵺に、トウカイテイオーは感電させられてしまった。
そこを、更に玉犬が襲う。
「うっ..!」
腕と足に噛みつかれ、刀を再び取り落とした彼女の隙を、メジロマックイーンは逃さなかった。
「脱兎」
鵺を消し、脱兎を召喚。
玉犬の対処に追われているトウカイテイオーの視界を撹乱させ、更に混乱させるためだ。
「はあっ!」
そして、メジロマックイーンは思い切り跳躍し、そのままトウカイテイオーを押し倒し、覆い被さるような体勢へとなった。
「あっ..!」
「蝦蟇!」
蝦蟇を召喚、トウカイテイオーの足を拘束する。
「...貴方の、敗けです」
「っ....」
足を拘束され、メジロマックイーンに眼前で鵺召喚の構えを取られ、更に玉犬が両脇を固めている。
そんな状況に、一瞬にして追い込まれてしまったトウカイテイオーは、こう宣言するしかなかった。
「降参..します..」
歯を食い縛り、拳を、強く、強く握り締めながら搾り出すようにして、降参した。
『トウカイテイオー選手、降参..メジロマックイーン選手の勝利です!』
場内は、術式を使わず、準一級の召喚術師と接戦を繰り広げたトウカイテイオーを称えるように、拍手喝采に包まれた。
だが、トウカイテイオーは、ただ目の前の敗北に打ちのめされていた。
「勝ちたかったな..」
何かを堪えるように目を細めるトウカイテイオーは、目を腕で隠すようにしていた。
メジロマックイーンもまた、喜びを露にするわけではなく、ただ静かに立っていた。
(もし、実戦なら、私は既に二回斬られている。胴と、首を...)
「試合に勝って、勝負に負けた、ですわね」
誰にも聞こえないほどに小さく、彼女は呟くのだった。
そうして数秒の後、目を細めるトウカイテイオーの顔を覗き込むようにしてメジロマックイーンが顔を出す。
「約束、果たして頂くのは、まだ先になりそうですわね」
「...次は、負けないよ」
宣言するトウカイテイオーに、メジロマックイーンは少し考えるような表情を見せた後、こう口を開いた。
「テイオーさん。次は、術式を使って下さいまし」
「え..いや、でも」
「偶然、事故のようなもので手に入った力だから使わない、でしたよね」
「そうだよ。ボクの力じゃないから」
メジロマックイーンは起き上がろうとするトウカイテイオーに手を差しのべながら、首を振った。
「いいえ、貴方の力、ですわ」
「...?」
「今回は、テイオーさんの強い意志を尊重しようと思い、試合前には言いませんでしたが、その力は間違いなく貴方のモノです」
メジロマックイーンは、包み込むような笑みを浮かべ、続ける。
「私達だって、結局の所、生まれた時に偶々術式が備わっていた、というだけに過ぎません。
遺伝等は重要な要素ではありますが、必ず相伝が発現するわけではないように、一般家庭から突如、強力な術師が生まれるように」
術師は詰まるところ、偶然の産物なのです。とメジロマックイーンは言う。
「マックイーン..」
「例え事故のようなものだろうと、呪詛師に発現させられた結果手にしたものだろうと、偶然、という点では同じですわ」
だから、と真っ直ぐにトウカイテイオーを見つめる。
「間違いなく、あの術式は、貴方の力です。
だから次は、"貴方のもち得る全て"でかかってきてくださいな。
私は、貴方というライバルの全てを上回りたいのです」
彼女の言葉に、トウカイテイオーは少しの沈黙の後、少しの笑い声で返した。
「フフッ。仕方ないなあ。でも、術式使ったらボクが勝つからね。上回ることは、出来ないよ」
二人の好敵手は互いに笑い会いながら退場する。
そんな様子を、今にも尊死しそうな表情で拝むアグネスデジタルの隣で、シンボリルドルフは、嬉しそうに、そして、少しの羨ましさを除かせながら、見つめているのだった。