Aブロック第一回戦
シード枠
ミスターシービー
第一試合
カレンチャンVSアドマイヤベガ
第二試合
スマートファルコンVSエイシンフラッシュ
第三試合
スペシャルウィークVSサイレンススズカ
第四試合
カツラギエースVSキングヘイロー
Bブロック第一回戦第一試合
シリウスシンボリVSナリタトップロード
第二試合
トウカイテイオーVSメジロマックイーン
第三試合
タマモクロスVSオグリキャップ
第四試合
ヤエノムテキVSサクラバクシンオー
シード枠
メジロラモーヌ
『Bブロックも折り返し!続いてはオグリキャップ選手対タマモクロス選手です!またまた同室対決ですねえ~』
『偶然とは面白いモノだ。互いをよく理解しているからこその戦法が目立つ。一回戦で勝った者達は自身のスタンダードな戦法を明かさずに次に進める分アドバンテージと言えるだろうね』
『なるほど。確かに私も初めてお目にかかる戦い方をなさった人もいましたね。これは俄然楽しみになってきますね~』
『万古不易。君はぶれないな』
ジュルリと涎を拭うアグネスデジタルに、シンボリルドルフが半ば感心したような呆れたような笑顔を向ける。
『さてさて、それでは次いってまいりましょう!お待たせしました!お二方、ご準備の程はよろしいでしょうか』
「ああ、問題ない」
「こっちもオッケーや!」
『それでは...開始!』
アグネスデジタルの号令と同時に、タマモクロスが動いた。
「オグリ、悪いけど一瞬で決めさせて貰うで」
言うと同時に足を踏み込んだタマモクロスは、舞台を駆け、ぐんぐんと加速していく。
そして、オグリキャップに向け、ウマ娘でも考えられない程の速度でもって、飛び込んだ。
「もらった!」
オグリキャップは、直前に反応し、躱そうと身体を捩らせていたが間に合わず、タマモクロスの手が、彼女の腕にタッチされた。
「...!」
一秒間、オグリキャップの動きが止まる。
タマモクロスの術式は、投射呪法。
1秒間の動きを24の瞬間に分割したイメージを頭で組み立て、それをトレースする術である。
動きを作ることにに成功すれば自動でトレースされるが、過度に物理法則や軌道を無視した動きやトレースの失敗があれば、一秒間フリーズしてしまう。
これは術式発動中に触れた相手にも適用されるため、オグリキャップは正に今、トレース失敗となり、フリーズしてしまったのだ。
そして、そのままタマモクロスの拳をもろに受ける形となる。
「ぐっ...!」
「まだまだ行くでえ!」
最早常人ならば目で追うことも出来ない速度に昇華したタマモクロスは、追撃をしかける。
「はっ!」
だが、追撃はオグリキャップに躱されてしまう。
とはいっても、殆ど勘で避けたのであり、動きを捉えきれていたわけではない。
「だが..!」
回避によって得た猶予でもって、彼女も術式を全開にする。
糧食転呪
オグリキャップはスペシャルウィークと同じ術式をその身に宿しているのだ。
「タマ、今朝の私は満腹だったぞ!」
構えを取りながら宣言するオグリキャップ。
そう、今朝のオグリキャップは、スペシャルウィークと共に満腹になるまで食堂を食い荒らしていた。
つまり、呪力はほぼ底無しとなっている。
「ウチのスピードに付いてこれんかったら意味ないで!」
更に速度を上げていくタマモクロス。
オグリキャップは、静かに構えていたが、カッと目を見開いたと同時に、右横に身体を向け、拳を繰り出した。
タマモクロスの高速度で繰り出された拳と、オグリキャップのそれとがぶつかり合い、軽く衝撃波を生んだ。
だが、オグリキャップは一秒止まってしまう。
しかし、タマモクロスも、オグリキャップの打撃による衝撃で僅かに後退り、その間隙は意味を失った。
向き合った二人は、不敵に笑い、今度は二人ともが舞台を所狭しと駆け回り始めた。
「やはり、タマは強いな...だが..!」
「まだまだ行くで!オグリ!勝つんはウチや!」
オグリキャップは、タマモクロスの撹乱、つまり、自身が動き続けることで術式が乱されることを狙っている。
そして、タマモクロスは、確実に一撃を入れ、オグリキャップの動きを止められる瞬間を狙っていた。
((次で...))
((決める!))
一致した二人の思考が、終局へと勝負を一挙に動かす。
「最高速でぶち抜いたるわ!!」
タマモクロスは、一切の小細工なく自身の最高速でもって、真正面から突っ込んだ。
そして、オグリキャップも、それを正面から食い破らんと、構えていた。
「どりゃあああ!」
「はあああ!」
オグリキャップの拳が、タマモクロスの身体を捉えたかに思えた。
しかし、同時。
タマモクロスの拳も、オグリキャップに届いていた。
つまりは。
一秒間フリーズしている間に、オグリキャップは場外へと投げ飛ばされてしまった。
『オグリ選手場外!勝者、タマモクロス選手!』
『正に疾風迅雷といったところだな。タマモクロスの速度がオグリキャップの莫大な呪力を打ち破ったようだね』
歓声が上がると同時、タマモクロスはガクリと膝を付いた。
「いったあ...」
最後にオグリキャップから受けた打撃のダメージで危うく意識を落としそうになっていたのだ。
「やはり、タマは強いな」
「..ま、白い稲妻は健在っちゅーこっちゃ」
「しかし、悔しいな...次はもっとご飯を食べてから挑ませてもらう」
「食堂の在庫が枯渇するからやめとき」
そうして、二人は退場、続いての試合準備が始まった。
ヤエノムテキは、舞台上に上がると、精神統一の為、目を閉じ、深く呼吸を繰り返していた。
対照的にサクラバクシンオーは自信満々といった笑顔で立つ。
「バクシンオー殿。どうぞ、よろしくお願い致します」
「はい!よろしくお願いします!お互い正々堂々、全力で参りましょう」
ヤエノムテキが差し出した手を、サクラバクシンオーは元気よく握り返した。
『さあさあ、準備はよろしいでしょうか?』
「はい!問題ありません!」
「私もばっちりですよ!」
『それでは、第四試合...始め!』
サクラバクシンオーは、委員長スマイル(本人評)を浮かべたまま、術式を発動させる。
「バク、シン!!!」
先程のタマモクロスもかくやと言った速度、音を置き去りにしそうな高速度で、彼女は駆け出した。
サクラバクシンオーの術式は、"
自身の体躯を高速度に出来る、ただそれだけだが、その速度の乗った攻撃は、コンクリートなどは豆腐のように砕いてしまう。
「っ..!」
ヤエノムテキはバクシンオーの術式については知っていたため、開始の合図の瞬間、身を捻らせていた。
彼女の耳元を、髪を掠らせ、バクシンが通り過ぎ去る。
そして。
「ちょわ!?」
凄まじい音とサクラバクシンオーの驚愕が同時に耳に届き、振り返った。
『あ...バクシンオー選手場外に飛び出してしまいました!』
そう、サクラバクシンオーは勢い余って場外の観客席と隔てる壁に衝突してしまっていたのだ。
「何やってんのバクシンオー!」
「委員長ー!ダメじゃんちゃんと前みなきゃ」
観客席からは笑いが置き、サクラバクシンオーも「やってしまいました」と照れ笑いのような表情を浮かべている。
だが、ヤエノムテキは背中に冷たいモノを感じていた。
(私は、彼女のスピードを見切れたわけじゃない..。ただ、彼女の術式を知っていたからこそ、初撃を躱せただけ)
勝者たりながら、悔しさに拳を握り締める。
(もし、舞台がもっと広ければ..場外などなければ..私は..)
「ヤエノさん!」
サクラバクシンオーの元気な声が聞こえ、はっと彼女は顔を上げる。
「いやーすみません!しっかりとお手合わせしたかったのですが、止まるタイミングを間違えてしまいました!」
「いえ、貴方のおかげでまだまだ私には鍛練が足りないと自覚出来ました」
「そうなのですか?まあ、私のスピードは模範的バクシン速度ですからね!」
「ええ。凄まじいものでした。ありがとうございました」
「はい。此方こそありがとうございました!」
最後に一礼し、ヤエノムテキは表情を崩さず退場する。
会場の空気とは裏腹に、内に燃える烈火を抑えながら、彼女は気を静めるべく、待機室へと一人、向かうのであった。
「いやあ、中々面白い試合でしたね」
会場の雰囲気に水を差さないようマイクをオフにしながらアグネスデジタルがシンボリルドルフに視線を向け、言う。
「そうだな。バクシンオーの速度を間近で見せられた彼女と会場の雰囲気は正反対。
ヤエノムテキは勝者となった気もしてないのだろう」
「ええ。それ程までにバクシンオーさんの速度は凄まじいものでした」
「しかし、意外千万。君から話しかけてくれるとはね」
「あっ...!失礼をば..!」
慌てるアグネスデジタルの様子に、シンボリルドルフはフフッと笑う。
「いや、良いんだ。むしろ嬉しいよ。少しは慣れてきたのかな?」
「い、いえ、意識するとやっぱり...」
シンボリルドルフの顔を間近で直視したアグネスデジタルは尊みで倒れそうになり、逃げるように実況へと戻った。
『さ、さあ!Bブロックも一区切り!続いてはA.B両ブロックのシード戦です!
その後お昼休憩という予定となっております』
その様を、シンボリルドルフは楽しそうに見つめているのだった。
テンポ改善の為、実況を重要ポイント以外ではカットすることとしました。
ただ物語上は実況解説はちゃんとされています。
ご了承下さい。